これからも前向きに 名大社会長ブログ

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映画「愛を耕すひと」

何度も予告編を目にし、安易なタイトルだと感じ観るかどうか迷った。
結論からいえば素晴らしい作品と出会え、観て正解。
原題は「Bastarden」。
日本語にすると「ろくでなし」。
このタイトルではヒットしないだろうね。
「愛を耕すひと」でよかったのかな(笑)。

本作は史実も基に製作され、舞台は18世紀のデンマーク。
18世紀といえば大河ドラマ「べらぼう」と同じ。
僕の記憶が正しければ、本作は18世紀前半だと思うので少し昔だがほぼ同じ時代。

貴族の生活と武士の生活。
ヨーロッパと日本。
特権階級が牛耳っている点は同じだが、建築物、衣装などの違いにハッとさせられる。
ヨーロッパが近代的に見えるのは当然のことか。
それにしても「べらぼう」はビジネスドラマを見てる感覚。
結構、面白い。
横浜流星もいいね。

話を戻さねば・・・。
本作は退役軍人ケーレンが荒野の開拓に命を懸ける姿を描く。
貴族の称号を得たいという野望はあるが、
不可能に思えた荒れ地を農作物が育つ環境にしていく。

それに関わる訳アリの人たち。
その交流を通し、人として大切なことと希望を見出していく。
それが愛を耕すということ。

そして、現れる「ろくでなし」。
違う立場からみればケーレンもろくでなしだが、観客の立場から見るろくでなしは共通。
どんな時代でもこんなろくでなしが人々を傷つけ国を停滞させる。
このろくでなしにはメチャクシャ腹が立ったが、演技は見事。
実際はかなりの二枚目なので日本でも人気が出るじゃないかな。
誰だ、誰だ・・・。

主演はマッツ・ミケルセン。
僕は「アナザーラウンド」の酔っ払いの印象だが、
デンマークの至宝と呼ばれる実力派俳優。
彼の感情を押し殺しひたむきに正しい行動を貫く姿は感動的。
不器用な生き方も共感を生むだろう。
ろくでなしとのコントラストが坦々と進行するドラマに刺激を与える。

本作はオバマ元大統領が選ぶ2024年のベスト映画10本の一本という。
大いに納得。

今年も重厚なヨーロッパ作品が楽しませてくれるのか。
こんな作品をこれからも観ていきたい。

映画「リアル・ペイン 心の旅」

全く予備知識なく鑑賞。
映画を観終わって初めて監督と主演が同じだと知った。
僕が主演と思っていたのはむしろ助演で、監督本人が主演。
一体何のことか分からないよね(笑)。

本作はユダヤ人のデヴィッドと兄弟のように育った従兄弟ベンジーの旅を描く。
デヴィッドが主演のジェシー・アイゼンバーグで、ベンジーが助演のキーラン・カルキン。
ベンジーの方が圧倒的な存在感なので主演とも受け取れるが、作品はデヴィッド目線。
キーラン・カルキンはゴールデングローブ賞の最優秀助演男優賞を受賞。
本年のアカデミー賞にもノミネートされている。
まあ、納得できるよね。

最優秀作品賞にもノミネートされていたが、あまり話題になってはいないような・・・。
テーマが地味すぎるのかな。

従兄弟同士の2人はポーランドのツアー旅行に参加。
そこでの珍道中を描くが、背景にあるのは生きづらさ。
生真面目で社交性に欠けるデヴィッドと社交性豊かだが感情的なベンジー。

対照的な2人はもしかしたら現代人の象徴かもしれない。
お互いに悩みを抱え、それをオープンにするでもクローズにするでもない。
ツアー旅行に参加する人たちとの関わりを通して2人の人物像があからさまになる。

一般的にみれば関わる人にとって2人は迷惑な行為がほとんど。
ただ関わる人も何かしら抱えるものがあり、2人に対しては寛容。
大きなトラブルが起きることはない。
大人な対応ができない人はブチ切れるだろう。

