暗くなりがちなテーマを暗いままにせず、明るく流す感じがいい。
認知症のオヤジが家庭内で暴れまわると通常は悲壮な作品になる。
面倒を見る家族は疲弊し崩壊する。
そんなイメージが一般的。
本作が180度違うのはイギリスでの実話をベースにしているからか、
横須賀というちょっとスカした街が舞台からか、
それとも寺尾聰のキャラクターがなせる技か、
すべてがうまい具合に調合されている。
ホロッとしながらも辛くなることもなく明るいままでいられる。
重いテーマの方向を変えると認知症も悪くないと思ってしまう。
松坂桃李演じる息子・雄太役の設定は40代。
年齢差はあるにせよ、僕は息子の視線で捉えることも間違いではない。
しかし、今は完全に寺尾聡演じる父・哲太役に感情が移る。
自分もいずれこうした運命を辿るのかと考えてしまう。
周りに迷惑を掛けるくらいなら、とっととくたばった方がいいと思うのだ。
その考えは変わらないが寺尾聰のような生き方なら悪くない。
迷惑かけても笑って済まさせる。
そして、なにより妻役の松坂慶子の存在。
随分とおばさんになってしまったが、あんな奥さんが隣にいたら生涯幸福。
「ずっとそばにいてあげたい」と言ってもらえるならどれだけ幸せだろうか。
僕は言ってもらえないだろうなあ~(汗)。
夫婦愛、家族愛を感じさせてくれた作品。
息子役の松坂桃李もよかった。
予告編はイマイチと感じたが、難しい設定を上手くこなし、
グッと押し殺した感情もこちらに響いた。
ネットで炎上するシーンはなぜか「空白」を思い出した。
スーパーの店長の彼は不幸だったが、本作で晒される彼も災難。
相も変わらず無責任な群衆によりチャンスを失う。
本作は無責任な群衆が結果的に救ってくれるけど。
SNSは難しいね・・・。
そうそう、本作は空いていると思い足を運んだが驚いたことにほぼ満席。
(すみません。平日だったので)
それも高齢のお客さんばかり。
僕が最年少だと思えるほど。
なにかキャンペーンでも張っていたのか、
世代的共感を生んでいたのか、
理由を知りたいが声を掛けることはできなかった。
こんな作品はハッピーエンドで終わるのが理想的だね。