これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「グッド・ナース」

映画館で公開されながら、Netflixでも配信されている。
(今は公開も終わったかな?)
僕はNetflixで観たわけだが、なんだか得した気分になる。
卑しいというか、セコいというか、そんなことで喜ばないでほしいね。
暗いシーンが多いし、ストーリーの展開上、
集中力を要するのでやはり映画館で観た方がいいし・・・。

本作は2000年前後に発生した病院での不可解な事件を題材にし実話がベース。
一見、ちょっといかれた看護師による殺人事件のように思うが、
そんな単純な話ではない。

裏側のテーマは別。
アメリカの社会保険制度や人手不足問題、
病院の隠蔽体質を描いた社会派ドラマといえるんじゃないかな。

このあたりの抉り方はそれが実話なだけに立派。
社会問題をこうした手法で問いかけていくのも映画の役割。
大げさにいえば、小さな声が次第と広がり大きな声となり、
社会の仕組みを変える可能性すらある。
何事も使命感。
闇に葬り去りたい事実をエンターテインメントとして伝えることも必要かもね・・・。

業績も不安定で株価も乱高下するNetflixだが、
こうした姿勢はいつまでも貫いてほしい。
サブスクサービスを別の観点で捉えれば、
その経営方針への賛同ともいえるのではないか。

共感が増えればコンテンツの優位性だけでなく経営は安定し、
次の投資に回すことにもできる。
いい循環も生まれる。

前回紹介した「ザ・ランドロマット パナマ文書流出」もそうだが、
何かに恐れることなくやりたいことを自由度をもってやってもらいたい。
そうすることで新しいアイデアも生まれるだろう。

そう考えると日本映画はまだ息苦しいのだろうか。
自由度が却って敵を作り興行を行えないのであれば、自由度の幅は狭まる。
結果、小さくまとまった作品が多くなる。
いい循環を生み出すのは難しい。

大切なのはそこに向かう誇りか。
主人公看護師エイミーは自らが弱い立場であっても立ち向かう。
その勇気がすべてにおいて必要なんだろうね。

エイミー役のジェシカ・チャステインはステキな女優。
過去の作品も観たことはあると思うが、知らなかった。
まだまだ知らないことが多すぎる。

映画を観るのも勉強です。

日本の分断 私たちの民主主義の未来について

なぜ本書を選んだのか。
著者である三浦瑠璃氏を知っておいた方がいいと思ったため。
以前読んだ「不倫と正義」は中野信子氏との共著。

三浦氏の著書は一度も読んだことがなかった。
正直、TVも観ていないので、どんな場面で活躍しているのか、
どんな発言をしているのかも知らなかった。

母校同窓会の記念イベントで講演者としてお招きすることになり、
また、当日の送迎を任されたこともあり、失礼があってはいけない。
そんな想いから本書を手にした。

結果的にいえば、イベント当日にコロナに罹り、送迎は他の方が担当することに。
目論見としては、本書をネタに会話が弾み、お友達になることだったが、それは果たせず。
仮に送迎できたとしても、お友達になることはなかったと思う(笑)。
ただどんな会話になるかはともかく、同じ空間を味わいたかった・・・。

人生はなかなか上手くいかない。

母校での講演は国際政治学者らしく、今後、日本が世界で果たす役割を話された。
(責任を感じてオンラインで拝聴)
それは日本の存在感が薄れる中でも果たすべき役割があること、
どう価値の再発見をするかということ。
米中対立の中での振る舞いやグリーン投資、デジタル化の推進など、多岐に亘った。
最後は政府と企業と大学との関係性で締めくくられた。

この分野の話を伺うケースも少ないため、
理解度はイマイチだが、より高い視点からの講演は勉強になった。
その目線の高さは場合によっては嫌われるかもしれない。

講演は日本と世界が中心だが、本書はあくまでも国内の政治が中心。
それも自民党と立憲民主党の違いについて分析者としての視点が入る。
先日、読んだ「22世紀の民主主義」と一緒に読むと今の政治の理解がより進むかもしれない。

