昨年公開時は見逃した。
想像したよりも高い評価を受けていた。
2024年キネマ旬報年間ベストテンの第8位。
かなりニッチな作品だが、観てる人は観てるんだ。
Amazonプライムで観た後に、映画館で観ておくべきだったと後悔。
本作の舞台は1980年代の名古屋。
映画監督若松孝二がシネマスコーレというミニシアターを立ち上げてからしばらくを描く。
出演者は実名。
撮影も今のシネマスコーレ周辺。
それだけでも一気に身近に感じる。
東出昌大演じる支配人は木全純治さん。
僕は直接話をしたことはないが、何度もお見かけしたことはある。
大学時代、名古屋駅前の映画館でバイトをしていた時に何度か映画館に来られた。
当時、映画関係者は無料パスのようなものあり、署名すれば入館することができた。
木全さんの名は知られていたので、僕もハッとしながら通した覚えがある。
東出昌大の動きは木全さんにそっくり。
彼は「聖の青春」といい、人の仕草を真似るのが上手い。
最近はご無沙汰で申し訳ないが、学生時代は結構シネマスコーレにお邪魔した。
黒澤明や小津安二郎の旧作はここで観たはず。
その時、もぎりをしていたのは芋生悠演じる金本さんか・・・。
そんなことを考えながら観ていたので、より映画館で観たいと思ったのだ。
1980年代半ばはバブル手前でもあり日本映画界も混とんとしていた。
ビデオに押され始めた時代であると共に、
自主映画出身者やピンク映画出身者がこれからの日本映画を作っていく時代。
若松監督は厳しくて自分勝手だが、若者への期待感や愛情を持ちながら映画製作に携わっていた。
本作の監督井上淳一氏は自分を本名で描き自伝的な要素も。
若松監督に対してのリスペクトらしくないリスペクトを感じることができる。
あとで知ったが僕とは一歳違い。
一浪しているので大学は同級ということか。
もしかしてどっかで会っていたりして・・・。
若松監督を演じるのは前作「止められるか、俺たちを」と同じ井浦新。
すっかりはまり役になってしまった。
青春映画に位置づけられるが、僕にとっては別の意味で感慨深い作品となった。
低予算で作られているため、粗が目立つのはやむを得ない。
シネマスコーレ周辺のお店もビルの屋上から見える看板も当時ではなく今。
まあ、気づく人は少ないかな・・・。
それを差し引いても楽しめた映画。
1980年代、名古屋で遊んでいた人は、ぜひ、ご覧いただきたい。
河合塾に通っていた人も。