ふと、思った。
アメリカに限らず、日本に限らず、現代人にとって生きづらさはある程度、持つもの。
ノーテンキな僕が鈍感で感じないだけで、多くの人はそんなふうに生きている。
それが健全なのか・・・。

日本の幸福度ランキングは51位。
アメリカは23位。
かなりの差はあるが僕は日本の方が高いように思えてならない。
アメリカの方が人種が多く様々な課題に向き合わざるを得ない状況をみると余計に感じる。
本作で描かれるユダヤ人もそんなふうに思う。
どんな人に対してもハグできる環境が幸福度を上げさせるのかな。

本作は何か問題が解決するわけではない。
かといって、大きな問題が残るわけでもない。
時間が流れていくだけ。
きっとそれでいい。
世の中はだいたいそう。

原題は「A Real Pain」。
邦題はそれに「心の旅」が加わる。
そこに大きな意味があるのかもしれない。

映画「ショウタイムセブン」

「セプテンバー5」に続くテレビ局内を中心としたサスペンス映画。
一日の事件を追いかけているのも同じ。
フィクションかノンフィクションかの違い。
フィクションの方が過激な演出になるのは当然のこと。

時代設定は異なるとはいえメディアが抱える問題は常に同じ。
視聴率と話題性にがんじがらめになり目的があらぬ方向に向かう。
タイプが異なる2作だが恐ろしさを感じることとなった。
ただ本作はエンターテイメント性が強い娯楽作。
社会性はなくはないが「セプテンバー5」とは比較にならないし、比較すべきではない。

阿部寛演じるニュースキャスター折本眞之輔の独壇場で彼自身がドラマ。
何度も観た予告編でもそれを匂わせた。
最近では一番面白い予告編で自ずと期待値が上がった。

期待値が高すぎた分、一般的な評価はイマイチなんじゃないか。
僕は評価がイマイチなのを確認してから観たため、逆に期待した以上に楽しめた。
不思議なもんだね・・・。

ハラハラドキドキの展開なのは間違いないが、観る人にとっては受け止め方は変わる。
よりサスペンス度を高めるのか、よりエンタメ性を高めるのかで映画の角度は変わる。
本作は両方狙おうとしたのかもしれないが、それはかなり難しい。
どちらかに寄せた方が作品自体のクオリティは高まる。

上から目線で申し訳ないが、そんなことを感じた。
ニュースキャスター折本の言葉が重いのか、軽いのかはっきりさせた方がよかった。
ショウタイムなので観客を楽しく喜ばせるほうがいいのだろうが・・・。

映画はラジオ局内、テレビ局内とほぼ密室で繰り広げられる。
取材現場からの映像はあるが、これもカメラを通して映っているにすぎない。
小さな世界にも拘わらずスケールの大きさを感じた。
このトリックが本作の最大の面白さだったりして。
ブログを書きながら、そんなことを思った次第。

本作はテレビ局の裏側を描いているが、少なからず近い出来事はあるかもしれない。
こんな描き方だとますますテレビ離れが進む。
余計なことを心配してしまった。

勇気は時として仇になってしまうね。

映画「セプテンバー5」

実話モノの映画が好きだ。
それも時代を忠実に反映させ緊張感で押し迫ってくる作品が。
本作もそんな作品といえる。

描かれるのはミュンヘンオリンピック開催期間の1972年9月5日。
この一日だけを描く。
だからタイトルはセプテンバー5。
そのままである。
小難しいタイトルよりも好感が持てる。

パレスチナ武装組織によるイスラエル選手団の人質テロ事件を描く映画を
この時期に公開するのはなんらかの意図があるのか。
考えすぎなのかな・・・。

僕はこの事件はうっすらと知っているものの詳細は知らなかった。
当時は6歳。
日本人選手が活躍する競技も後の時代に知るだけ。
この事件は日本でも大きなニュースになったと思うが、どこまで世間が揺れ動いたかは想像できない。
生中継が与える衝撃は相当だが、ドイツと日本の時差は8時間。
生中継の時間は夜中なのかな?

