これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

教養として知っておきたい二宮尊徳

nino1691

8月に参加した「バリュー・アップセミナー」で題材として使用された本書。

そのセミナーでは20分で気づきを得るためにピックアップして読んだが、
今回は全部読んでみた。
ちょっと遅すぎ?
ここ最近、読書量が少ない。今月は全然ダメ・・・。

伊那食品工業の塚越会長が講演を拝聴する度に「二宮尊徳」を勧める。
というよりも読まない奴は人として認められない。
そんな大袈裟ではないが、それだけ大きな影響を与えた人物と称えられる。

機会を伺っている時にこの本書を課題図書として与えられたので、ある意味、ラッキー。
大昔に「代表的日本人」を読んでいるので、
その存在は理解しているつもりだが、それはあくまでも全体像。
育ってきた環境からその時に発した言葉、
哲学や影響を与えた人物までは理解していない。
「代表的日本人」を覚えていないので何とも言えないが(笑)、
それよりは縦軸も横軸も拡げた感はある。
人はこうでなければならない手本。
それはビンボーな時代もカネモチな時代も変わらない。
人間の持つべき本質。
本書を読んでそんなことを感じた。

写真にあるような本を読みながら歩く姿は、
現代でいうと歩きスマホなので、認められるものではない。
昔はすれ違う人の数が少なかったのかもしれないが、現代では顰蹙の対象でしかない。
スマホ見ながらマジメに勉強してる奴も認められないからね(笑)。

本書の著者は松沢成文氏。
作家ではない。
ちょっと前まで神奈川県知事で今は国会議員。
相当勉強されているし、大切にすべき点を十分理解されている。

松下政経塾出身なんですね。
本書を出された理由も分かりました。
実際は理由になっていないかもしれないが、松下幸之助氏も二宮尊徳の影響を大いに受けている。
そのあたりが繋がっているのかもしれない。と勝手に判断した。
幸之助翁に限らず、影響を与えた名経営者は多い。
書こうと思ったが、帯に書いてあるじゃないか・・・。
その他には稲盛和夫氏であったり。
皆さん、繋がっているわけですね。

いずれにせよ、僕はあまりにも教養が足りない。
そして、歴史を知らない。
単語の数を理解しても意味がない。

著者が「おわりに」で端的に述べている。
「歴史を勉強しないと、人間は横軸思考になりがちだ。
自分の先祖とのつながりや、自分を通した未来とのつながりに関心が薄く、
今の時代を生きる幸福度欲求だけを考える横軸思考の人間にしかならないのではないか。」
気をつけなければならない。
そして、もっと学ばねばならない。

映画「君の名は。」

kimi1691

本来なら観るべき映画リストからは外していた作品。
周りの評判が、それも同世代の評判があまりにもいいために観ることにした。
僕は映画は基本的に一人で観る。
誰にも邪魔されることなく、自分の観たいタイミングで観る。
井之頭五郎さんの食事と同じ(笑)。

しかし、今回は珍しく嫁さんと一緒。
2人で映画を観たのは20年以上前のことだ。
それだけでも大事件。
でも、まあ、これは一緒でよかった。
ほとんどがカップルの観客。
僕の周りにも一人で観たオジサンが何人かいるが、確実に浮く。
もしくは怪しまれる(笑)。

また、この作品は娘も息子も既に観たという。
中三の息子はよくわからなかったというが、まだガキの証拠(笑)。
青いね。

ストーリーとしてはメチャ斬新というわけではない。
昔、どこかで観たことのあるような感じさえする。
有森也実のデビュー当時って、これに近い作品じゃなかったかな・・・。
大林作品のノスタルジックな雰囲気も持っていると思うし・・・。
僕がまだ10代から20代にかけての青春真っ只中の時代。
そんな頃は数多くの青春映画を観ていた。
胸が締め付けられることも度々。
今はすっかり心が汚れたせいか、胸が締め付けられるのは全く別のことでしかない。

