河瀨直美作品は僕の中で評価が分かれる。
「あん」「朝が来る」はよかったが、「光」「Vision」は今一つ。
壮大なテーマを描こうとして僕には伝わってこなかったり。
海外の評価は高いので僕の感性が乏しいだけかも。
そんな監督だが本作は観ようと思っていた。
そして評価は「あん」「朝が来る」側。
壮大なテーマよりも目の前にある難しいテーマの方がこちらに響く。
観終わった後、日本人として大切なこととその結果生まれる苦しみを感じた。
相手に遠慮する姿勢は日本人の良さだが弱さでもある。
必要以上に自身を苦しめる。
死生観や倫理観も独特。
何のことかを思われるだろう。
本作は心臓移植をする側とされる側の葛藤を描く。
自分の子供を救いたいと思うのは親であれば誰しも同じ。
自分の子供が救われても、タイミングが合わずに他の子供に先立たれると申し訳なく感じる。
僕がその場にいたら同じ感情を抱く。
移植相手がいるか分からないが懸命に生きる子供。
それを見守り続ける親。
心臓は動いてはいるものの死に直面し臓器提供を覚悟する親。
板挟みにあう医師。
それぞれの立場を理解するのは難しくない。
誰も間違った行動はしていない。
物事がうまく進まないだけ。
解決できない医療現場の課題が浮き彫りになる。
ドキュメンタリー風に描かれるストーリーがこちらに迫ってくる。
感情移入しながらその中に放り込まれた。
これがメインテーマだと思うが、そうとは言いきれない。
フランス人医師の女性コリーと屋久島で出会った恋人迅との関係は作品において重要。
しかし僕はどう表現すればいいか分からない。
迅は失踪するが映画のテーマとどう結びつけるのか分からない。
きっと河瀨監督の意図があると思うが僕は読み取れなかった。
わざわざ岐阜の揖斐までチンチン電車に乗って訪ねるわけだし・・・。
ただ僕が本作に揺さぶれたのは事実。
「朝が来る」に近い感覚。
僕が惹かれたのは主役ではなく脇役。
病院に出入りする弁当屋の女将役の尾野真千子と心臓疾患で入院した子供の母親役の岡本玲。
この2人の感情表現が素晴らしかった。
日本人の優しさや思いやり、自分に向ける倫理観を感じることができた。
河瀨監督は常に海外を意識している。
クレジットは英語。
映画もフランス語や英語を多用。
その評価は賛否が分かれると思うが、観て欲しい作品であるのは間違いない。


