たまには書店に行かなきゃいけない。
本書は書店でなければ買うことはなかった。
そもそも存在すら知らず検索することもない。

たまたま寄ったジュンク堂書店で平積みしてあるのを手に取った。
発行元の風媒社は名古屋の小さな出版社・・・。

かつて名古屋には名古屋タイムズという夕刊紙があった。
僕らは「名タイ」と呼んでいたが、今の若い人はその存在すら知らないだろう。
広告を取り扱ったことはないが、名古屋の夕刊紙といえば名古屋タイムズ、
中京スポーツ、元上司が在籍する日刊ゲンダイ。

マジメな情報はほとんどなく、
(すみません、ちょっとはあるかな?)
娯楽、スポーツ、ギャンブル、お色気が中心。
僕が20代の頃はまだ元気ではあったが、ピークはとうに過ぎていた。

「名タイ」は平成20年に休刊。
時代の流れには逆らえなかった。
全国には同じような紙媒体はいくつもあるんだろうね。

本書は「名タイ」が報道してきた映画と野球の世界を描いている。
それも僕が知る由もない昭和20年代、30年代を中心に・・・。
映画コラムニストの端くれとしては名古屋の映画の歴史も押さえておかなきゃいけない。

脈々と続く文化が今に繋がっている。
その昔、映画は娯楽の王様。
驚いたことにピーク時(昭和27年)には名古屋市内には69館もの映画館があった。
栄地区だけでも15館あり、伏見界隈にも多くの映画館が存在した。
僕の住む中川区にもあったり・・・。
今でもシネコンを数に含めれば近い数はあるが、捉え方は随分異なる。

僕が愛用するミリオン座はその昔もミリオン座として独特の存在感を放っていた。
記録写真では当時の街の風景共に映画館が写し出されているが、どのあたりかはイメージできない。
昭和30年代の名古屋の街並みで分かるのはテレビ塔と納屋橋くらい。

それを眺めながら、いろんな想像をするだけでも面白い。
本書を読んでいて思い出したことがあった。

僕は学生時代、名古屋駅前の映画館でバイトをしていた。
今、ミッドランドスクエアシネマを運営する中日本興業が
駅前にいくつも映画館を持っており、その一つでバイトをずっとやっていた。
時給は驚くほど安かったが、運営する映画館はタダで観れたので十分元は取れた。

それとは別に僕の所属する映研は栄にある東映会館で代々バイトしていた。
当時、週末にオールナイトをやっており勝手に出入りしていたし、
観たい映画は当然のようにタダで観させてもらった。
おおらかな時代だった。

その頃、映画館に掲げられた大看板は一枚一枚手作り。
いかにも画家崩れのような人たちが別の部屋で大看板を描いていた。
すこぶる上手かった。
上映の切り替え時はその看板の取り付け作業も手伝った。
今や映画館もシステマティックになり、そうじゃないとストレスを感じてしまうが、
そんな時代を懐かしく思った。

映画のことばかり書いてきたが、本書には中日スタジアム、中日球場、
ナゴヤ球場に絡むドラゴンズや他のチームのことも・・・。
昔は名古屋にも女子プロがあったわけね。

記念に取っておくにはいい一冊。
あんまり本書に触れてない気もするが・・・。

たまには書店に出掛けようね。