そんな汚れたオジサンでもすっかり作品の中に溶け込み、青春していた。
ちょっとしたトキメキやラストシーンでも感動してみたり。
グッときてしまうシーンもあった。

正直なところ、あまりアニメには関心がないが、
自然を描く映像の美しさには感動した。
これまでの世界を超えているんじゃないかと。
僕が知らないだけかもしれないけど。

その自然が描かれているのが岐阜。
飛騨地区なので、僕の実家からは遠いが、それだけでも親近感が沸く。
岐阜弁は大方合っていたが、一部違和感を感じた。
飛騨地区と美濃地区では違うのかもと思いながら・・・。

声も良かった。
瀧クン役の神木隆之介君はほんと上手い。
声優が本業と思えてしまうほど、ハマっていたと思う。

最近、観る映画はどうも重い作品を選びがちだが、
たまには青春映画も観ないといけない。
どんどん歳ばかり取っていく。
つまらないオヤジになっていく。

常に恋愛感覚を持ち合わせる中年親父にならなきゃいけない。
アイドル映画には抵抗はあるが、
これからも作品を選びながら、青春を楽しんでいこう。

そう思わせてくれる映画だった。

映画「ニュースの真相」

news1681

今年はアメリカの暗部を描いた作品が多いと思うのは僕だけだろうか。

僕が年明けから観た作品だけでも、
「スポットライト 世紀のスクープ」
「マネーショート 華麗なる大逆転」
「ブラック・スキャンダル」
は事実を基にした映画。

できればあまり世に晒したくない。
そんな過去は隠したままがいいと思うのはその当事者だろう。
本作品もそれにあたる。

政治的要素が強い分、何かと気にしなきゃいかないと思うのは考えすぎか。
自由の国アメリカだからどんなことでも許されるのか、
共和党の現状を理解すれば許されるのか。
それにしてもブッシュ元大統領は評判が悪いな・・・(笑)。

基本的にこの映画に登場するジャーナリストは正義である。
どこまでも自分の意思を貫こうとする。
世に問う意味では好感が持てる行動である。
しかし、時に自分たちの行動は傲慢になり、人を傷つける。
真実を追求するあまり、その弱者の叫びに気づかないこともある。

その両面が描かれることがこの作品の大きな価値。
どちら側に偏ることなく、中立に描くことで映画の正当性が保たれているようにも思える。
これはアメリカの問題だけでなく、日本でも同様。
アイドルグループの解散騒動一つとっても同じことは言えるのだろう。
この手の映画が日本でも制作されることを期待したい。
ヒットはしないかもしれないが・・・。

久々にロバートレッドフォードを観た。
調べてみると最近でも多くの映画に出演しているが、僕にとっては久々。
当たり前だが随分歳を取った。
もう80歳なんだ・・・。
それでも華麗さは今でも維持しているから、流石だね。
監督としてもいい作品を残しているし・・・。
結構、硬派な作品ばかりなんだよね。
もう撮らないのかなと、ふと思ってしまう。

アメリカ映画は超娯楽作品も面白いが、硬派な作品もいい。
今年はあと何本観れるだろうか。
邦画ファンではあるが、そんなアメリカ映画を楽しみにしたい。

大人はもっと遊びなさい

syumi1681

成毛氏の著書は初めて読んだ。
若くしてマイクロソフト日本法人の社長を任され、業績をグ~ンと伸ばした。
40代半ばには社長を退任している。
僕が社長に就任した年齢でもう卒業されたわけだ。
分かりやすくいうと僕の倍以上のスピードで生きている。

卒業されてからは会社を興し、
言い方は失礼だが好き勝手なことをやられ、今に至っている。
本書も同様。
ご自身の生き方、考え方をそのまま反映させている。

こんな生き方ができれば、どれだけ人生が充実しているだろうか。
興味も趣味も尽きない。
それがグルグル回り、結果として仕事にも活きてくる。
ただその興味や趣味が仕事の目的となってはいない。
子供のようにやりたいことをやり、飽きたらサッと止めてしまう。
そこには何のこだわりもない。
勿体ないと思う時点で楽しめてないのだ。

