これからも前向きに 名大社会長ブログ

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映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

上映時間は160分。約3時間。
タイトルも長いが上映時間も長い。
しかし、その長さを感じることなく観終えることができた。
途中ダレる時間がなくはないが、感じさせないのはクエンティン・タランティーノの力量。

彼の作品を観るのは随分と久しぶりじゃないか?
「レザボア・ドッグス」も「パルプ・フィクション」ももう忘れてしまった。
「ナチュラル・ボーン・キラーズ」が最後の最後までとんでもない作品だったことは今でも覚えている。
これは監督じゃないけどね。

本作はどうか。まあまあ、とんでもない。
しかし、もっととんでもない作品だと思っていた人も多いだろう。
いつの間にか過激な映画の代表監督のように捉えられているのは心外なことかも・・・。

僕は映画を観る際、基本的に事前情報を入れないようにしている。
映画の予告編や勝手に入ってくる情報程度で、自ら調べることはない。
原作を読んでいない限り、どんなストーリーかも知らない。
本作にしても落ちぶれた元人気俳優とそのスタントマンという程度。

観終わった後に映評を読むと予備知識をつけておいた方がいいという声が多い。
確かにそうかもしれない。
しかし、僕がこのブログでネタバレをさせることはない。
このブログはクエンティン・タランティーノと同様、訳の分からないことをウリとしているから。
それでも観たくなってしまう。
なんてね・・・。

本作に吸い込まれていくとこれは実話ではないかという錯覚に陥る。
実在した人物も数多く登場。
スティーブマックイーンはそっくりだったし、ブルースリーの描き方も面白かった。
あの描き方では身内からクレームがくるのも納得できるし・・・。
何より60年代後半の撮影現場や劇場、レストランの雰囲気がいい。

ある意味、ハリウッドもおおらかな時代。
そのあたりも監督のメッセージなのかと勝手に想像してしまう。

そして、訳ありスタントマン、ブラットピットがいい。
やたら強い。
55歳であの肉体も羨ましい。
太っていくディカプリオもいいけどね。

きっとロマンポランスキーもあんなんだし、女たらしだったんだな。
映画監督は貧乏じゃないんだ・・・。
このあたりのことを監督は描きたかったようだけど、僕にはよく分からない(笑)。

こんな作品を観ると自由の国はいいなとも思ってしまう。

映画「火口のふたり」

本作はR18。すなわち18歳未満は禁止。
成人映画の部類に入る。

そんな映画をこの神聖なブログで紹介していいのか。
会社のイメージダウンにならないか。
その問いに対してはイエス。
問題はない。

本作は芸術作品、社会派ドラマ、ピュアな恋愛映画。
そんな受け取り方もできるだろう。
ピンク映画であれば中年オヤジぐらいしか興味を示さないと思うがそうではない。
ミニシアターでの上映だったが、女性客も多かったし、
いかにも知識層っぽいシニア層も多くほぼ満員だった。
そんな作品なので問題はなく、映画コラムニストとしては押さえておかねばならない。

そして、この作品に登場するのは柄本佑さんと瀧内公美さんの2人だけ。
あとはお父さんの柄本明氏が電話の声で出ているだけ。
映画のほとんどが2人の絡みのシーンであり、移動シーンであり、食事シーンである。

それで約2時間の映画が構成される。
大胆なエロチックなシーンも多いので誤解が生まれるかもしれないが、
一つ一つのセリフや表情からはせつなさややり切れなさを感じることができる。
思わずホロっとしてしまったり。

それでもポスターにあるシーンを期待してしまうから男は悲しい生き物だ。
実際はポスターにあるシーンは存在しない。

そして、本作はなんといっても瀧内公美さん。
その大胆な演技は注目されるが、彼女が醸し出す雰囲気がとてもいい。
一般的な知名度は少ないと思うが、映画では主演作が多い。
前作「彼女の人生は間違いじゃない」もデルヘル嬢という難しい役どころだったが、それもよかった。

飛びっきりの美人ではないが、屈託のない笑顔や不機嫌そうな表情につい惹かれてしまう。
もっとも注目している女優さん。
東日本大震災とか東北が舞台とかそんな共通点も彼女にとっては意味のあることだろう。