僕らは本当に政党で政治家を選んでいるのか、
憲法改正が大切なのか、消費税や社会保障が重要なのか、曖昧な面は多い。
だから安定志向に走ってしまう。
もちろん分断はあるだろうが、民主党と共和党のような極端な分断ではない。

本書は2年前の書籍なので、この時と首相は違う。
今とは切り口も少しは変わるだろう。
どんなことでもそうだが、短期の視点と長期の視点が必要だし、
グローバルな視点とローカルな視点も必要。

それに気づけただけでもいいのかな。
まだまだ勉強不足だね。

映画「君だけが知らない」

またまた韓国映画。
そして、またまた名演小劇場。
今年は僕の映画人生においてもレアな一年。
そんな大層なことでもないが・・・。

本作はどこまで話題になっているのだろうか。
よほどの通じゃないと見過ごしてしまう作品だと思う。
僕はたまたま映画.comでチェックしていて、
ソ・イェジの艶めかしい表情が気になってしまっただけのこと。

全体感でいえば韓国人女優に好きなタイプが多いんだろうね。
一生に一度くらいは旅行に行ってみるかな。
家人は行かないだろうから、誰か付き合ってくれないかな・・・。

そんなことを書くと余程韓国好きに思われるかもしれないが、そうではない。
韓流ドラマも観たことはないし、BTSだって知ったのは最近こと。
名前を言える女優さんもチェ・ジウくらい。
ちと古いか・・・。

しかし、今年観た海外作品は韓国映画が多く、どれもハズレがない。
本作もそう。
レビューを読むとこの類の展開は韓国映画のお得意のようだが、
僕は全く先が読めずハラハラしながら100分を過ごした。

まさか、こんな展開になっているとは・・・。
ラスト30分は絶対語ってはいけないといろんなところに書かれている。
ネタバレ禁止なんだね。
僕の場合、最初の10分すらネタバレさせないけど。

解説やあらすじを読むとサスペンス映画と思われるだろう。
確かにその要素はある。
しかし、僕は形を変えた恋愛映画とも感じたし、その真っすぐな生き方に感動も覚えた。
記憶喪失とか未来予測とか映画ではありがちだが、
ありがちでない方向に仕上げているのはさすが。

唯一、ネタバレで話すと、
(ネタバレでもないな・・・)
刑事役のパク・サンウクは岸谷五朗に似ている。
映画を観ながら、そう感じた人は多いはず。

最近、韓国映画のブログを書くと最後に「ガンバレ、日本映画」的な締め方になることが多かった。
それだけ日本映画に危機感を抱いたわけだが、本作であれば十分戦える余地はある。
それは作品のレベルではなく題材として。

本作を観ると、お金を掛けなくても面白い作品はいくらでも作れると思うのだ。
いい意味でアイデアをパクればいいんじゃないかな。
全然負けないと思うし。

ここまで来たなら今年はあと1~2本は韓国映画を観ようか。
次は「奈落のマイホーム」か、「犯罪都市 THE ROUNDUP」か。
その前に観るべき作品も多いけどね。

ハリウッド映画における中国との関係

映画コラムニストは勉強熱心でなければならない。
それはより多くの映画を観ることだけではない。
周辺環境も押さえておく必要があるということ。

それが理由ではないが、最近、時間の許す限りオープンカレッジなるものに出席。
母校の教員によるリレー講座で、OBはありがたいことに無料で受講できる。

僕も大学で教える端くれとして他の先生の授業の進め方にも関心があったし・・・。
やはりいい点は盗まないとね。

今回ブログに繋がるのは「ハリウッドと中国」という講座。
今、ハリウッド映画の中国市場での割合は圧倒的。
ハリウッド映画の興行収入のうち中国が1/4という。
直近はコロナの影響があるものの、
ハリウッドはもはや中国に気を遣い映画を作らなければならない状況。