そんなことを言われてしまうと僕はどうだろうか。
「大人はもっと遊びなさい」
と言われ、遊んでいるのだろうか。
他人から見れば十分、その類に入っているのかもしれない。

毎晩のように飲みに行き、走ったり、映画を観たり、本を読んだりしている。
このブログも著者に言わせれば趣味の範疇だろう。
否定すべきことではない。

本当に嫌だったら、ブログだって書かなきゃいい。
誰からも強制されるものではない。
書きたいときにだけ書き、ネタがない時は放っておけばいい。
しかし、それができない。
決めた以上、やらないと気が済まない。

マラソンも同様。
ノルマの達成はほとんどしていないので偉そうなことは一切言えないが、
楽しくて走っているわけではない。
大半は面倒くさいと思っている。
しかし、ある程度は走らないと気が済まないのだ。
果たしてこんなことは趣味と言えるのか。
楽しんでいると言えるのか。

成毛氏に問えば、肯定されるかもしれないし、否定されるかもしれない。
どっちでもいいじゃないの?と飽きられるかもしれない。
なんかとてもくだらないことで自問自答しているような気がする(笑)。

まあ、自分では悪くないと思っているので、良しとしようか。
そして、もっと何も気にせずできる遊びも見つけるとしようか。
きっとこの答えは、仕事をリタイアした時で出てくるような気がする。

あと10年、真面目に働いて、来る日に備えるとしようか・・・。

わけのわからんブログになってしまった(笑)。

陸王

riku1681

いかにも池井戸作品といえるような展開。
ケチな銀行も嫌らしい大手企業も定番中の定番。
池井戸ファンは何となく予測できてしまう。
著者はあえてそれを狙っているのではとも思えてしまうほど。

多分、その定番路線をあえて選び本書を書き上げているのだろう。
だからと言って、すべて読み取れるわけではない。
ワンパターンで済ますストーリーではない。

どんどん吸い込まれ、588ページにも及ぶ大作を一気に読んでしまう。
その力強さと読者を共感させる力は同じ岐阜県人にとって誇り。
あんまし関係ないかな(笑)。

今回はマラソンシューズをテーマにしている。
少なからずランナーの一人として、ここに書かれているランナーとしての悩みは理解できる。
そのあたりのリサーチ力や共感度はさすが。
単に企業小説に強い作家ではない力も証明されている。
そんな点からも読むべき一冊だと思う。
それは池井戸ファンであっても、そうじゃなくても。

そして、思う。
これってドラマになりそうだと・・・。
来年4月からTBS系日曜21時からのドラマで放映されるんじゃないかな(笑)。
主役は誰が似合うかな。
う~ん、そうだな。
竹野内豊氏とか、浅野忠信氏とか。
固さをちょっと崩させて・・・。

僕としては一層のこと、映画を製作してもらいたい。
2時間半のドラマチックな映画を作ってもらいたい。
必ず観に行く。

池井戸作品の主人公は中小企業のオヤジ(社長)。
今回もそう。
それだけでも感情移入するが、その背景に自分をダブらせながら読む。
オーバーラップさせることも多い。

そこで本書で改めて感じたのはお金の重要性。
結局、お金がなればそのアイデアも情熱も生かすことができない。
会社自体の存続も危うくなる。銀行との交渉も命懸け。
そんなことを思うといかに僕がラクをしているか。
また、資金繰りという重要な仕事から解放されているか。
反対に未熟さを感じてしまったり・・・。
そんなことも教えてくれる。

経営者もビジネスマンもアスリートも読んだ方がいいと思えた一冊であった。

「不運と思うな。」を読む

読書の夏。読書の夏休み。
今回は「大人の流儀6 不運と思うな。」
このシリーズはずっと読み続けているが、すでに6巻。

fun1681

新書ともいえない微妙なサイズがこのシリーズの特徴でもあり、一貫したスタイル。
新書より少し高い値段にするにはいい戦略かも・・・。
単純に僕がそう思っているだけかもしれないけど(笑)。

