日本では珍しい近年起きた事件の映画化。
もっともっとこの類の作品が作られるべきと思うのは僕だけだろうか。
日本の暗部や闇を描き、それを後世に残る作品にすることも映画界の役割。
そんなことを考える。
本作を制作したのが30代の松本優作監督であることも大きな価値。
その踏み込む力を称えたい。

本作はファイル共有ソフト「Winny」の開発で逮捕され、
著作権法違反ほう助の罪を被った金子勇氏の一連の裁判を描いている。

当時は2002年。
インターネットがぐんぐんと普及していた時期。
僕もネット事業の責任者で大した知識がないのに、サイトの企画や運用を任されていた。
日に日に進歩する環境についていくのがやっと。
そんな時に起きた事件なので、当時のことは覚えている。

危険なソフトを開発した技術者の犯罪という認識。
自身の知識不足もあるが、マスコミの報道に翻弄されていたのだろう。
本質や実態を知ることはなかった。

「人をナイフで刺した人は逮捕されるが、ナイフを作った人は逮捕されない。」
という本作の弁護士が吐くセリフはそのもの。
ソフトを開発した金子氏に何ら罪はない。
そもそもソフト開発の目的も不正コピーを作ることではなかった。
やはり無知は罪。
当時の自分を恥じた。

金子氏、弁護士、警察、検察官が取り巻く環境を見事に描き、すべてが正義。
しかし、観る者は客観的な視点で誰が正義で誰が悪かは明確になる。
果たして日本は安全な国だろうか。

僕の大好きな「日本で一番悪い奴ら」も警察の暗部を描いていたが本作も同様。
何らかの形で大きな組織が動く実態は日本の未来を潰してしまう可能性もある。
結果的に金子氏は無罪になったが、技術者として大切な時間を失くしたのは事実。
ひとりの天才を消してしまったのは、数字に表れないものの大きな損失。
知らない世界で同じようなことは起きている可能性も高いかもね。

東出昌大演じる金子勇氏が役のままだとすればかなり変わった人。
一般常識に欠け、自分がのめり込む世界にしか興味を持たない人がきっと大きな発明を生む。

抜群に東出昌大は上手かった。
まだ3月だが「とべない風船」と本作で2023年の主演男優賞は決まりだな。
誰か賭けますか?(笑)。

助演になる三浦貴大も脇を固める俳優陣もいい。
何より実話に真摯に向き合いながらも、スリリングに仕上げた作品が素晴らしい。

2023年の観ておくべき一本だと思う。