第40回サンダンス映画祭ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門審査員大賞受賞作。
なにげに今年初めて観たドキュメンタリー作品。
ドキュメンタリーは観ようと思いつつ、今年46本目でようやく辿りついた。
映画コラムニストとして失格ですね(笑)。
ノルウェーを舞台に母親を亡くした家族の3年間を追いかける。
とても小さな作品だが、描かれる世界は深くて大きい。
豊かな自然の中で自給自足で暮らす5人家族。
お金では買えない生活を求め、子供は学校にも通わず自分たちで教育をする生活は夫婦の理想。
小さな子どもたちも満足しながら生活を送っていた。
そこで訪れた母親の死。
生活は一変し、これまでの生活が維持できなくなる。
その家族の様子を美しい自然と共に描くわけだが、僕は観ながら錯覚を起こす。
演出された普通の映画かと。
巧みな取材方法と家族が愛らしく振舞う姿が演技のように思えたのだ。
ネタバレになるので詳細は省くか、子供たちは日増しに成長し、自我も芽生えていく。
その中で起きる葛藤。
母を亡くした悲しみ。
不慣れな学校での生活。
以前のような生活に戻りたい気持ち。
正面から子供たちに向き合う父親も迷いながら、自分と戦いながら理想の生活を求める。
せつなくもあり温かくもある。
時に子供たちはわがままで父親を困らせるが、
父親は決して声を荒げることなく真剣に冷静に子供の話を聴く。
出来の悪い父親としてはそれだけでも感動を覚えたり・・・。
こうして心豊かな人間が育っていくんだ。
亡くなった母親も含めすべてが魅力的だが、僕の目をもっと惹いたのは次女フレイヤ。
推測するに10歳あたりから撮影されていると思うが、彼女が本当に愛らしい。
彼女を天才美少女子役と錯覚してしまったくらい。
父親を想う大人びた言葉もあれば、子供らしい喜怒哀楽もある。
フレイヤの視線の先に家族の未来が見えてくるような感じ。
いずれスカウトが来るんじゃないかと浅はかな僕は思ってしまった。
タイトルにある「ただ、愛を選ぶこと」。
秀逸な邦題。
自分が忘れかけていた大切なものを教えてもらった。