東野圭吾氏の小説は読んだことがない。
しかし東野作品は松本清張の現代版とも言えるのではないか、
そんなことを感じた。
本作を観ている時に、名画「砂の器」が頭にちらついた。
あそこまでの重厚さや悲哀とまでないものの、
過去の秘密と人間の宿命が交錯する展開には、どこか通じるものがあった。

本作はなぜか親近感を覚えた。
それは愛知県が舞台として頻繁に登場するから。
東岡崎は今週にお邪魔したばかりだし、新城も10月に訪問する。
常滑の味わいある街並みも、以前散策したことがあった。
普段目にする愛知県の風景や三河弁が出てくるのは、地元民として純粋に嬉しい。
そんな人も多いだろう。

物語の中心となるのは、容疑者の息子・和真を演じる松村北斗と、
被害者の娘・美令を演じる今田美桜の二人。
本来なら相容れないはずの二人が、それぞれの立場から事件の真相へと迫る。
ラストシーンで見せる二人の姿の受け止め方は賛否が分かれるだろう。
だが、過酷な運命に翻弄された二人が辿り着く境地は、
あんな関係になるのも自然な流れのようにも思える。

改めて岸善幸監督は人の揺れ動く繊細な感情を描くのが上手い監督だと感心。
振り返ると『サンセット・サンライズ』『正欲』『前科者』
『あゝ、荒野』と最近の作品はほぼ観ている。
表現としては稚拙だが、彼の描く世界には不思議と惹きつけられる魅力がある。
特に『あゝ、荒野』の凄まじさは群を抜くが、本作でもその手腕は健在。

実は映画観賞日、ブログには書けないがハードな一日。
映画館内で何度も騒がしい時間を過ごした。
実際、その後に大変な思いをした人も多いだろう。
それでも最後まで集中を切らさずに没頭できたのは、映画が持つ魅力。
その騒動がなければ、もっと映画を楽しめたのかもしれない。

この類の作品としては上映時間は145分と少々長い。
途中ダレる時間帯があると思ったが全くなかった。
その点は評価すべきだし、今田美桜がキュートだった。
ちょっと気が強いが、涙もろい役なんかが合うのかな。
これからの活躍も期待したい。

誰しもが楽しめる作品といえるだろう。