きっと友人映画評論家ヤブさんの映評がなければ観なかった作品。
山崎監督は好きな監督の一人だが、ファンタジーの類はあまり得意ではない。
ふだんはカッコつけて社会派映画を気どって観るタイプだし・・・(笑)。

結果的には観ておくべき映画だった。
全編通して、とても不思議な感覚に襲われ、僕自身が別の世界に引き込まれていく。
これも不思議な感覚なのだが、
映画を観ながら大林監督の名作「さびしんぼう」を思い出してしまった。
高畑充希さん演じる亜希子役と富田靖子さん演じる「さびしんぼう」がダブってしまったのだ。

「さびしんぼう」は僕が大学時代に観た映画で大林作品では一番好きな映画。
これまで観た日本映画の中でもトップ5に入るだろう。
感化され尾道のロケ地にも行ってしまったほどだ。

そのさびしんぼうと亜希子の泣いて去るシーンがなぜかダブってしまい、
ぐらりと体を揺さぶられてしまった。

正直言って、高畑充希さんはこれまであまりカワイイとは思わなかったが、
(すいません)
この映画で一気に好きになってしまった。
映画の与える影響は大きいですな(笑)。

ネタばれになるので多くは語らないが、
この作品には貧乏神やら死神に加え、多くの魔物や幽霊が登場する。
安藤サクラの死神なんてやたら軽い。
「~っすよね~」という語り口調。
しかし、そのコミカルさが上質なエンターテイメント作品に仕上げている。

映像もさすが山崎映画と思わせる世界。
亜希子が連れ去られる「黄泉の国」は宮崎映画で見たような気もするが、創造性溢れる世界だ。

チープな恋愛映画はこの歳になると観る気になれないが、
この作品は胸がときめき、
忘れかけた若い頃の感覚を思い出させてくれる。
ジャンルは異なるが大人が楽しめる恋愛映画といってもいい。

この映画の脇を固めるのは山崎作品の常連。
堤真一、薬師丸ひろ子、三浦友和らがいい味を出している。
こんな映画が多いときっと日本もシアワセになる。
年末年始に相応しい映画だろう。