ダイバーシティの影響も大きいが、
ハリウッドのメジャー作品にはアジア系、中国系俳優の出演も多くなった。
「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督がアカデミー賞を受賞するのも関係なくはない。
そんなことは映画を観ているだけでは気づかない。
もっと勉強しないとね。

と、ようやく冒頭の写真の映画。
「ザ・ランドロマット パナマ文書流出」という2019年の作品。

本作はこの講座を受けるまで全く知らなかった。
一般公開ではなく、Netflixでの配信のため話題性も部分的。
監督はスティーブン・ソダーバーグ、主演はメリル・ストリープで超メジャー。

かなり社会性が強く政財界に対し批判的。
一時期話題になったパナマ文書流出の実態を暴いている。
それだけでも勇気ある制作陣。
制作陣は全世界に対して遠慮はしない。
その中でもNetflixはかなり自由度が高いようだ。

本作には中国の中心的な存在も描かれている。
徹底的に汚職を排除した習近平氏だが、そのあたりのことが・・・。
それが原因かどうか不明だが、本作は中国では観れない。
きっちり統制が図られている。

そんなことを講座で伺ったので、必然的に本作を観ることになった。
どこを向いて映画を製作するか、
その作品がその国にどう受け入れられるか、
グローバルになればなるほどその視点が必要。

映画も社会勉強のひとつ。
とっても参考になりました。

映画の内容にはほとんど触れていない(笑)。
サクッと観れるので、時間のある時にぜひ!

映画「RRR」

インド映画を侮ってはいけない。
まだまだ日本映画に比べて格下と思っている輩もいるだろう。
僕もその一人と自認しておく。
VFX技術、芸術性、エンターテインメント性において日本映画の方が優れていると・・・。

本作を観て感じた。
素直に謝りたい。
自分にバイアスが掛かり、いかに時代遅れかと・・・。
誠に申し訳ありません。
そりゃあ、今や、経済成長率も比べ物にならないし。

そういえば3年前にも同じようなことがあった。
社外取締役を務める株式会社パフの執行役員が「きっと、うまくいく」を観ていないことを、
ボロカスに言ったのを思い出した。
映画コラムニスト失格だと。
本作を観なかったら、更に輪をかけてボロカスに言われただろう。

正直にいえば、本作を観る予定はなかった。
しかし、映画評論仲間のBush解説員が大絶賛。
他のレビューを読んでもすこぶる評価は高い。
異口同音に3時間の上映時間が気にならないと・・・。
心が揺さぶられ、また、映画コラムニストの意地もあり、観ることにした。

まさに仰るとおり。
評判どおり。
3時間の長さを気にすることなく、手に汗握りながら観てしまった。

単純なストーリーが故に観終わった後の爽快感。
その迫力に圧倒された。
いやいや、凄いぞ、インド映画・・・。
そう言わざるを得ない。

本作の製作費は日本円で97億円。
インド映画史上最大の製作費という。
それを許す製作サイドとS・S・ラージャマウリ監督の勇気には感動。
監督は自分のやりたいことを全て3時間の中に詰め込んだんじゃないのかな。
アクション映画であり、ミュージカル映画であり、男同士の友情を描く青春映画。
様々なジャンルが混ざり合うが、一切の手抜きはない。
ここでこうくるかという展開も含めお見事。

僕はMARVEL作品は観ていないのでスケールの違いは分からないが、きっと負けてはいない。
対抗馬になるはず。
多分・・・。
大英帝国の傍若無人な描き方も無責任に楽しめるし。

それにしてもインド人女優も美しい。
シータ役のアーリアー・バットには惚れ惚れした。
特にエンディングのダンスシーンにはやられてしまった。
映画とは関係ないシーンだが、何度でも観たい。

3時間の上映時間に合わせて予定を立てるのは結構ハード。
一日の計画を左右する贅沢な時間の使い方。
だからこそ贅沢な時間を過ごしてもらいたい。
タイトル「RRR」の理解も含めてね。

