先日観た「愚か者の身分」もそうだが、本作の舞台も新宿・歌舞伎町。
公開日は同じ10月24日。
今、歌舞伎町は何かPRしたいことがあるのかな・・・。

とはいえ設定は180度異なる。
方や愚か者、方や腐女子。
僕は常識がないのか、時代遅れなのか本作で初めて「腐女子」という言葉を知った。
男性同士の恋愛を描いた作品、いわゆるボーイズラブを好む女性のことをいう。
僕の周りで使っているのを一度も見たことがない。
そりゃそうか・・・。

腐女子のオタクがキャバクラ嬢と出会い、徐々に変化する日常を描く。
オタク女子由嘉里を演じるのは杉咲花。
いやあ、彼女は天才。
由嘉里にホレることは100%ないが、杉咲花の演技が見事。
多分という表現しかできないが、オタクの言い回しや仕草、表情は完璧。
女優魂を感じた。
それだけで映画を観た甲斐があった。

で、ブログ終了。
としたいが、これでは杉咲花が新宿でキャバ嬢に出会ったことしか分からない。
もう少し映画コラムニストらしく書いておこう。

南琴奈演じるキャバ嬢ライは泥酔した由嘉里を介抱し、そのままルームシェアを始める。
価値観が異なる二人だが、なぜかウマが合いお互いに世話を焼く。
世界観が違う二人のやり取りが絶妙で、観る者は吸い込まれていく。
これも今の若者像なんだ・・・。
何かしらの悩みを抱えながらも流されて日々が過ぎる。
妙に歌舞伎町にマッチするから不思議だ。

この二人を中心にホスト役の板垣李光人や作家役の蒼井優、BARマスター役の渋川清彦が絡む。
そこがなんとも心地いい。
板垣李光人はほどよく軽く、蒼井優はほどよく哲学的で、渋川清彦はほどよく優しい。
あんなヤバさそうな歌舞伎町に人が集まる理由が何となくわかる。

本作を簡単にいってしまえばオタク女子の成長物語。
それ以上でもそれ以下でもない。
ただ圧倒的に言葉足らず。

成長に何が含まれているのかが大事。
明かすとネタバレになるので止めておくが、大したことない事が実は大したこと。
よく分からんね・・・。
金原ひとみの柴田錬三郎賞受賞小説ということで十分か。

エンドロールには菅田将暉の名前が流れた。
しかし、その姿を観ることはなかった。
あとで調べて分かった。
なるほどね。

本作は杉咲花のアイドル映画。
絶対好きにならないアイドルだけど。
今年を象徴する一本にもなるだろう。