たまには知らない世界のドキュメンタリーも必要と鑑賞。
クラシック音楽の世界、特に最高峰とされるコンクールの舞台裏は、
普段我々が身を置くビジネスとは全く異なるものだと思っていたが、
その熱狂と競争の厳しさは、
むしろあらゆるプロフェッショナルの世界に共通する本質を教えてくれた。

驚いたのは、僕たちが普段目にすることのない音楽家の世界にある「とてつもない競争」。
世界中から集まった若きピアニストたちが、
たった一つの栄冠を目指して文字通り人生を賭けている。
彼らの表情には、音楽への愛と勝者でなければならないというプレッシャーが入り混り、
その切迫感は企業経営における市場競争の厳しさと重なる。
世界レベルの戦いとは、僕らが想像する以上に過酷な「生存競争」なのだ。

特に印象的だったのは出場者たちが会場に用意された複数のピアノから、
自分の演奏に適した一台を選ぶシーン。
彼らはわずかな音色の違い、鍵盤の重さ、響きの粒立ちを、
極限まで集中して聴き分け「この音だ」と瞬時に見極める。
「ピアノの音を見極める」という行為は、外野からは理解しがたい。
というは違いは全然分からない。
彼らが積み重ねてきた膨大な時間と経験の賜物なんだろう。

これは僕たちの仕事にも通じる教訓。
優れた経営判断や採用における人材の見極めも一見華やかだが、
その根底には日々の地道な経験と瞬時の判断を下すための「見極める力」が不可欠。
一流とは誰も気づかないわずかな違いにこだわり、
それを結果に結びつけられる者のことだ。

そして、過酷な競争を生きる彼らが奏でる音楽はやはり素晴らしいの一言に尽きる。
極限の状況下で生まれる芸術は、人の心を揺さぶり感動を与える。
彼らが毎日地道に積み重ねる一歩一歩が聴く人々の「明日」の活力につながる。

「一歩一歩が明日につながる」。
この映画は音楽の世界の話でありながら、
どの世界で生きるプロフェッショナルにとっても、
前向きな姿勢と弛まぬ努力の重要性を再認識させてくれる作品だ。