韓国映画は容赦なく自国を抉る。
本作は事実を基にしたフィクション。
いわゆるファクション。
韓国映画はファクション作品がすこぶる上手い。
本作の紹介には「KCIA 南山の部長たち」と「ソウルの春」をつなぐ
韓国史上最悪の政治裁判を描いた衝撃サスペンスと表現。
両作を思い出しながら本作を鑑賞したが、確かにそう。
「KCIA 南山の部長たち」でパク・チョンヒ大統領暗殺されてから、
「ソウルの春」の軍事クーデターまでの間に行われた裁判が舞台。
先の2本に比べると迫力はやや劣るが、
裁判劇を通して韓国政治や軍部の恐ろしさがヒシヒシと伝わってきた。
1979年の一年だけでどれだけ映画ネタがあるのか。
翌年には光州事件を描いた「タクシー運転手」もあり、
壮絶な時代が映画で理解できる。
本作は史実とはいえ脚色された面も多いと思う。
見方を変えれば男同士の友情を描いたともいえるし、
意志を曲げない男の誇りを描いたともいえる。
暗部に一直線に向かうのではなくエンタメ性も垣間見えるため、
僕自身は迫力不足を感じたが、作品を通し韓国の現代史を学べるのは結構なこと。
旅行だけでは分からない国の特殊事情は映画から学ぶべきだね。
ネタバレしない程度に解説すると、
事件に関与した中央情報部部長の秘書官の弁護を引き受けた弁護士の奮闘を描く。
弁護士は秘書官を護るためにあらゆる策を講じるが、ことごとく権力に潰されていく。
明るい兆しが見えた後は容赦なく闇の攻撃があったり。
どこまでが事実かは分からないが、180度異なることはない。
俳優陣の役作りも素晴らしい。
昨年、自ら命を絶った「パラサイト 半地下の家族」の旦那さんも良かったが、
なんといっても合同捜査団長チョン・サンドゥ役を演じたユ・ジェミョン。
「ソウルの春」でファン・ジョンミンが演じた合同捜査本部長チョン・ドゥグァンと同じ役。
このユ・ジェミョンが不気味で怖かった。
「劇映画 孤独のグルメ」ののほほんとした役とは別人で驚いた。
こんな役をいとも容易く演じることも尊敬するが、
何より事実に正面から向き合う韓国映画の逞しさ。
やはり尊敬。
こんな作品を観ると日本映画ももっと切り込んで欲しいと思う。