1ヶ月前に「ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男」を観たが、その反対側を描いた作品。
方やヒトラーの宣伝大臣、方やモデル上がりの報道写真家。
虐殺を繰り返しても何も感じない人物と一人の死に動揺し苦しさを感じる人物の違い。
本作はそこを描きたいわけではない。
偶然、同じ時代を描いた作品のため、視点の違いに心が揺れ動いただけ。
本作も実話を忠実に描く。
ケイト・ウィンスレット演じるリー・ミラーはモデルから報道写真家に転身した人物。
彼女の演技は大胆というよりも遠慮がない。
自分をさらけ出すことに戸惑いはない。
それが相手の理解に繋がり緊張感が生まれる。
そんなシーンが目立つ。
本作はリー・ミラーの生涯を写真を通し紐解く。
言葉で時代を語るだけではない。
実際の現場をカメラで映し出し現実を語る。
どんな言葉よりも重いし、その場に立ち会うのも生きるか死ぬか。
正義感だけで務まる仕事ではない。
男も女も関係なくまさに命懸け。
酒とセックスとカメラだけが得意といっていたリー・ミラーも現実を前に言葉を失う。
強い戦士よりもか弱きカメラマンの方が戦争の恐ろしさを伝えられるのではないか。
そんなことも感じたり。
僕はポスターを単なる入浴シーンと捉えていたが、映画を観た後は恥ずかしい限り。
ネタバレになるのでポスターの写真の意味は伏せるが、じっくりと左のフレームを見て欲しい。
大きな意味が隠されている。
なぜリー・ミラーのこんな写真が存在するのか・・・。
映画を通して戦争の悲惨さを学ぶが、まだまだ知らない世界ばかり。
リー・ミラーという報道写真家も初めて知ったし、
「VOGUE」というファッション誌の立ち位置も本作を通し理解できた。
本作は何といってもケイト・ウィンスレット。
製作を兼ねているのも理由と思うが、最初から最後まで彼女の世界。
40代後半の肉体美を露わにするのも、70代を演じるのも堂々とした姿。
正直、僕は今までほぼ観てこなかったが、ここにきて魅力を感じた女優。
それだけでも本作の価値はあるが、第二次世界大戦の悲劇をこの角度から描く姿勢も素晴らしい。
改めてこのポスターの背景を知ってもらいたい。