映画関連の書籍は多いが、バイヤー側、宣伝側の視点の書籍は思ったほどない。
自称映画コラムニストとしてはその分野の理解も必要。
ましてやこれでも会社経営者。
経営者目線で映画業界を知ることは活動の幅を広げるためにも必須といえる。

今後、僕のキャリアも変わる可能性もある。
数年後、自分自身が映画を仕入れ宣伝する側に回る可能性はなくはない。
その仕事の苦労や大変さからやりがいを見出す。

自らヒット作や評判の高い作品を発掘し、
多くの方に届け、かつ興行収入を上げる。
その一貫した仕事にやりがいがはいはずはない。

過去を振り返り反省する点がひとつ。
就職活動をしていた大学4年時。
東宝の最終面接に名古屋から唯一呼ばれ東京に向かった時のこと。
僕は松岡社長らが並ぶ面接で「●●な映画を作っていきたい。」
そんな話をしたと思う。

見事に落ちた。
映画好きなら誰でも語れるチープな面接。
僕はただの営業マン。
強みといえば誰の前で物怖じせず売り込めること。

今思えば、「もっと売上を伸ばす。東宝のファンを増やし、東映、松竹を引き離す。」
そんな話をすればよかった。
もしかしていたら人生は変わっていたのかもしれない。

そんな空想はともかく、配給の仕事は想像以上に大変。
特に規模の小さい会社であればなおのこと。
一つの作品が経営を揺らがすことにもなりかねない。
自分が絶賛しても世間に見向きもされない可能性もある。
もちろんその反対の可能性も・・・。

著者はフランス映画の買い付けから映画館への上映交渉、マスメディアへのPRを行ってきた。
映画好きであることは当然だが、それだけではできない仕事。
むしろ単なる映画ファンではやれない。

加えてマニアックな作品ばかり。
全国のシネコンが飛びつく作品は少なく、ミニシアターでの上映が中心。
昨今、ミニシアターの存在は厳しくもある。
名古屋でいえばミリオン座がそれに近いが、映画館にも頑張ってもらわねばならない。

著者が書かれるようミニシアターが特別な存在、
ミニシアターで観ることが付加価値を持つ時代になるといい。
それには僕も共感する。

職業としてのシネマ。
お金の心配をしなくていいのなら、無償でもやってみたいね。
簡単じゃないけど・・・。