イスラエルとパレスチナとの緊張感も重要だが、より重要なのはジャーナリストとしての姿勢。
事実を伝えるのがジャーナリストの務めだが、真摯にそれだけに向き合えるのか。
1970年代であろうと2020年代であろうと変わらない。

倫理観は持つとはいえ自社メディアが他社よりも優位に立つ使命感も必要。
自社や他社、自分と戦いながらどう関わっていくか。
賛同を得る行動と批判に晒される行動は紙一重。
賛同を得て評価されれば名声に繋がるが、その逆のパターンもあり得る話。

誤ったニュースを伝え、よかれと考えた報道がマイナスに進むと180度違う展開になる。
メディアの功罪といえる。
最近、公開される時代を描く作品は今に繋がっているように思えてならない。
時代を映す鏡。
ネットが繋がっていようとなかろうと。

本作はドイツとアメリカの合作。
英語とドイツ語が飛び交う。
どちらも分からない僕は字幕に頼るだけ。

その2か国語の仲介に入り通訳も務めるのがレオニー・ベネシュ。
どこかで観た女優と思っていたら、昨年観た「ありふれた教室」の主役。
本作といい感情表現が難しい役を上手く演じていた。

僕らはこうした作品を通して歴史的な事件の真相を理解する。
こんな機会はありがたいし、こんな作品が世界情勢を語る。
エンタメ映画もいいが、骨太の映画も大切にしたい。

高峰秀子の流儀

盟友でもある副本部長が感銘を受けていたので手に取った。
高峰秀子という大女優はもちろん知っているが、生き方、考え方までは知らず。
本書を読み感動。
こんなカッコいい人だったのかと感動した。

読後、勢いで高峰氏の著書「わたしの渡世日記」も購入。
文庫本解説で楠木健氏がもっとも影響を受けた書籍として紹介していた。
こちらも楽しみにしていきたい。
楠木氏は高峰秀子の存在は国民的な教養の価値があり、
義務教育に入れるべきだととんでもないことを言っているし・・・。

高峰秀子は日本を代表する女優。
2014年発「キネマ旬報」の「オールタイム・ベスト日本映画女優」でも第1位を獲得。
日本映画史上ナンバーワンの女優と称されている。

僕が観た作品は「浮雲」「無法松の一生」。
「二十四の瞳」も観た気もするが高峰秀子主演作じゃないかもしれない。
いずれも学生時代なので遠い昔。
すっかりと忘れている。

55歳で引退し、その後エッセイストとして活躍されたが、僕の関心は向かなかった。
人としてレベルの低さを実感。
人となりを見て吸収すべきかどうかを考えなきゃいけない。

本書は高峰秀子の養女となった齋藤明美が彼女との生活やインタビューを通し、人物像を著している。
その姿がカッコいい。
司馬遼太郎は「どんな教育をすれば高峰さんのような人間ができるんだろう」
と言ったらしいし、沢木耕太郎もそれに近いことを本人に言ったという。
それだけ周りの者を唖然とさせる。
僕も生き様に感動し、チープな言葉で「カッコいい」とまとめてしまった。

詳しくは本書を読んでもらえればと思う。
小見出しで「動じない」「求めない」「期待しない」「振り返らない」
「迷わない」・・・と括ってあるが、まさにそれ。

5歳でデビューし、デブと呼ばれる酷い養母に育てられ、
(ほんとにこの養母はサイテー)
学校にも通えず、好きでもない女優業を55歳まで続けてきた。

大物俳優にありがちな驕ったエラそうな態度はなく、誰に対しても同じ姿勢。
その姿も尊敬に値するが、「信用」を最も大切にする生き方はまさにお手本。
こんな潔い生き方を少しでも見習いたい。

