6月に台北にお邪魔した時に夜市へ行っておけばよかったと改めて後悔。
本作の舞台はその台北の夜市。
熱気と匂いが立ち込める混沌とした雑然街の中で描かれる家族の姿は、
夜市そのもののエネルギーと哀愁を表しているように感じられた。

映画は田舎町から台北へと戻ってきたシングルマザーと
その2人の娘による3人暮らしの生活を描く。
母親シューフェンは借金を背負い夜市で屋台を営みながら、
なんとか状況を打開しようと奮闘するが、物事は上手くいかない。

そんな母親の背中を静かに見つめているのが、5歳の妹イージン。
タイトルにある「左利きの少女」とは、このイージンのことを指す。
彼女は無邪気でありのままに生きるが、母親の苦しい姿もしっかりと観察している。
そこから彼女が感じ取る行動がいかにも子供らしく、それがとても切ない。
おまけに左利きであることを祖父から「悪魔の手」だと咎められたことで、
自分の左手が世の中の悪い出来事を招いていると思い込んでしまう。

本作の主役はイージンなのだが、
僕は10歳以上離れた姉のイーアンが陰の主役なのではないかと感じた。
年齢からすれば大学生くらいの年頃。
彼女は成績優秀だったにもかかわらず、
家の貧しさゆえに高校を中退せざるを得なかった過去を持つ。

言葉や態度には出さないものの、彼女が背負った心の傷が物語を大きく揺り動かす。
彼女のやりきれない葛藤が思いもよらない行動を起こす。
さすがにネタバレになるのでいえないが・・・。

ここ最近、まっとうに生きられない大人を描く映画を観てきたが、本作も間違いなくそれ。
好んで選んでいるわけではない。
借金に追われる母親も辛いし、夢を諦めた長女も辛い。
何も分からないはずの無邪気な5歳児だって、同じように辛さを抱えている。
それでも子供は一日経てばケロッと忘れて笑うこともある。
その健気さが救いでもあり、切なさでもあるのだ。

これもまた今の台湾に実在する家族像の一つかもしれない。
その生々しい描き方が絶妙で、家族ゆえの愛憎や葛藤がストレートに伝わってきた。
たまたま出会った作品だが、いい機会をもらった。

次回、台北に行く時は必ず夜市には行きたい。