永野芽郁はコミカルな演技を巧みにこなす女優だと思う。
もちろんシリアスな演技もできるので貴重な存在。
そんな彼女の活躍の場が奪われるのは勿体ない。
どうでもいい外野がとやかく言う世の中はいかがなものか。
当事者の問題にしておけばいいじゃないか。

いかん、映画と関係ないことは発してしまったが、
これで本作が不振な興行になるようなら悲しい限り。
将来有望な若手は大切に育てて欲しい。

本作は人気漫画家・東村アキコの自伝的な作品。
原作はもちろん彼女で本作は脚本も手掛けている。
漫画家が脚本や製作まで兼ねるのは珍しいことじゃないか。
それだけ思い入れが詰まっている証。

僕は漫画はほぼ読まないので原作も東村アキコさんも知らなかった。
映画を観て初めて知った。
本作は映画を通して理解したが、他の作品は知らないまま終わるのか。
東村作品に興味は湧いたが、少女漫画は読む勇気がない(汗)。

本作は漫画家を目指す少女と恩師である絵画教師の出会いから別れまでを描く。
いうまでもなく少女・明子が永野芽郁で教師・日高が大泉洋。
この2人の絶妙なやりとりが面白い。

今なら完全なパワハラだが、あの時代だから許された。
原作者は1975年生まれなので、僕よりも9歳下。
当時、あんな先生はちょくちょくいた。
僕の高校時代の体育教師は校門前で竹刀に握り、
遅刻する生徒をビシバシやっていた。

ビジバシやるのは体育教師のようないかつい人。
超文系な美術教師は見たことがない。
それが不思議。

しかし、大泉洋が演じると何の違和感もなく吸い込まれてしまう。
はまり役だ。
というよりも大泉洋はなんでもそれなりにこなしてしまう。
今年観た「室町無頼」でさえ、似合っていた。
昨年は「ディア・ファミリー」だったし。
しばらくは彼の時代が続くね。

映画としては誰もが楽しめる作品。
笑えるし、ホロッともくる。
特にとやかく語ることはない。

僕が注目すべきは「プランド・ハプンスタンス・セオリー」。
いわゆるクランボルツ氏のキャリア理論。
今まさに大学でその重要性を伝えており、本作もそれに該当する。
よっし、学生に伝えよう。

偶然、友達に連れて行かれた絵画教室で先生との運命的な出会いがあり、
彼女の才能が花開いた。
コミック誌への懸賞応募も偶然といえよう。
偶然を大切にしたからこそ、人気漫画家として活躍するに至った。
東村さんがそれを伝えたいかどうかわからないが、僕はそう受け取った。

恩師との濃密な関係を描くヒューマンドラマだが、
キャリアの視点でも魅力的な作品。
映画の中で、大泉洋は「書け!書け!書け!」と言っていたが、
僕は若者に言うべきだろう。
「観ろ!観ろ!観ろ!」と。