そして、高峰作品を改めて鑑賞したいと思った。
そうそう、今、ミッドランドスクエアシネマで生誕100周年プロジェクトで作品も上映。
時間を作って行ってみたい。

素晴らしい書籍をご紹介頂き、ありがとうございました。

映画「ファーストキス 1ST KISS」

大人の恋愛ものと期待して劇場に足を運んだ。
60歳近い年齢になると子供じみた恋愛ドラマには興味が湧かない。
しかし、大人を感じさせるドラマはまだ欲求があるのか、妙に気になったり・・・。

本作は何度なく予告編を観る度にそんな気持ちにさせられた。
ピュアな心を求めているのか。
そんな意味では僕の期待を裏切らないストーリー。

くたびれた結婚生活の果てに最悪の結果を迎える夫婦は多い。
昔持っていた純粋な気持ちを取り戻すにはうってつけの作品。
危うい夫婦が一緒に観る機会は少ないと思うが、
どちらか観るだけでも一定数の夫婦が救われるのではないか。

映画館には松村北斗ファンらしき若い女性が多かったが、できれば中年夫婦に観て欲しい。
僕は危ういわけでも冷めた関係でもないが、もう少し優しくなろうと強く思った。
映画が持つ副産物。
自分自身、反省する面も多かった。

本作は過去に戻って未来を変えていこうとする行動を描く。
タイムトラベルする過程はやや強引だと思うが許せる範囲。
15年前に戻って全てを変えたいという気持ちがヒシヒシと伝わるから。

タイムトラベルするのが主人公カンナを演じる松たか子。
その夫で15年前の青年駆を演じるのは松村北斗。
松村北斗は昨年のキネマ旬報主演男優賞。
僕も1位に推した「夜明けのすべて」での演技が認められた。
僕はさほど凄い演技とは思わなかったが、本作で素晴らしさを知った。
繊細な表情ができる役者であると。

どうだろう。
松たか子は現在が実物で15年前の彼女はなんらかの手が加わっている。
松村北斗は15年前が実物で現在の彼は老けさせ太らせ手が加わっている。
微妙な腹の出方に好感を持った。
それが普通に年齢を重ねることだ。

一方で15年前の松たか子は随分と可愛らしい。
個人的には「四月物語」の彼女が好きだが、15年前の彼女も負けてはいない。
あれはどう加工?メイク?したのだろうか。
きっと同じことを思っているくだらない輩は多いはず。

いかん、本筋から外れた。
どんな手を打ったとしても自分の未来を変えることはできない。
ただ相手を想う気持ち一つで幸せになるか、ならないかは決めることができる。

今さら、それを学んでも遅いかもしれない。
しかし、未来をこれから作るわけだから、決して遅くはない。
やれることは多いと・・・。

そんなことを感じた作品だった。

映画「怪獣ヤロウ!」

初めて予告編を観た時は「なんだ、学生の作る自主映画か・・・」という感想。
と同時に舞台が岐阜県関市であることに驚いた。
僕の実家は岐阜市だが、東に100メートル歩けば関市。

それに母親は関市出身。
小さい頃の買い物はほとんど関市だった。
初めて映画に行ったのも今はなき関市の映画館。
加えて主人公は山田一郎、ヒロインは吉田麻衣。
吉田は母親の旧姓。
何かと近い存在なので観ることとした。
舞台が知らない町なら観なかった可能性は高い。

本作はご当地映画の製作を命じられた関市役所職員の奮闘を描く。
正直、いかにも・・・という感じだが、むしろ好感が持てる。
市長役は清水ミチコ。
彼女は岐阜県出身だが高山市。
まあ、近いということで選ばれたのかな?

