この作品を語るのは難しい。
映画「国宝」は歌舞伎に詳しくなくても、
世襲制の難しさや人間模様、舞台の美しさで語ることができた。
本作はそうはいなかい。
追いかけるのは人間国宝の狂言師・野村万作。
彼の特別な一日を追ったドキュメンタリー。
そもそも日本の伝統芸能・狂言を観たことがない。
名大社のメンバーが演じた能の舞台しか経験がない。
正直なところ、ハンパな僕は理解が足りない。
本作は野村万作氏がライフワークとして磨き上げてきた狂言「川上」を映す。
夫役が野村万作で奥方役が息子の野村萬斎。
上演された2人の舞台をそのまま映し出す。
一つ一つの身のこなしや言い回し。
狂言らしい独特の表現。
確かにのめり込んで見入ってしまう。
しかし、僕なんかは単純にそんな見方でいいのかと自分を疑う。
素人だから当然だが、もっと深い知識が必要なんじゃないかと・・・。
ただこれも経験値。
今後、伝統芸能に触れることで少しずつ理解を深めていけばいい。
そんなことを「川上」の舞台を観ながら感じた。
本作で重要なのは野村万作氏の狂言もあるが、その生き様。
むしろ人となり。
90歳を迎えた年齢でありながら、芸に対する探求心は絶えることはない。
そして第一人者としての自負よりも自分の足りなさを語る謙虚さ。
普段の生活を見る限り元気のいいお爺ちゃんという感じ。
いつも通り道を歩く姿を人間国宝なんて思わないだろう。
650年も伝統芸能が維持されるのはそんな真摯な姿勢なのかもしれない。
ファミリービジネスも同様で長く繫栄する企業は堅実で謙虚な経営。
200年、300年続く企業には明確な理由がある。
そんな第一人者の存在が息子の萬斎氏や孫の裕基氏に継がれていく。
裕基氏へのインタビューを聞くと全うな継承が行われていると感じる。
伝統芸能を継ぐプレッシャーはあるだろうが、
気負い過ぎることなく向き合ってもらいたい。
本作のようなドキュメンタリーを観る機会は少ない。
まだまだ理解できない面もあるが、
定期的に観ることで自分の観る力も養いたい。