2人しか登場しない映画なので何かを語るのは難しい。
限られた劇場でしか上映されていないと思うがとにかく観てもらいたい。

名古屋ではミリオン座。
劇場の外にはこんなコーナーが・・・。

この写真だけでな分かりにくいが、原作なのかセリフなのか、重要な言葉が飾られている。
身体の言い分…。

これも名セリフなるんだろう。

映画「ダンスウィズミー」

僕は矢口監督の鑑賞ターゲットから外れてしまったのか。
そんな年齢になってしまったのか。
昔観た「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」はメチャクチャ面白かった。

素直に感動できた作品だった。
それは僕が30代と若かったせいだろうか。
当時のような感動を覚えられなかったのは僕が歳を取ったせいだろうか。

それは作品を否定しているのではない。
単純に何も考えず楽しめる映画。
スカッとした気分にもなる。
家族や子供と一緒に観るには相応しい作品。
やはりいいオジサンが一人で映画館に行ったのがいけなかったのだろう(笑)。

ストーリーもシンプル。
登場人物も限られ複雑な人間関係は一切ない。
変な緊張感を強いられることもなければ、イヤな気持ちになることもない。
クスっとした笑いをあちらこちらのシーンで呼び込んでくれる。

先日のブログで山崎監督は数少ないエンターテイメント作品を撮れる監督と書いたが、
矢口監督は数少ないコメディ作品を撮れる一人になるのだろう。
それをミュージカルで勝負する勇気も賞賛にあたる。
期待を裏切らないエンディングもいい。

ただ気になるのはこの映画のコアターゲットだ。
若い人を対象にするなら昭和的な音楽ではなくもっと近づけなければならない。
やっぱオジサン、オバサンなのかな?

僕は主役である三吉彩花さんを映画の公開まで全く知らなかった。
ミュージカルの主演だから元宝塚?くらいと思っていたが、そうではない。
その雰囲気からただのアイドルかと思ったが、そうでもない。

これはただならぬ女優さんだ。
ダンスシーンは相当練習を積み上げかなりのレベルになったのだから、相当な努力家だと思う。
その点も好感度大。

しかし、僕が気になったのはその表情。
それも悪意のある表情。
ぱっと見美しく華やかな女性であるのは間違いないが、
今後はとんでもない悪女を演じることもできるだろう。
大きな犯罪を犯したり、男どもを手玉に取る役柄もやれるんじゃないかな。
大いに期待したい。
彼女の魅力は十分に伝わった。

あともう一つ違和感を感じたこと。
舞台はまさに現代。
勤務先も最先端の一流企業。
オフィスもそんな雰囲気。
しかし、描き方がバブルなのだ。
一気にバブルに戻った感じ。
ちょっと違うのでは・・・。

そのあたりも映画を観て確認してもらいたい。
矢口監督は僕と同世代。
特にそんな方には観てもらいたい。

映画「止められるか、俺たちを」

またまた白石監督である。
最近、話題の作品が多いので、監督としてのキャリアはまだ浅いのかと思っていたが、
よく調べてみるとかなり長い。
30年近く映画界に携わっていることになる。

最初は中村幻児監督にお世話になっていた。
中村幻児監督なんて、今の人、知っているのかなあ。
なんだか懐かしい感じ。

その後、本作の題材となる若松孝二監督に師事したというから、その時点でかなりの変わり者。
変わり者ついでに言っておくと、結構、目立ちたがり屋。
ネタバレしても問題ない点でいえば、あんなシーンで三島由紀夫役を演じるなんて、やっぱ変わり者。
どうみても三島らしくないと思うけど・・・笑。

昨年、公開された映画ではあるが、僕が学生時代(今から30年以上前)は
この類の映画を結構観ていたと思う。
僕は70年代の人間模様を描く映画が好きで、大体はこんなふうに殺伐としていた。
80年代後半の学生やそれ以降の若者には信じがたい世界。
そのど真ん中で映画を創っていたなんて、逆に羨ましい。
今よりも自由に表現でき、鬱積していた不満をストレートに映画にぶつけていた。

それが許された時代。
そこで育った人たちが今の映画界をギリギリ牽引しているのも面白い。
きっと荒井晴彦氏もあんな若者だったと思うし、
若松監督もあんな態度であんな言動を繰り返していたのだろう。
井浦新氏は相当若松監督を研究したと窺える。

