情報誌VISAが送付されるようになって13~14年。
欠かさず読んでいるのは沢木耕太郎氏の「feel感じる写真館」。
いわゆるフォトエッセイ。

最新号を確認するとすでに196回連載されている。
年6回の発行なので30年程になるのか。
昔は毎月発行の可能性もあるが20年以上は間違いない。
その中の81篇が本書に掲載。

沢木氏の作品はほぼ読んでいる。
重いノンフィクションも好きだが、こうした日常を取り上げたライトな作品も好きだ。
本書は旅の途中で撮影した1枚の写真に500字ほどの文章が添えられている。
言い方は失礼になるが、隠し撮りの写真は多い。
大半は被写体に許可を取っているが、そうじゃないケースもかなりの数。
(と推測)
そんな写真から妄想した内容がエッセイとなる。

沢木氏だから許されるし認められる。
僕だってそれくらいできなくはない。
適当に写真を撮って適当に文章を書く。
それでお金がもらえるなら、こんな嬉しいことはない。

そんなことをいえば「失礼なことを言うんじゃない!」
と本人や周りから叱責を受けるだろう。

ここまで生きてきた背景が違うのだ。
沢木氏のそれは圧倒的な実績と妄想力の豊かで人を惹きつける。
当然といえば当然。
捉え方を誤ってはいけない。

81点並べられた写真はほぼ海外。
アジアやヨーロッパ周辺が多い。
名著「深夜特急」で辿った道のりを何度も何度も行き来しているように感じる。
昔の感覚と今の感覚、時代の流れを肌で感じながら写真に収め想いをまとめる。
大きな事件を思い起こさせる写真はない。

ほぼ日常。
はにかむ子供。
老人の居眠り。
食事をするカップル。
本を読む若い女性。
夕日や夜景の風景も多い。
通り過ぎてもおかしくはない。

ごくありふれた場所。
海外だから特別に映るわけではない。
しかし、そのありふれた場所にちょっとした物語を載せると特別な場所になる。
本書はその連続に思えるから不思議だ。

1枚の写真から国の文化や環境を創造する。
それが「心の窓」ということか。
沢木氏はいつまで旅を続けるか。
いつまでも見ていたいけど。