冒頭のシーン。
昼間のカフェでビールを飲む美しい女性をロングショットで映す。
徐々にカメラが近づいてきて、そこに一人中年女性が現れ話しかける。
会社をリストラされた美しい女性の相談に乗るような場面。
てっきり美しい女性が主役かと思ったが逆だった。
その後、中年女性をカメラが追いかけていく。
なんだか普通のオバサン。
それだけでも不思議な感覚。
どんな展開が待っているのか全く予想できない。
本作は中年女性の妄想と葛藤と復讐を描く。
R15+作品だが、あと少し過激ならR18+作品になっていた。
「えっ、修正なし?」と瞬間的に思ったり・・・。
中年女性ルシアは20年務めた企業が倒産し、タクシー運転手に転身。
倒産した企業ではIT担当というが、あのパソコンの扱いでIT担当とは思えない。
ひょっとしてこれはコメディかと錯覚に陥る。
他にもそんなシーンがあり本国ではコメディ扱いかと思ったが、それにしては恐ろしすぎる展開。
タクシー運転手としてありそうでなさそうなことがいくつも起きる。
危うい事件に巻き込まれそうにもなるが、ルシアはそれも愉しんでいる。
そして事件も起きる。いや、起こす。
黒い鳥(カラス)と結った髪に刺されたかんざし。
ポスターが映画を象徴している。
作品を物語っている。
ネタバレにならないが、鑑賞後、その恐ろしさに気づく。
となると本作はホラー映画?と思ったり。
解説を読むと「異色のサスペンス」と紹介。
確かにその通り。
異色であるのは間違いない。
ルシアを演じるのはマレーナ・アルテリオというスペインの人気女優。
50歳過ぎて堂々と全裸を披露。ハードなシーンも。
本作ではスペイン版アカデミー賞ともいわれるゴヤ賞で主演女優賞を受賞。
スペイン映画は対象作品の許容範囲が広いのか、これがメジャーなのか。
日本でも公開されるくらいだから話題性はあるのだろう。
原題は「Que nadie duerma」。
日本では英訳され「サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー」。
和訳すると「私に何かが起こる」。
和訳タイトルじゃダメなのかな?
配給会社に聞いてみたいが、何らかの意図はあるのだろう。
スペイン映画って縁がないなと思っていたが、最近では「入国審査」「太陽と桃の歌」を観ていた。
どちらも興味深い作品。
本作の感じ方は観る者の感性によってかなり変わる。
そのあたりを考慮してご覧いただきたい。