作品は関市が全面的にバックアップ。
商店街や企業も積極的にサポートしている。
関市を代表する企業も有名な鰻屋さんも僕が営業時代にお世話になった企業も協賛。
なんとその企業の社長はセリフまでもらい出演。

ここまで徹底したバリバリのご当地映画って、これまであったか。
単に美しく見せるだけならあるかもしれないが、怪獣が公舎を壊してしまうなんて・・・。
市長の描き方も過激なので、器の小さい市長なら激怒するんじゃないか。
その点で関市の寛容さというか、思い切ったチャレンジというか、その姿勢には感服。
ご当地映画の取り組み方だけでも話題になる。

東海地区中心の公開かと思ったが、どうやら全国で公開されているよう。
綾野剛がほんのわずかでも出演してくれたら、もっと話題になっただろうね。
主役山田一郎を演じたぐんぴぃは知らなかったが、
YouTubeでメチャクシャ人気のあるお笑いグループ。
相方もさりげなく映画に出演しており、このあたりもファンには嬉しいだろう。

SNSを通して本作がより話題となり、関市が更に注目されると相乗効果も生まれる。
大ヒットはしないし、優秀作としてベストテンに入ることもないが、
(スミマセン・・・)
作品が存在することがシアワセ。

これをキッカケに少しでも多くの人に関市へ来てもらいたい。
今は商店街も寂しいし・・・。
少しでも活性化になれば我がこととして嬉しい。

映画「サンセット・サンライズ」

井上真央を久々に観た。
最近、映画等の出演が少なかったのでどうなったかと思っていたが、本作のヒロインとは・・・。
正直なところ、僕は以前よりあまり魅力を感じていなかった。
大河ドラマ「花燃ゆ」も毎回観たが、心は動かされなかった。
そのため本作もあまり期待しておらず。

いやいや、すみません、全て撤回します。
井上真央が輝いていた。
特にラストシーンで見せる表情は最高に美しかった。
こんなステキな女優さんだとようやく認識できた。
すみません・・・。

本作は2020年のコロナ禍に入った東北・南三陸の漁村が舞台。
東日本大震災の影響もあり過疎化は進む。
そんな村に菅田将暉演じる若手サラリーマン晋作がリモートワークで移住する。
たまたま見つけた好物件の住まいの大家さんが井上真央演じるヒロイン百香。
という設定。

そこからあれこれと物語が進むが、上手く時代を表現している。
さすが、クドカンといったところか。
今から思うと異常とも思えるコロナ対策はあの時期は当然だった。
東京からの移住者を2週間隔離するのも真剣。
今、映像で見ると笑ってしまう。

震災からは10年以上経過するが、当時を忘れてはいけないし風化させてもいけない。
その伝え方も絶妙。
重く暗いだけではない伝え方。

この15年程の歴史を振り返りながら、僕らは映画と自分を重ね合わせる。
時代が同時進行しているため感情移入もしやすい。
そんな点でも時代の流れを受け入れ、出演者に共感するのだろう。
日本映画にしては140分と長めだが、飽きることなく楽しむことができた。

田舎も風景もいいが、何より食べ物が美味しそう。
刺身も煮物も焼物も全部美味しそうに映る。
よだれが出そうになった。

本作で途中まで分からなかったこと。
ビートきよしは久しぶりすぎて仕方ないとしても、池脇千鶴は全然変わってしまったような・・・。
あれは役作りなのかな?

それはそれとして、塩辛と白ワイン。
あんなふうにお酒が飲めたのなら、シアワセだろうなあ~。

映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」

昨年、「燈火(ネオン)は消えず」を観た時、香港映画は終焉を迎えたと思った。
多くの規制で勢いはなくなり面白い作品はもう作れないと勝手に感じていた。
完全な杞憂。

いろんな事情を抱えるのは事実だろう。
しかし、面白い映画はいくらでも作れる。
それも香港映画に魅了された世代が再び喜びそうな作品。

本作はまさにそう。
香港映画として歴代No.1の動員を達成したのも納得できる。
韓国映画、中国映画、香港映画は日本映画にとって脅威な存在。
そんなくらいがちょうどいい。