そして、何より主役の門脇麦さん。
実際はもっと美人な女優だと思うが、相当ブサイクに演じていた。
映画の助監督に美しさは一切必要ないと思わせる演技をこなしていた。
なよなよした感じも、ふてぶてしい感じも、思い悩む感じも豊か表現力だった。
他にこの役をやれる女優を想像できない。

とやっぱり映画のことが分からない評論になってしまったが、
きっとAmazonプライムでの視聴者が増えるはず。
この作品はプライム会員でも500円支払うから、いい売上貢献(笑)。

それにしても、舞台は100%喫煙率。
煙草を吸っていない者がいない。
場所も関係ない。100%吸うのだ。

それも時代だったんだよね。
そう思うと昔の方が寛容な時代。
白石監督はそれを表現したかったのかな。

いや、そんなはずはないな(笑)。

映画「アルキメデスの大戦」

映画はいきなりクライマックスを迎える。
冒頭のシーンはまさにクライマックス。
山崎監督らしいVFX技術を駆使した映像。

この後、どれだけの人が犠牲になり死を迎えるのかとその悲惨さに体を持っていかれるが、
冒頭クライマックス以降、死者は現れない。
穿った見方をすればこれも作り手のメッセージと受け取ることはできる。

子供向けやアニメ、ヒーロー、アクションものが多い夏の公開作品。
僕自身はしんみりと映画を愉しみたいが、夏休み期間はそんな希望は叶わない。
ド派手で弾けなければならない。
その点では本作も夏休み向けといえるし、
数少ないエンターテイメント映画を撮れる山崎監督だからこそ、この時期に相応しい。

最初は観るつもりはなかった。
しかし、いろんな方の評価を聞いて、観ることにした。
どんな時代も人は素直でなければならない。

いいことはいい。
悪いことは悪いと正直に言えなければならない。

そこには権力とか地位とか建前とか関係ない。
素直な気持ちでどんな場にも臨むことが必要。
僕はその気持ちに従い本作を鑑賞。
観てよかったと素直に思う。

果たして本作に登場する人たちはどこまで素直であっただろうか。
時には素直さが仇になるケースもあるだろう。
自分の立場を危うくすることもあるだろう。
そうだとしてもその姿勢があれば多くの問題は解決の方向に向かうのではないだろうか・・・。
映画と関係なさそうでありそうなことを語っていますね(笑)。

エンドロールには「史実から着想を得たフィクション」と表示される。
本作を観て事実と捉える人もいるかとは思うが、現実的にはあり得ない話。
しかし、事実と思わせてしまうところが演出でありストーリーの巧みさ。
ラスト近い櫂少佐と平山中将のセリフの重さに惹き込まれた人もいるはず。

やはりネタバレさせずに映画を評論することはかなり難しい(笑)。

本作では話題の俳優が多数出演しているが僕が取り上げるのは2人。
海軍少将役の橋爪功氏と海軍少尉役の柄本佑氏。
橋爪氏は最近の役どころは面白い。
ボンクラな上役をさもありなん的に演じている。
2月に観た「七つの会議」もサイテーな社長を演じていたし、この海軍少佐もサイテー。
それを当り前のように演じるのはキャリアの違いか。
腹が立つ役だが流石だと感じた。

柄本氏は実に上手く映画のつなぎ役を演じている。
脇ではあるが彼の存在が映画をより楽しませてくれる。
間もなく公開される「火口のふたり」も是非観たい。
この作品には僕が個人的イチオシの瀧内公美さんも主演。
彼女の表情に惹かれてしまう。
相当激しいシーンもあるので、今からドキドキする。
前作の「彼女の人生は間違いじゃない」もよかった。

いかん、本作とは全然違う方向に向かってしまったが、
この類の作品が堂々と公開され多くの方が観ることは素晴らしいこと。
山崎監督には社会派エンターテイメント監督としてこれからもいい作品を撮ってもらいたい。

映画「よこがお」

3年前に「淵に立つ」を観て、何とも言い切れないやるせなさと歯がゆさを感じた。
映画としては面白かったが、気分は重かった。
本作の予告編を観た限り、監督も主演女優も同じ。
重い雰囲気も同じ。

