映画を観ながら思った。
本作は藤井道人監督の日本映画に対してのリスペクト。
多くの日本映画を観てきた藤井監督の想いをそのまま映画化したと。
監督に影響を与えたヤクザ映画や高倉健作品らの要素を詰め込んだようにも思える。
撮影は木村大作氏。
冬の富山の風景が実にそれらしく35ミリフィルムでの撮影。
今年86歳の大御所はまだ第一線での活躍。
ここにもリスペクトが存在していると感じてしまった。
エンディングの字幕もかつての日本映画。
今どき文字が左から右に流れる作品はないと思う。
そんな点で本作は完成した時点で目標を達成。
評価や興行収入はどうでもいいのではないか。
それは言いすぎかな(笑)。
出演者も藤井監督に共感する役者が集まった気がしてならない。
元ヤクザを演じた舘ひろしは「ヤクザと家族 The Family」で親分役。
ピエール瀧や一ノ瀬ワタルらも藤井作品の出演は多い。
それもはまり役で。
横浜流星は出ていないが、さすがに忙しすぎるかな。
岡田准一は友情出演でチラッと出てはいるが・・・。
ストーリーに目新しさはない。
昔観たことあるようなテーマ。
元ヤクザの漁師が盲目の少年と絆を深め、自ら犠牲になりながら少年を救う。
周りには親切な人とろくでなしが存在し、その中で関係性を築いていく。
そこにヤクザが絡んできて・・・。
昭和でも平成でも令和でも成り立つ展開。
どんでん返しもなければ、予想を裏切ることもなく、驚く要素はない。
感動させるシーンも泣かせるシーンも筋書き通りのヒューマンドラマ。
僕はそれで十分。
きっとそれが藤井監督がやりたかったことだろうから。
と藤井監督ファンとして勝手に想像。
古くさいとか評価は分かれると思うが、僕は張りつめる空気感を含め見応えがあった。
ヤクザの世界はクスリから詐欺に移っているようだが、
親分とその子分のキレ方もハンパない。
親分の椎名桔平の非情さもよかったが、輪をかけて舎弟の斎藤工がよかった。
剃り込みを入れ眉毛も剃ってしまう役作りには感心。
キャリアを積んでもやることはやるんだね。
それも監督への想いか。
藤井監督にはこれからも期待したい。
日本映画らしい作品をコンスタントに作ってもらいたい。


