カンヌ国際映画祭パルムドール受賞というのは相当なインパクトなのか。
公開間もない時にミッドランドスクエアシネマの予約画面を開いたところ、ほぼ満席。
普段ではあまり見かけることのない埋まり具合。
その日は諦め別日で観ることにした。
いろんな意味で関心の高い作品なんだろう。

とても残酷な映画。
それが映画を観終わった僕の率直な感想。
しかし、見方を変えればシアワセな映画とも言えなくはない。
ちりじりになっているはずの個人個人が一定の期間だけでも家族の絆を経験し、
それにより深い満足感を得られているのだから・・・。

だが、それも虚構の世界。
5歳の子供でさえ、永遠には続かないとは理解している。
それは言葉ではなく空気。
醸し出す温かい空気や冷たい空気が違和感を生み出し、
やすらぎが嘘であると肌で感じるのだろう。

だから、残酷なのだ。
この映画の捉え方はいくつかあると思う。
今の社会の闇をあぶりだしている、
軽薄な家族関係の裏返し、
表面的な意思疎通とその信頼感・・・。
あまりいい表現はできないが、
是枝監督はそんなことも言いたっかたのではないか?

だが、是枝監督は答えを言わない。
答えは常に観る者に求められている。
本作に限らず、前作の「三度目の殺人」も前々作の「海よりもまだ深く」もそう。
そして、対象は全て家族。
家族の在り方、それを取り巻く社会の在り方に
答えを求めているような気がしてならない。

僕は偽装家族でもないし、それなりに教育もし親としての責任も果たしてはいるが、
この映画のテーマである絆を問われると少々困る。
反省すべき点は多い。

愛情なんて点数をつけるものではないので気にする必要はないのだが、
どれだけ点数を上げられるというのか・・・。
自分とは無縁の世界と思いながらも、
客観視できない人は多いんじゃないだろうか。
余計に残酷さを感じるのかも・・・。

ここに登場する役者さんは見事。
子供たちもそうだし、最初違和感のあった松岡茉優さんもそう。
僕の中でちょっとズレたのが緒形直人さん。
あんなに下手な役者だったけ?と思ってしまう。
それは他の役者が素晴らしすぎたから、
そんな風に思ってしまったのかもしれないけど。

そして、安藤サクラさんの流す涙は何を意味するのだろうか。
世の中は偏見に満ち溢れている。
偏見に打ち克つには強靭な精神力だけでなく、
言葉とスキルも持たねばならない。
あの涙に圧されながら、持つべき力を問うたのだった。

パルムドール受賞、おめでとうございます。