だったら、観なきゃよさそうなもんだが、怖いもの見たさなのか、
そもそも人間の絶望や裏切りに興味があるのか、足は映画館に向かった。
明るい性格で笑顔に定評のある映画コラムニストだが、本当は闇を抱えた人間なんだろうか・・・。
そのあたりは自分でもよく分からない(笑)。

「淵に立つ」の筒井真理子さんは主演ではなかったが、その存在感は主演以上のもの。
それはなんだ!というツッコミはさておき、それだけ映画を引っ張っていた。
本作は完全なる主演で、かつ最初から最後まで映画を支配していた。

優しい女性、悲しい女性、恐ろしい女性、妖艶な女性、壊れていく女性、
すべてを完璧にこなしていた。
男は女には勝てない。
女性は怖い。
逆らわずに生きていこう。

これが僕の単純な感想。
女性の神秘性を含め、改めて知ることとなった。
世の中に堕ちていく男性が多いのは仕方のないこと。
気をつけて生きたいと思います!

そんな話はどうでもいい。
映画である。
これをネタバレさせずに語るのは難しい。
これまでの文章でイメージしてもらえればと思うが、シアワセな作品でないことは確か。

明日への希望が見えなくはないが、それが大きなマイナスがゼロに近づいただけのこと。
マイナスはマイナス。
どんな穏やかな人でも、あるキッカケによって大きく性格も変わってしまうのか。
先日ブログに書いた「凪待ち」はろくでなしのろくでもない話なので納得しやすいが、
清らかで健全な人があっという間に変化していく恐ろしさを受け入れるには時間が掛かる。
その受け入れる時間の長さを緩和させるのが、髪型を象徴とした対比となるのだろう。

ここだけ読んでも、なんのこっちゃですね(笑)。
それでいいのです・・・。

本作には人間のサガを描きながらも痛烈な社会批判もあるだろう。
映画を観れば理解してもらえるが、無責任な存在が一人の人間を破壊していく。
それは時代の進化と共に加速しているのかもしれない。
破壊じゃなくとも炎上も同様。
大船渡高校の一件もそんな感じがしてならない。
自分が責任取れないことや当事者の立場を理解できないことについては行動を気をつけるべき。
人を陥れるなんて簡単なのだ。

映画とは関係ないが、そんなことを思ってしまった。
AIは感情を持たない。
人が優位性も持たせるためには感情を最大限に生かすことが必要。
しかし、一瞬の感情的な行為が取り返しのつかない結果になることも。
見方を変えれば、それも人の優位性。

本作はそんなことも教えてくれる。
正しい人であるためにもこの作品を観るべきなんだろう。

ニュータイプの時代

大学の授業の時にニシダが、「テツさん、これいいですよ。」と薦めてきた。
山口周氏は昨年に「劣化するオッサン社会の処方箋」
「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか」を読んで感銘を受けた作家。
これは読まねばならないと早速購入。

ハンマーで頭を殴られたような感じ。
いきなりこんなことが書かれている。

20世紀の後半から21世紀の初頭にかけて高く評価されてきた、
従順で、論理的で、勤勉で、責任感の強い、いわゆる「優秀な人材」は、
今後「オールドタイプ」として急速に価値を失っていくことになるでしょう。
自由で、直感的で、わがままで、好奇心の強い人材=「ニュータイプ」が、
今後は大きな価値を生み出し、評価され、本質的な意味での「豊かな人生」を送ることになるでしょう。

人によっては僕を「ニュータイプ」と捉える人もいるかもしれないが、
僕は明らかに「オールドタイプ」。
優秀な人材とは言い難いが、それに近い仕事人生を送ってきた。
これから価値を失っていくという事か・・・。

ヤバい。
本書を読み進めていきながら、その気持ちがどんどん強くなっていく。
それは単に脅されているのではなく、常日頃、僕が感じる点でもあり納得させられる点も多い。
授業を行った学生にもエラそうにそんなふうに語っていたこともあった。
それを語っているのが、オールドタイプとは・・・。