22世紀の民主主義

つい最近まで著者の存在は知らなかった。
NewsPicksのいくつかの動画で知っただけ。
ガーシーとの対談が初めてじゃないかな・・・。
なかなか刺激的な内容だった。

時代はどんどん流れていく。
というより変化している。
立ち止まっているとあっという間に置いてきぼりをくらう。
世の中の全てを理解しようとしても無理。
しかし、ある一定レベルを把握しておこないと思考も進化しない。
まだまだ放り出すわけにはいかないんだ(笑)。

本作の切り口は面白い。
とても斬新。
それが10年先に受け入れられるかは分からないが、
その感性や分析力にはなるほど!と唸らされる。

経済における「資本主義」、政治における「民主主義」。
その関係性を今まで考えたことはなかった。
資本主義の国が民主主義であるのが当然。
それが正解で疑うこともなかった。

しかし、著者が分析する民主主義の国ほど経済成長は低迷。
その相関関係で物事は語れないが、
中国をはじめ成長力の高い国を見せつけられると説得材料にはなる。
コロナ対策も非民主国の方が対応は早かったという。

今の日本を否定できても、僕らはどこかでバイアスの掛かった生活を送っている。
気をつけなければならない。
著者は若者の投票率が上がり政治に積極的に参加しても何も変わらないと断言する。
そもそもの仕組みやルールを変えることが前提。

極端な言い方をすれば政治家は不要。
選挙も政治家もない民主主義の実現も可能かと。
むしろそれが望ましいこと。
それは「無意識民主主義」といい、データを上手く活用し変換すれば実現可能というのだ。

僕にはそんな想像力はないのでイメージもつかないが、
何らかの意思決定をルール・アルゴリズムでデザインすれば辿り着くという。
理解できたような、できないような・・・。

だが、22世紀ともなれば実現可能な世の中になっているとも限らない。
今のままで問題はないと思うのは責任逃れであり、問題の先送り。
そう捉えた方が健全。

これも変化対応。
最近はめっきり自分よりも若い人に教えを請うことが多くなった。
きっとそれも健全なんだろう。
正解なんてない。
自分の中で作っていくしかない。

そんなことを改めて感じた一冊だった。

映画「夜明けまでバス停で」

僕らはまだまだ無責任なのかもしれない。
映画を観てそんなことを感じた。

本作の舞台は2020年。
ちょうどコロナが全世界を襲い、日本も緊急事態宣言が発動された時期。
まだ2年前の話。
現実問題として今もなおコロナ禍ではあるが、2年前とは様相は大きく変わった。

しかし、その時は僕も含め目の前が真っ暗。
何をすべきかもがいていた時期。
会社も大変。
果たすべき業務が果たせず業績は急降下。
赤字が積みあがっていった期間。

僕は自分の周辺を守るだけ。
会社と社員を守ることが役割だった。
それを果たすことはできたが、そこまでのこと。

映画に登場する人たちは蚊帳の外。
僕も自己責任といっていた一人にあたる。
それが悪いわけでもない。
自分の中の正しさ。
しかし、それは上から目線の正しさなのかもしれない。
政府の施策に文句をつけながら、僕も大した差はない。
と無責任さを感じたり・・・。

本作はひとりのホームレスの女性を描く。
運が悪いとしかいいようがない。
元夫の借金を背負い、自ら自作のアクセサリーを売りながら、居酒屋のバイトで生計を立てる。
すこぶる真っ当。
僕よりも懸命に働いているといっていい。

しかし、生活は苦しい。
挙句の果てにコロナでバイトをクビになり、住まいも失う。
転職先も誤解がありホームレスへ。
ありそうでなさそうな話だが、実際に近いことはあるのだろう。

親元や親しい仲間がいれば何とかなる。
それに頼りたくない気持ちも分からなくはない。
自ら不幸になる選択をしてしまう。
そうせざるを得ない。
僕も可能性はゼロではないな…と辛い思いをしながら映画にどっぷりと浸かる。

