伊藤沙莉が可愛い。
彼女は背も低いし、ダミ声だし、特別美人というわけでもない。
しかし、本作の彼女は本当に可愛らしい。
それはふと笑顔になる瞬間や困ったり悲しんだりする表情、ヤル気を見せる姿がいい。
派手な演技ではなく自然体に近い。
それが演技の上手さ。
伊藤沙莉が演じるマジム人物そのものが伝わってきた。
本作はジャパニーズドリームといっていい。
原田マハの小説だが実話をベースにしているという。
パッとしない契約社員が社内ベンチャーコンクールに応募し通過。
沖縄のサトウキビでラム酒作りにチャレンジするストーリー。
とてもシンプルで真っすぐな展開。
それがむしろ清々しく映り、観ているうちに応援したくなる。
一挙手一投足に観る側も引っ張られ、ウルっときたり、あ~とため息をついたり。
感情移入ができるのも映画の魅力。
シンプルだからこそ余計な思考を取り除くことができるのだ。
小さな小さな日本映画でナントカ映画祭とは無縁だと思うが、これはこれでOK。
個人的には好きな作品。
こういった作品に勇気づけられる人も多いだろう。
キャリアの授業にも使えるかな。
プランド・ハプンスタンスだしね。
舞台は沖縄・那覇。
豆腐店を営む祖母カマル(高畑順子)と母サヨ子(富田靖子)と暮す。
頻繁に琉球言葉が発せられるので意味が分からないことも多い。
ただ雰囲気で理解できる。
そして登場する南大東島。
この風景もいい。
沖縄の緩やかな感じがたまらない。
11月に沖縄に行く予定があるが楽しみになってきた。
マジムの報告によれば居酒屋の数は沖縄が日本一だという。
確かに那覇周辺を思い浮かべると居酒屋は多い。
沖縄といえばオリオンビールや泡盛だがそれだけではない。
訪問時には沖縄産のラム酒を飲んでみたい。
脇を固める俳優陣もいい。
高畑順子や富田靖子はもちろんだが、バー店主役の染谷将太がいい味を出していた。
彼は「麒麟がくる」の織田信長役でとても気になった俳優。
大河ドラマ「べらぼう」の喜多川歌麿といい役作りがとても上手い。
なぜ「風のマジム」か。
それは映画を観てのお楽しみといったところ。
秋は映画の季節だね。