「VUCAの時代」ももう特別な用語ではなく、当たり前の言葉。
えっ、それって何?。
というオジサン、オニイチャンもいるとは思うが、全てはそこを意識していかねばならない。
ブーカ、ブーカと頭で唱えながら歩かなきゃいけないってことだ。

僕らは常に何が役に立つかを考えてきた。
今まではそれでよかったかもしれない。
しかし、それではもう通用しない時代になってくる。
通用しないわけではないが、価値を見出せなくなっていく。

「役に立つ」ではなく「意味がある」でなければならないし、
「未来を予測する」ではなく「未来を構想する」でなければならない。
学ぶべきことも大きく変化していくということ。

少し前に読んだ「右脳思考」にも近いかもしれない。
右脳→左脳→右脳が重要。
論理と直感を状況によって使い分けしなければならない。

これは自分自身のことだけではない。
会社も同様。
とりあえず試し、ダメならまた試す。
それをやり続ける。
アップデートを繰り返していくわけだ。

本書を読んで、ヤバいと思うのなら、まだ間に合うかもしれない。
「ニュータイプ」の時代に対峙できるよう新しい鎧をまとっていこう。

映画「凪待ち」

白石監督は現在最も注目している監督。
ここ数年は精力的な活動で年2~3本の作品を撮っている。
この時代にこれだけの作品を創れるのは売れっ子の証拠。

それに釣られて最近の作品はほぼ観ているといっていい。
いや、大袈裟すぎた。
春に公開された「麻雀放浪記2020」はあまり評判が良くなかったので観ていないし、
昨年の「止められるか、俺たちを」はタイミングを逃した。
「止められるか~」は近々、Amazonプライムあたりで観ることにしたい。

作風も特徴的。
明らかに病んだ作品が多い。
「孤狼の血」「日本で一番悪い奴ら」も病んでいた。
権力を敵に回す作品も多いが、監督にとってはあまり関係ないようだ(笑)。

そして本作。一言でいえば、
ろくでなしがろくでもない生活を繰り広げ、世間に迷惑を掛けた映画

こんな一言では観るに値しない作品と思われるかもしれない。
公開ギリギリで観たし、今日時点では既に公開終了が多いので、仮に観たくても観れない(笑)。
まあ、いいんじゃないの・・・。

ただ僕はなぜか感動した。
映画に吸い寄せられ集中力を切らすことなく見終えてしまった。
寒々しい石巻の風景とそこに絡んでくる登場人物が上手くシンクロし、
ただならぬ雰囲気を醸し出していた。
ずっと息苦しさがつきまとっていた。
しかし、そこが本作の最大の魅力ではないか。

世の中にこんなろくでないしが本当にいるのかと思うが、間違いなく存在しているだろう。
それは僕の周りにいないだけで、あちらこちらにいるのだろう。
最近起こる悲劇な事件の周辺にそんな臭いもするんじゃないだろうか。
とにかくろくでなしなのだ。

まるで他人事だが、僕もどこかで間違えればとことん堕ちていくかもしれない。
主役となるシンゴちゃんもこれまでのイメージを大きく打ち破る作品になったのではないか。
大河ドラマ「いだてん」では珍しくまともな役のリリーフランキーもやっぱこんな感じなんだ・・・。

僕が知る限り白石作品は救いようのない終わり方の映画ばかり。
絶望的な気持ちになることが多い。
そんな点では本作は期待を裏切る。

未来があるのだ。
本当に「再生」できるかどうかは分からない。
ただ信じてみようと思えるのが、この作品の救いなのかもしれない。

映画「さらば愛しきアウトロー」

これがロバート・レッドフォードの引退作品だという。
僕より30歳年上で間もなく83歳。
これまで現役でバリバリ演じていたこと自体、素晴らしいこと。

ポール・ニューマンとのコンビの「明日に向かって撃て」とか「スティング」が有名だが、
僕が個人的に好きなのは「ナチュラル」。
いつ観たのかも覚えていないが、グランドを回る姿が印象的だった。
確か沢木耕太郎が長嶋一茂のことを書いた「彼らの流儀」もこの作品だったはず。

単なる二枚目でなく好感度も高い俳優だと思う。
監督作品の「リバーランズ・スルー・イット」も「クイズショウ」も好きな映画。
ここ最近の出演作を観ていないが、引退作品となれば観なければならない。
特別なファンじゃないけどね(笑)。