全ての原因は自分にあるという。
僕も常に自分に言い聞かせてきた。
それはまだ自分がどん底に落ちてないから言えるだけ。

もし、自分が同じ環境ならそこまで強く言えるだろうか・・・。
国や社会のせいにしないだろうか。
正直、分からない。

こんなことを書くとやたら重い作品に思えるかもしれない。
確かにテーマは重い。
しかし、映画は中盤から観方によってはコミカルな方向に進む。
社会への抵抗はさほど暗くはない。

ホームレスの主役三知子を演じる板谷由夏がいい味を出している。
他の出演陣も・・・。
ルビーモレノは久々に観たが、映画の途中まで誰か分からなかった。

監督は高橋伴明氏。
もう終わった人かと思っていたが、
(すいません、失礼ですね・・・)
健在だった。
未だ社会に対して反発する熱い想いは十分に理解できた。
それもユーモアを盛り込んで・・・。

昨年の「茜色に焼かれる」同様、時代を象徴する映画。
今だからこそ観る価値があるだろうね。

映画「沈黙のパレード」

映画が公開されて1ヶ月後に鑑賞。
前作2作はいまだ未鑑賞。
本来、本作の優先順位も低くタイミングが合えば程度に思っていた。

そんな時に偶然のタイミングが訪れる。
それは福山雅治演じる湯川教授が事件に深く関わる定食屋「なみきや」の常連客だったように・・・。
たまたま空いた空白の3時間を埋めるために選ばれたのが本作。
他の作品の選択の余地はなし。

前後の予定で唯一合致した。
劇場は初めてお邪魔する「TOHOシネマズ日比谷」。
いやあ~、立派な映画館。
ミッドランドスクエアシネマを超えるシートはないと思っていたが、いい勝負。
そして意外に混んでいた。

休日とはいえ公開1ヶ月であれだけの観客とは立派。
みんな、過去の作品を観ているのだろうか?

僕はドラマも一度も観たことがない。
興味がないわけではないが、そこまででもない。
映画もいずれAmazonプライムで観ようとしていた程度。

しかしながら映画一作目「容疑者Xの献身」は14年前の公開。
今、こうしてシリーズが続くことに感動を覚える。
感動ついでにいえば柴咲コウは全然変わらない。
さすがに福山雅治も北村一輝も年齢を感じさせるが、柴咲コウは当時のまま。
そんな気がしているのは僕だけ?

映画の内容に触れることなくブログが終わりそう。
それではさすがに叱られる。
実際は誰にも叱られないが、映画コラムニストとして少しは触れないと・・・。

ドラマの展開、人間模様は面白く描かれていた。
僕は6年前の「64(ロクヨン)」を思い出した。
家族の存在、刑事の想いとやるせなさ。
ドラマを引っ張る要素は似ていた。
「64(ロクヨン」」の方がかなり疲れる。
その分、本作の方が全ての観客が楽しめるのは間違いないだろう。

最近観た「ヘルドックス」
本作で要の役を演じる北村一輝、酒向芳も出演している。
対照的な役なのが印象的で、上手さを感じた。

さて、次回作は10年後?
さすがに柴咲コウも年を取ってくるだろうが、湯川教授は名誉教授になっているかも。
そのあたりも楽しみにしておきたい。

映画「千夜、一夜」

本作は社員の結婚式に参列する前に鑑賞。
会場の近くでありタイミングがよかった。
最近、このパターン、多いね(笑)。

正直なところ、結婚式の前に観る映画としては相応しくない。
これから幸せの階段を上がろうとする時にこんな不幸な物語を観るとは・・・。
まあ、現実の世界と映画の世界と分けて捉えないと。

現在、日本には約8万人の「失踪者リスト」が存在するという。
それは一定の手続き後に公開されるリストで理由もなく行方不明になった方を指す。
北朝鮮の拉致問題があった時期ならともかく、
(ともかくでもないか・・・)
今現在でも8万人もいるとは驚く。

