夏休みに観るには、お世辞にも相応しいとはいえない。
この時期の映画館といえば最新のディズニー映画や子供向けのアニメ、
あるいは大迫力の超娯楽大作など、家族やグループで楽しめる作品が中心。
話題作も多い。
あえてそういったラインナップを外して探したら本作にぶつかった。
舞台となるのは、東京の上野公園。
ほとんどのシーンがほぼこの界隈で撮影されている。
上野公園は僕も時々お邪魔する場所だが、
スクリーンに映し出される景色は、僕の知っている雰囲気とはまるで異なる。
普段、僕たちが無意識に目を背けがちな場所や、
都市の影の部分がそこには生々しく広がっていた。
主役を演じるのはソーシャルワーカーとして働くサツキ役の門脇麦。
映画の後半に至るまで、彼女がなぜそこまで執着してこの仕事を選び、
向き合っているのかはさっぱり分からなかった。
ただ、仕事に対して見せる異常なまでのこだわりや熱量から、
「何か深い理由があるのだろう」と強い予感をさせる。
その背景が徐々に明かされていくのだが、その展開が全く読めない。
性格も分からない門脇麦の高い演技力のさらにそうさせる。
本作は日本・中国・韓国の合作によるヒューマンミステリー。
社会性を感じさせる重厚なテーマと勝手に期待した。
しかし、捉え方は観る人により大きく分かれるだろう。
「身元不明の人物を探すミステリー」として捉える人もいれば、
失踪や孤独の背景にある人間の生き方を問う、一種の哲学として受け止める人もいる。
万人にお勧めできるような映画ではない。
暗くて重いので観終わった後に爽快感が残るわけでもない。
腑に落ちるか、落ちないかも人次第。
それなのに、なぜか頭に焼きつく魅力もあった。
その理由が何なのか、観終わった今でもよく分かっていない。
門脇麦と竹中直人との掛け合いに癒しを感じたからか。
夏休みを代表する痛快な娯楽作品もいいが、
たまには人間の孤独や死、生の深淵に触れる作品もいいかもしれない。
ちょうどお盆だしね。


