利重剛監督は40年前の学生時代から知る存在。
当時、自主映画を作っていた学生たちの間では、名の知れた若手監督。
これから日本映画を担っていくポープとして見られていたはず。
80年代のあの熱気の中で独特の存在感は今でも記憶にある。
しかし、世間一般では「映画監督」というよりも「俳優」のイメージが強いのではないか。
それも主役を張るというより、物語に深みを与える脇役としての出演が多い。
作品によって、強烈に記憶に残ることもあれば、
申し訳ないが失念してしまうほど自然に溶け込んでいることもある。
だが、利重監督自身はむしろ「役としての消え方」を楽しんでいるようにさえ思える。
先日の「未来」はイヤな記憶が残っているけど(笑)。
本作でヒロインを演じた呉城久美は初めて知った。
スクリーンでの彼女は瀧内公美を少し荒々しく、野生味を足したような印象。
大変失礼だが特別美しいというわけでもない。
気になって調べてみると、京都大学を卒業した才女だという。
クイズ番組などにも出演していると知り、そのギャップに驚かされた。
しかし、不思議なものでラストはとても美しく映っていた。
本当はそっちが正しいんだね。
肝心の映画といえば、なんとも不思議な感覚に包まれる作品。
プロの技術で撮られてはいるものの、
精神性としては自主映画の延長線上にあるような、瑞々しさと「青さ」が同居している。
ストーリーを追うというより、その場の空気や言葉にできない感情の揺らぎを共有するような体験。
商業映画の枠組みに無理に当てはめようとしない、自由な空気感が心地よい。
役者としても出演している利重監督はそれも楽しんでいるよう。
思えば学生時代のあの頃、僕らが憧れた「表現」の形がそこにはあった。
効率や分かりやすさが優先される現代において、
こうした「正解を提示しない」映画の存在は貴重。
昨年末に旅行した横浜・山下公園が舞台なのも印象的。
ランニングした場所がそのまま撮影されたエリアだったし・・・。
それだけで評価は上がる(笑)。
利重監督にはもっと映画を作ってもらいたいね。


