先日、ある飲み会で美しい女性と一緒になった。
いろんな話をしているうちに映画の話題に・・・。
「山田さんの最近、よかった映画は何ですか?」
「そうだなあ、『ペンタゴン・ペーパーズ』と『ウィンストン・チャーチル』かな。」
気取りながら映画コラムニストぶって語ってみた。

「洋画の方が好きなんですか?」
「本当は日本映画の方が好きなんだよね。」
ここも気取って映画コラムニストらしく答えてみた。

「私も日本映画が好きで、うつ映画が特に好きなんですよ。」
「うつ映画?」
初めて聞く言葉だった。

「重くて暗くて鬱になってしまうよな映画です。」
「へ~、『愚行録』みたいな?」
「そうです、そうです。そういう映画が大好きなんです。
中でも『鬼畜』が一番好きです。」
「うわ~、すごいね・・・。」
と素晴らしいセンスの持ち主とそんな会話が続いた。

「『日本で一番悪い奴ら』は観た?」
「観ました、観ました。山田さん、だったら『凶悪』は観ましたか?」
「いや、Amazonプライムのウオッチリストには入ってるんだけどね。」
「白石監督なら、こっちの方が救いようがなくて断然いいですよ。」
かなり映画通の美しい女性は力強く語った。
本当にどうしようもない映画が好きなようだ。

そんな会話がいいきっかけとなり、先日、ようやく観たのが「凶悪」。
いやあ~、救いようのない映画である。
実話を基に製作されているのは、白石監督の得意とするところか。

主役の山田孝之氏はいろんな作品で個性的な役柄を演じているが、
本作ではまともに見てて仕方ない。
よくよく見ればまともではないのだが、
他の出演者が異常すぎてまともに見えてしまう。

リリーフランキーとピエール瀧。
この2人は今は普通に役者として多くの作品に出演しているが、
元々はイラストレーターやミュージシャン。
上手すぎるというか変態的すぎる。

特にリリーフランキーのあの不気味な笑みは突出している。
「探偵はBARにいる3」も「美しい星」も「SCOOP!」もいやらしさが目立っていたが、
この作品はさらに際立つ。
彼は天才だな・・・。
そして、救いようのないかたちで映画は終わる。

映画の中身には全く触れていないような気もするが、
たまにはこんな気分の悪い映画もいい。
僕たちはシアワセな人生を生きていると実感できるのだから。