何ともブラックなタイトルである。
著者の曽和さんは『就活「後ろ倒し」の衝撃』をきっかけに知り、
その後、お会いする機会を頂いた。
講演ネタでも使用させてもらった(笑)。

本書も含め過激なタイトルの書籍が多いので、
人物的にも毒舌を吐く方かと思っていたが、実際は温和で紳士的。
採用に対する考え方も理に適った説得ある話をされる。
インパクトあるタイトルで人物が誤解されることはないだろうが、
あえて話題性を作るための戦略なんだろう。

こんな表現をすると自分がいかにもできる人間みたいで恥ずかしいが、
本書には僕が普段、思っていることがズバズバと書かれている。
僕は気が弱い人間だし、炎上もさせたくないので、
オブラートに包んだ表現で誤魔化しているが、
実際はここに書かれていることに大いに賛同する。
まあ、会社を守る立場としてはあまり敵を作るのはよろしくないので、
気は弱くなくてはならないのだ(笑)。

ただ社内を見渡せば、いい意味で同じ解釈が浸透している。
パワハラ発言なんて日常茶飯事なような気もするが、
(ウソです)
それを受け止めるメンタリティは各自が持ち合わせている。
「良いダメ出し」も「はっきりストレートに話す」こともうちの文化だとも思う。
それが健全性を生み、逆にギスギスした関係性はなくなる。
それは「悪人」を各々が理解し、自らも少なからず「利他的な悪人」として存在しているからこそ。
まだまだ「部下の相談をスルーする」厳しさは持ち合わせていないので、
真の悪人にはなりきれていない。
だから離職率も低いのだろう。

本書は逆説的に表現されていることが多い。
しかし、そこに愛を感じるし、組織の全う性も感じるので嫌悪感は一切感じない。
表向きに美しい制度や職場を作るだけでなく、
本音でぶつかり合う環境がいい職場になっていくはず。
本書を読んで、自分の考え方に自信を持ったのと同時に未熟な点にも気づかされた。

帯にあるようなハゲちゃびん社長になるつもりはないが、
もっともっと「利他的な悪人」になるべきかもしれない。

おススメの一冊である。