過去のブログでもこのシリーズは取り上げているので、
おヒマな方は読んでもらえればと思うが、感想はいつも同じ。
伊集院静氏のような人生を送りたい、あ~いった生き方をしたいということ。
男として憧れる存在。
もちろん才能があり、運を味方につけているも大きいと思うが、それだけではない。

一般的な人よりも真剣に人に向き合っている、ように思える。
それだけでも新しい価値に繋がる。
その自由さ、遠慮のなさが憧憬の対象となり安定的な読者を呼び込んでいる。
僕が思うに伊集院氏の読者は半分はあの生き方に憧れているだけだろう。
あんな男になりたいと・・・。

このシリーズは週刊誌のコラムがまとめられて一冊の書籍として構成されている。
その一つに「愚かでいいんだ。」というとても嬉しいコラムがある。
それは飲み過ぎてホテルで立ち上がることができない状況を描いたもの。
60代半ばを迎えてもそんな姿の披露は純粋に羨ましい。

そして、自信がつく。
僕はさすがに家でもホテルで靴を履いたまま寝てることはない。
いくらベロベロ状態でもそこまでは酷くない(笑)。
それでも僕は愚か者本部長として名古屋では認められた存在。
(なんじゃ、そりゃ・・・笑)

著者に「愚かでいいんだ。」と励まされると
ますますその道を極めようと思ってしまうじゃないか。
自分自身が認められている気がして安心してしまう。

すべて肯定的に捉えるのが大切ですね(笑)。

そんなことばかりが書かれているわけではない。
人がどう出会い、どう別れるか、その心の在り方についても書かれている。
それは積み重ねてきた人生の重さでもある。
そうなると僕はまだまだ経験が足りない。

それを知るだけでも読む価値がある。
もっと懸命に生きなければならない。

さらばカリスマ

kari1681

ついこの類の本を手に取ってしまう。
『さらばカリスマ セブン&アイ「鈴木」王国の終焉』
どうしてマスコミは大袈裟に表現したがるのだろうか。

それが売上に直結する意図は否定しないが、
中立的立場にある存在が必要以上に相手を貶めているような気がしないわけでもない。
これも否定するわけではないが、本書を執筆した記者は会社を経営した経験はないはず。

どの選択正しく、どの選択が間違っていたかなんて、結果から判断するに過ぎない。
当事者として、その状況の中でどうジャッジするかはその本人しか分からない。
心の葛藤を表現するのは不可能だ。
それを見事に表現してしまう記者はやはり優秀なのだろう(笑)。

僕が言うのもおこがましいし、そんな立場にないのは承知しているが、
やはり鈴木会長の退任は遅すぎたのではないか。
先端の経営をしていたとはいえ、80歳を超えて経営トップに立つのはいかがかと思う。

それはどんな優秀な経営者でもそう。
孫さんにしても柳井さんにしても80歳を超えて経営をしてはいけない。
これは僕の勝手な持論なので正しいとは思わないが、そう考える。
後を継ぐ者は時間が掛かれば掛かるほどカリスマを抜くことはできない。
その存在の大きさに委縮するのが当たり前なこと。
次の者がメチャ優秀であっても・・・。

と本書に関係ないことツラツラと書いてしまった(苦笑)。

本書には話題になった記者会見から、その前後の一連の騒動、
コンビニの歴史、もっとも大切な今後の予測まで書かれている。
どんなに順調に成長している会社でも必ず闇は抱えているということ。
一定の対立は生まれるということ。
全てが上手くいくわけではない。

組織や会社が大きくなることで、マイナスを抱えることも多い。
イトーヨーカ堂に限らず、西部・そごう、ニッセンをどう展開していくのか。
簡単にリストラすればいいわけでもないだろう。
僕にはさっぱり分からない。

そう考えるとセブン&アイの社長に就任した井坂氏の難題にぶつかっていく。
辞める辞めないというゴタゴタのほうが余程楽ではないだろうか。
メディアに対しては前向きな言葉が並ぶ。
それはトップとして当然というべき行為。
しかし、本音をつい漏らしたくなる場面もあるのではないか。

