何ていえばいいんだろう。
一言でいえば、愛らしい作品。

傑作や名作になることはない。
もちろん駄作ではない。
佳作といってしまうと存在感がなさすぎる。
なので愛らしい作品といっておこう。

映画に緊張感はまるでない。
喜怒哀楽がはっきりするわけでも、徐々に盛り上がるわけででもない。
まったりと緩く映画は流れる。
心地よい風に吹かれている感じ。

そんな作品。
といったところで、なんのこっちゃと思うだろう。

本作はとある海辺の町を舞台に、
ものづくりに夢中な子どもたちと秘密を抱えた大人たちの日常を描く。
アーティスト移住支援をしている町なので、
生活する人たちは何らかのカタチで芸術に関わる。

主人公14歳の奏介は美術部に所属し、
独特のセンスで絵を描き、モノを創り才能を発揮していく。
のほほんとした性格で好きなことを好きに取り組んでいるだけ。
そこにいろんな大人が絡み合う。

そこがなんともユニーク。
この町には詐欺師や逃亡者もやってくるが、悪を感じない。
騙される方もなんとなく許してしまう。
そして風のように去っていく。
「カナリア笛」を吹けるのは本物か、偽物かじゃなくて、
正直者かどうかだと思うし。
そんなシーンを含めクスっと笑い、それで終わる。

本作は出演者が魅力的。
というよりとても自然体。
楽しく気持ちよく演じているように思える。

主役の少年たちもそうだが、奏介の親戚役の麻生久美子も
(確認するまで母親と思っていた)
詐欺師の高良健吾もその彼女の唐田えりかも、
不動産屋の剛力彩芽も、存在が意味不明の坂井真紀や宮藤官九郎も楽しそうだった。
どうやら松山ケンイチも出てたみたいだが、まったく分からず・・・。

主役奏介を演じたのは原田琥之佑。
「サバカン SABAKAN」の少年役が大きくなった。
本作は中身は異なるが「サバカン SABAKAN」のような雰囲気が漂った。
(2022年の日本映画のベスト5に入れているんだよね)

こんな作品を年に1~2本観れると心が安らぐ。
自分の思うまま流れるように生きていきたいね。