ここ最近で僕が最も好きな監督が三宅唱監督。
「夜明けのすべて」は2024年日本映画の1位にしているし、
「ケイコ 目を澄ませて」は2022年のベスト5の中の1本。
この年は順位をつけなかったが、順位をつけたとすれば1位にしていた。
空気感というか微妙な人間関係を描くのが上手いというのが僕の印象。
派手さはない、ドンパチもない、お涙頂戴というわけでもない。
息づかいがこちらまで届く感覚が素晴らしかった。
本作もそんな作品。
ただ先の2作とは異なり、観る者を選ぶのが本作じゃなかろうか。
元々、大きな盛り上がりを作る監督じゃないと思うが、
本作ほど淡々と進行する作品はない。
つげ義春の作品を読んだことはないが、暗い作品が多いイメージ。
ロカルノ国際映画祭最高賞の金豹賞を受賞したからと期待しすぎてはいけない。
大体、ヨーロッパの映画祭は地味な映画が選ばれることが多いと思うし。
簡単に説明すると、
作品に行き詰まった脚本家が旅先での出会いをきっかけに人生と向き合う姿を描く。
主役はシム・ウンギョン。
すぐに「新聞記者」を思い出す。
彼女は日本中心の活動なんだろうか。
日本語と韓国語の操り方が上手いので重宝されるかもしれない。
そうでもない?。
韓国語の手書きを見る機会はないが、実際に直筆だとあんな感じ。
きっと上手い字とどうでもいいことを感じた。
旅先で出会うのは堤真一演じる旅館の主人。
あんな旅館が成立するとは思えないが、東北の田舎だと納得してしまうのが不思議。
この2人のズレたやりとりがコミカルでもあり愛らしくもある。
「おいおい、それはないだろ!」と思うようなことも軽く流してしまう。
誰もが許してしまう。
そんなふわ~っとした空間が本作の魅力。
強烈なメッセージがあるわけじゃない。
エンディングもなんとなく。
人が何か変わる場合、大きなショックを与えられるよりも徐々に変わるのが本当の姿。
さじ加減が絶妙な映画。
そうそう、本作にも河合優実が出演。
少し前にAmazonプライムで「悪い夏」を鑑賞し、彼女の多才ぶりには改めて驚かされた。
本作は何をしたかったのかな(笑)。
89分という短い映画だが、いい意味で長さを感じた。
ゆっくりと時間が流れるのもいいんだろうね。


