実にイマドキな感じの作品。
天野監督は前作「ミセス・ノイズィ」もそうだが、今を描くのが上手いと思う。
勝手な推測だが天野監督は名大社を知っているはず。
愛知県出身で名古屋大学を卒業しリクルートに5年勤務していた。
ウィキペディアにはそう解説されているので間違いない。
多分・・・。
リクルート時代に磨いた感性が作品作りにも生きているのだろうか。

話が逸れた。
本作は今の時代を象徴している。
「ナイトフラワー」とは違う。
まともな男と女。
自らの目標に向かい日々努力をしている。
マジメで真剣だからこそぶつかり、嫉妬や妬みも生まれる。
両方の佐藤さんの気持ちが理解できるからこそ辛い。

タイトル通り主役は岸井ゆきの演じる佐藤サチさんと宮澤氷魚演じる佐藤タモツさん。
女性目線と男性目線は異なる。
本作が見事なのは両目線に立ち、お互いの感情をはっきりと描いていること。

結婚し子供を持ち仕事をする男女なら納得感は強い。
最近の傾向として女性の方がバリキャリだと男性の劣等感が浮き彫りになる。
お互いに言い分はあり、それもよく分かる。
そしてどちらも悪くない。
そのため平行線を辿ってしまう。

僕がイマドキだと思うのはそんな点。
(自分のことは棚に上げて・・・汗)
なんのことか分からない?

作品を知らない方に簡単に解説。
弁護士を目指し何年も司法試験を受け続けるタモツと
彼を助けるために一緒に勉強し一発で合格したサチ。
サチは弁護士事務所で働き始め、タモツはバイトしながら勉強を続ける。

仮に自分がタモツだとしたら何を感じるか。
「う~ん、大丈夫、大丈夫」と言いながら内心は穏やかじゃない。
それも法律を教えていたサチが一発合格。
タモツは自分が情けなくなるし、サチはむしろ申し訳なく感じる。

映画はそれを間接的に伝える。
普通の男や女はこの状況での言葉は困るはず。
昔のように男が外に出て女が家を守るという構図があれば困ることはないが、
(いや、ベンガルをみるとそうでもない・・・)
いい意味で今はフラット。
耳障りのいいフラットは難題を残す。

これからの時代、幸せなカップルに限ってこんな問題が起きるかもしれない。
時代性でいえば2025年で最も優れた作品ではないだろうか。

最後にひとつ。
今年の主演女優賞は岸井ゆきで決まりかな。
可愛く愛らしい表情、相手を想う切ない表情、感情的に怒る表情、そしてラストシーン。
彼女の演技が映画をワンランク上に押し上げた。
それを感じた作品だった。