名作ドラマ「ハゲタカ」のワンシーンを思い出した。
カリスマ経営者大木昇三郎から引き継いだ塚本社長がタクシーの中でつぶやく。
「大空電機には工場の隅に転がるネジ1個にも大木昇三郎が宿っている。後を継ぐ者は地獄だよ。」

そうならないことを願いたい。

映画「シン・ゴジラ」

gojira1681

これは戦争映画。
それも社会派戦争映画だというのが観終わった後の感想。
ゴジラの存在が日本を攻撃してくる某国を表しているんじゃないかと勝手に錯覚してしまった。
少し前に読んだ「カエルの楽園」に似ているとも言っていい。

実際は全く似ても似つかない内容だが、訴えたいことは近いのではないだろうか。
現代の日本の在り方、政治家の使命と課題、米国との関係性。
それぞれが混じり合い浮き彫りになったような気がしたのは僕だけだろうか・・・。

こんなふうに書くと小難しい根暗な映画かと思われてしまうが、そうではない。
単純に楽しむことができる。
最初に登場するゴジラの顔はそのイメージを完全にぶち壊すし、
自分が知っている東京の街が次から次へと破壊されるシーンにリアルさを感じないわけではない。
それが妙な恐ろしさとなり、娯楽映画として醍醐味を味わうことになる。
ゴジラの登場しないシーンでも、ダレることなく緊張感が保たれている。

また、出演する俳優陣がユニークだ。
友情出演とか特別出演で有名な俳優がワンシーンだけ登場するのはよくあるパターンだが、
本作では随所にみられる。
それもこの作品は犬童一心や塚本晋也、原一男など映画監督が役者で出演している。
分からない人には全く分からない力の入れようだ(笑)。
僕も最後のテロップで知っただけだけど・・・。

そして、感傷的なシーンが極力カットされ、お涙頂戴と思わせるシーンがないのもいい。
重大な決断をする日本の総理大臣がいとも簡単に亡くなってしまうのだ。
(あっ、ネタバレ。これくらい、いいか・・・)

それほど「ゴジラ」に関心のない僕は、もし映画館で予告編を観ていなかったら、
本作は観なかったかもしれない。
それだけインパクトの強く、興味をそそられる予告編だった。
いい意味で乗っけられた。

今でも分からないのが「シン・ゴジラ」の「シン」。
「新・ゴジラ」なのか「真・ゴジラ」なのか「神・ゴジラ」なのか・・・。
誰か教えて欲しい。

「切り捨てSONY」を読む

sony1671

3年目のコンドーに借りて読んだ一冊。
トップが若手社員に本を借りるなんて、セコいと思われるだろうが、
そんなことはどうでもいい(笑)。
月1回、実施している若手勉強会でコンドーがこの本を紹介し感想を述べたため、
気になって借りたのだ。

こういったノンフィクションで企業の実態を学んでいくことは重要。
若いうちからいろんなケースを学ぶことは将来的にも役に立つ。
彼の感じ方と僕の感じ方は年齢や経験の差があるので異なるだろうが、
少なからず衝撃を与えたようだ。

本書では90年代後半から始まったリストラを、多くの対象者の取材を通して克明に描いている。
その分、リアルさが伝わってくる。
リストラ対象者を中心に語られている分、被害者意識を感じなくもないが、
これが冷静に見た、客観的に捉えた実態だろう。

僕ら世代のソニーのイメージは先進的でカッコいい企業の象徴だった。
今や悪人代表みたいになっているが(苦笑)、
出井さんが登場した時はソニーの新時代が始まったとも錯覚したものだ。
確かにいい時代も瞬間的にはあったかもしれないが、
90年代後半から現在に至るまでソニーはリストラと共に歩んでいるのは間違いない。

少し前にソニーに勤めている方と飲んだことがあり、
企業の組織について語り合ったことがあった。
酷く組織について否定的で会社そのものに不信感を抱いているように感じた。
その時は分からなかったが、なぜそんなふうにネガティブに思っていたかは
本書を読めば一発で腑に落ちる。