描かれるのは1980年代に入ったばかりの香港。
時代の変わり目といっていい。
実際、暗躍していたかどうかは知らないが黒社会が九龍城砦で覇権争いを行う。
その争いがハンパない。

どうだろう、映画の1/4くらいは人と人の争い。
ちゃちな武器は使わない。
肉体同士のぶつかり合い。
ジャッキーチェンが若ければこの場に参戦しただろうが、
時代が進むと戦い方、いや撮り方も進化する。
その目まぐるしい動きに観る側はついていくのがやっと。
「犯罪都市 PUNISHMENT」「JAWAN ジャワーン」も驚く。

あれだけ戦っても死なないのがヒーローなのか・・・。
とはいえ、本作に正義は登場しない。
師弟関係や男同士の友情になんとなく引っ張られるが、
どいつもこいつも悪い奴らであるのは間違いない。
最も悪い奴がとんでもないので正義の味方と錯覚するだけ。

覇権争いをする親分子分の中心の場所が九龍城碧。
1993年に九龍城碧は取り壊されたが、今でも実在すると思うほどの見事な作り。
なんと約10億円を掛けてセットを作ったという。

それだけでも話題だが、大ヒットしないと監督やプロデューサーは泣くに泣けない。
香港映画の意地かもしれない。
政治的な要素は一切ないが、作り手が表現したいことはなんとなく伝わる。
それは日本人でも感じたり・・・。

本作の大ボス役はあのサモ・ハン・キンポー。
今はサモ・ハンとだけ呼ぶみたい。
かつての香港映画のブームを支えてきた一人。
体格に似合わず俊敏な動きは昔と同じ。
本作でも圧倒的に強い大ボスを演じていた。

痛快でキレキレな香港らしいアクション映画。
十分、満足させてもらった。

映画「室町無頼」

室町時代中期はイメージがしずらい。
鎌倉から南北朝、室町に移る時代や戦国時代は歴史上の人物が跋扈し、
それを描く作品は多いが中期はさほどでもない。

応仁の乱は11年続いていたがインパクトに欠けるし、
銀閣寺の足利義政を知っていてもその功績は知らない。
230年続いた時代だが、あまり興味はそそられない。
幕府の傲慢で無策ぶりをみると当然という思いもあるが、僕の知識が乏しいだけかも。

そんな中での本作。
当初、フィクションかと思ったが、そうではない。
大泉洋演じる蓮田兵衛は実在する人物。
本作で初めて知った。

いつの時代もその時代を象徴する人物は存在する。
蓮田兵衛はまさにそんな人物。
大袈裟に描くことで史実と異なるだろうが、その分、輝きを放つ。
町が廃れ人々が疫病や飢饉で苦しんでいる姿がより対比となる。

それにしてもこんなに町が汚いとは・・・。
煌びやかなのは京の都のごく一部。
使う者と使われる者、楽をする者と苦しむ者。
この時代の悲劇。
これが事実だとその出来事から想像する。
だからこそ歴史書に一度しか名前が出ないヒーローが生まれるんだ。

本作の予告編を最初に観た時、歴史を描くコメディと予想した。
大泉洋の主演がそう思わせた。
全く違う硬派なドラマ。
これほど殺陣が見事だとは思いもよらなかった。

そういえば「探偵はBARにいる」なんてハードボイルドな作品もあった。
気がつけば日本を代表するエンターティナーになっていたんだ。
いやいや、尊敬します。

そして、入江悠監督。
僕の中では「あんのこと」にインパクトが強すぎ、社会を抉る作品が得意な監督と思っていた。
それだけではない。
娯楽要素の強い作品も実に上手い。
器用な監督なんだね。
剣が宙を舞い鍛え上げる才蔵のシーンや一揆のシーンのカメラワークなど迫力も十分。
今江監督もこれから日本を背負う映画監督になっていくのか。

時代劇の面白さを改めて感じた作品。
さて、次はどんな時代劇を見せてくれるのかな。