何かの事件に巻き込まれた方もいるだろうが、自分の意志で蒸発した方も多い。
自分には想像しがたい世界。
瞬間的に現実から逃げたいと思ったことはあるが、そんな行動をする勇気はない。
どんな気持ちなのかも分からない。

本作はその失踪者ではなく、失踪された側の世界を描く。
今まで1ミリも考えたことはなかったが、残された側に気持ちは想像に絶する。

生きているのか、死んでいるのか、
逃げたのか、連れ去られたのか、
自分のことをどう思っているのか・・・。
何も分からない世界。
考えただけでも、気が動転しそうだ。

そんな女性登美ちゃんを田中裕子が演じる。
30年も愛した人を待ち続ける。
そんなことが本当に可能か。

一方で2年前に旦那が失踪した看護師役を尾野真千子が演じる。
この対比が観る側にグイグイ迫ってくる。

尾野真千子演じる田村奈美が人としては真っ当。
その葛藤ぶりはよく理解できる。
しかし、なぜか共感してしまうのは・・・。

登美ちゃんはほとんど笑顔を見せることはない。
とても不幸そうにみえる。
だが、その中にかすかな可能性を感じさせる。
それがとても可愛らしく映る。
ダメ男ダンカンとの会話は絶妙。

長いワンカットがリアルな世界をイメージさせる。
舞台となる北の離島の港町。
晴れた日もなぜかどんよりと映る。
気持ちの表れだろうか・・・。

人は他人のことは分からない。
自分の身内なら分からなくても信じることはできる。
他人は信じる気持ちが揺らぐ。

ラストシーンはどこに向かっているのか。

実際、日本の片隅で同じようなことが起きている。
映画は現実のツラさも教えてくれるね。

映画「空気殺人 TOXIC」

またまた韓国映画。
今年ですでに6本目。
徐々にハマっていく自分がいる。
それは素直に実力を評価していることに繋がる。

最初、本作のタイトルを見た時、ホラー映画だと思った。
もし、ホラーなら観ることはなかった。
上映しているのはミリオン座。
ホラーじゃないだろ・・・。

なにげに解説を読むと断然興味が沸いてきた。
「韓国で実際に起きた加湿器殺菌剤事件を題材に描いた社会派ドラマ」と書かれている。
HPを確認すると「韓国史上最悪の事件」なんて表現も。
昨年観た「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」に近いのだろうか・・・。
そんな気持ちで映画館に足を運んだ。

オープニングは韓国のホームドラマを観ているよう。
実際、僕は韓国のホームドラマは見たことがないが、そんな印象。
今まで観てきた韓国映画とは映像の重さが違った。
映画というよりTVドラマ・・・。

そんな感じだったが、知らない間にどんどん作品に吸い込まれていく。
冒頭の解説通り、硬派な社会派ドラマとなる大きな事件。

韓国にせよ、アメリカにせよ、日本も同じかもしれないが、大手企業は闇を葬り去ろうとする。
自分たちが起こした事故を隠蔽しようと画策する。
正義は皆無で保身でしかない。
しかし、反対に正義として跋扈し始める。

観る方がいらだちを覚え、圧倒的に立場の弱い真の正義を応援する。
そこで起きるどんでん返し。

本作はそんな展開。
映画のためのフィクションはあるだろうが、これが事実であれば驚かざるを得ない。
こんな展開が本当にあるのか?
自らが犠牲になることで本当の悪党を追及する。
自身が周りから悪党と思われても、それを貫く。

韓国にこんな事件があったとは知らなかった。
多分、国内にはあまり入ってこないニュース。

政治的にも社会的もこの事実は抑えておきたいはず。
しかし、それをあぶり出す韓国映画界。
きっと日本ではこの類の作品は作れない。

また、ひとつ、韓国映画の強さを知ってしまった。
本作にもやられましたね。

負けるな、日本映画!
最近、こんな締め方多いな(汗)。