ここで描かれる組織でヤル気を出せというのはムリな話。
人を人として見るのではなく、単にコストとしてしか感じていない。
仕事で実績を残してきた優秀な社員も年齢や部門だけでリストラ対象となり、
キャリア支援室なんて呼ばれる部屋に送り込まれ飼い殺しにあう。
尋常な精神では持ちこたえることはできない。

退職金の積み増しという配慮はあったのかもしれないが、
ストリンガー社長の年棒8億円の前ではあまり意味はなさない。
僕が不思議でならないのは、なぜ会社が酷い状態で社長の年棒が上がり、
それも4億とか8億とかとてつもない金額になってしまうのか。
全く理解不能。
バッサバッサ人を切れるのもトップが切られる側の社員の顔も性格も知らない方だろう。
その人との仕事経験や背後にある家族を少しでも知っていたら、簡単にはできないはずだ。
それが情けとなり致命的になってしまうかもしれないが、
会社とはそんな運命共同体であるとも言えるんではないだろうか。

×××××名のリストラとか×××億円の営業赤字と数字で書いてしまうのは簡単だが、
その一人一人を見ていけば、簡単に数字で言うことなんてできないはず。
そう思うとデカい組織なんてあまり魅力に感じない。
それは個人的なやっかみではなく素直にそう思うのだ。

しかし、一般的にみればソニーは優良企業で大手の一社。
20~30名の企業より魅力的に映る。
トップが全従業員の性格も趣味も知っている方がステキと思うのは僕のひがみでしかないのだろうか。
とつらつらと非難に近いことばかり書いてしまった。

これを他人事として捉えるのではなく、自分事として捉えなければならない。
自分が何をなすべきか・・・。
伊那食品工業の塚越会長ではないが、それを誤らなければ間違いは起きないはず。
反面教師として読んでおくことで学ぶべき点は多い。

映画「セトウツミ」

seto1681

どんな映画がさっぱりわからないまま観に行った。
知っていることといえば、監督が大森南朋のお兄ちゃんというくらい。
このタイトルもどこにイントネーションを合わせればいいか分からなかったし、
何の意味を示すかも知らなかった。
「セトウ ツミ」「セトウツ ミ」なんて悩んでみたり・・・。

映画館で流れるアナウンスでその発音を聞き、
窓口で「セトウツミ、お願いします。」を平坦な言葉で購入した。
タイトルの意味は映画のポスターを観てようやく理解できたが、至って単純。
深く考えるまでもなかった。

まったく動機のない中で映画を観るのも面白いものだ。
この作品、75分ととても短い。
登場人物もこの主役の二人とあと数人程度。

同じタイミングで上映されている「インデペンデンス・デイ/リサージェンス」は
製作費だけで何百億円もかかっているだろう。
そんな映画と同じ料金で観るのはいかがなものかと思われるが、
もしかしたらこっちの方が贅沢かも・・・(笑)。
なんて、この小粒な映画を認めてしまいたくなるような作品だった。

僕は大学時代に映画研究会で8mm映画を作っていた。
他の大学の仲間はもっと真剣に映画を作っていた。
いわゆる自主映画ってヤツだ。
この作品を観ながら、その当時のことを思い出した。
そんな雰囲気を醸し出している映画だった。

だからこそ、より興味深く観れたのかもしれない。
適度に楽しく、適度に笑い、シアワセな気分になれたのかもしれない。
この映画を観たところで、深く考えさせられたり、人としての生き方を学べるわけではない。
脱力感いっぱいの高校生を観たところで何の学びにもならない。

しかし、今年観た映画の中ではベスト5(今のところ)に入る作品じゃないかな・・・。
また、この主役二人が魅力的だ。
池松壮亮くんは将来日本の映画界を背負っていくような気がするし(大袈裟か・・・笑)、
菅田将暉くんの味のある表現力はタダ者ではない。
池内くんの前作「海よりもまだ深く」も良かったし、
菅田くんの軽薄な「そこのみにて光輝く」も良かった。
彼ら二人がダラダラと高校生を演じるのもきっと深い意味があるのだろう。
それは違うか・・・。

続編が出来たら、また観てしまうかも。
きっとブツブツ言いながら、観てしまうんだろうなあ~。