原題は「The Old Man & the Gun」。
そのまんまでいいと思うが、邦題はロバートレッドフォードへの愛情の証かな。
やはり好感度は高い。

僕の映画コラムニストとしての特徴は作品のことはさっぱり分からないが、
それでも観たくなるという不思議なもの。
多分・・・(笑)。

今回もそんな感じで伝えたいがそれは難しい。
「老いぼれ銀行強盗のシアワセな話」
と一行にまとめてしまえばそれまで。
それで十分だと思うが、そんなわけにはいかない。

ではどう伝えればいいのか。
忠実に描く1980年代初頭のアメリカと人間の葛藤、年齢は関係ない純粋な愛、
そして、ロバート・レッドフォードの生き様だろう。
僕はそんなふうに感じた。
はっきりいえば、愚か者ではなくろくでなしの話。
愚か者は少し違うからね(笑)。

そのろくでなしが幸せ過ぎるから映画はハッピーエンドで終わる。
しかし、それは偏った見方。
場合によっては救いようにない酷い終わり方ともいえる。
だが、ほとんどの人はこれでよかったと思うんじゃないかな。

ヒロインというか老いぼれ銀行強盗の相手役がシシー・スペイセク。
映画を観ながら「誰だっけ?」とずっと思いだそうとしていたが、最後まで出てこなかった。
改めて調べてみると、そう、彼女。
80年代から90年代にかけて結構観たように思う。
決して美人ではないが独特の雰囲気があり、本作の2人の関係性もとてもよかった。
こんな生き方をして、死ねるのがいいんだろうね。

映画の中に出てくる「楽をして生きるのではなく、楽しく生きる」。
そんなふうに人生を終えれればいい。
老いぼれになった時にでも自分にこだわって生きられたらどれだけ幸せだろうか。

そんなことを思わせてくれる作品だった。

映画「新聞記者」

なんとこの映画は東京で鑑賞。
名古屋でも上映されているが全然予定が合わず、わざわざ東京まで出てきて観ることに・・・。
それだけどうしても観たかった作品。
わざわざというのは冗談だが、東京出張の際、夜の時間帯でタイミングが合った。

初めて有楽町の劇場で観たのだが、館内は満員。
話題性の高さをリアルに感じた。
果たして名古屋でも同じだろうか・・・。

この作品を語るのは、ある意味難しい。
称賛すれば国から睨まれるだろうし、批判すれば勇気がないといわれるだろう。
会社を守る立場としてはその評価は難しいが(笑)、この作品に関わった東京新聞は褒めるべき。
すなわち中日新聞を褒めるべきだろう。

取材者の立場が否定的に捉えられる可能性をいい具合でぶっ飛ばしている。
また、映像空間は明らかにおかしい。
官僚の職場があんなに暗いなんてさすがにない。
ブラックな職場ではあるだろうが、映画で描かれる職場は異常としか言いようがない。
同様に暗いが、まだ新聞社の職場の方が健全。
あのコントラストが作品にいい緊張感を与えていたのは間違いない。

主役の二人がクローズアップされる姿は観る者を揺さぶる。
その演技に引っ張られる点は多い。
それにしても松坂桃李くんはいい役者になったと思う。
昨年の「虎狼の血」も良かったが、演技が深くなっているように感じる。

新聞記者役のシム・ウンギョンさんはこの映画で初めて知った。
なぜ、韓国人女優?
最初は違和感があったが、その背景を知るとある程度の納得感は出る。
批評を読むとこの危険な記者役を引き受ける事務所がなかったというが本当だろうか。
確かに国家の闇に切り込んだ作品。
かなり勇気のいる制作サイド。

しかし、アメリカではこの類の作品がバンバンと作られ、超一流の俳優が演じているのも事実。
やってやれないことはない。
と思っても、そう簡単ではないのかな・・・。

この映画に答えはない。
「問い」で終わる。
と僕は考える。
それでいいのだと思う。
観る側に答えを求めているのだ。

こんな作品が満員なのが嬉しかった。
今年に入って日本映画を観たのは5本目。
かなりショボい状態だが、観るべき映画に出会えたのは良かった。