明日に迫った『沢木耕太郎さん講演会「旅人として生きる」』。
当日は講演会が基本であるが、特別企画として「あなたにとって、旅とは」と「沢木さんの本の紹介」がセットになっている。
残念だが、旅について語れることはない。一人旅は学生時代の1回のみ。海外への旅行は嫁さんと15年以上に行ったきり。あとは平凡な家族旅行があるだけ。「僕にとっての旅は家族サービスです!」。
そんなコメントは場を白けさすことしかない(笑)。
だとすれば、本の紹介をするしかない。こちらだったら何とかなりそうだ。そこで何がいいか考えてみた。参加者が影響を受けた書籍は大よそ予測することができる。ああ~、あれね・・・。と誰もが納得するであろう。
そうであれば、僕はできるだけ少数派の作品がいい。自分にとって印象深い作品を思い出してみた。
hagesiku14
「沢木耕太郎ノンフィクションⅠ激しく倒れよ」にも掲載されている「コホーネス<肝っ玉>」。最初の出版は短編集「王の闇」。紹介するとすれば「王の闇」になるだろうが、この際、それはどちらでもいい。
この「コホーネス<肝っ玉>」は、今やお笑いタレントしか思えない輪島功一氏の世界チャンピオンに三度挑戦し敗者となり引退していくストーリー。それを同時並行で沢木氏がルポしていく。
チャンピオンである存在から引き下ろされ、尚もチャレンジする姿を描いている。著者がよく取り上げる主人公像。僕はここに描かれる輪島功一氏の生き方が好きだ。
かつてチャンピオンであった栄光の座を捨てて、ボロボロになりながらも自らの姿勢を貫いていく。その一貫した姿に失くしてはならないプライドを感じるのだ。
そして、引退後、沢木氏との酒を交わす場面で、若手選手の育成について自身を語る。
「俺は名選手じゃなかった。だからこそいい選手が作れると思うんだ。」
「俺は二流だったけど、最後まで闘うことをやめないチャンピオンだった。」
この言葉はずっと僕の胸に響いている。もしかしたら、僕もこうなるべきかと・・・。
「激しく倒れよ」そして、「コホーネス<肝っ玉>」。
敗者は多くの事を教えてくれる。