昨年、見逃した作品をNetflixで鑑賞。
今月、発売された2022年キネマ旬報ベストテンでは6位、
読者選出では5位を獲得。
評論家も愛好家も好んだ1本となる。
それに感化されたわけじゃないが、評価が正しいと思う面白さ。

ハケンアニメというタイトルからして原作を知らない人は派遣社員が絡む映画と思うだろう。
主演は吉岡里帆なので、余計にそう感じる人が多いはず。
彼女がアニメの監督とは事前情報を入手しなきゃ誰も思わない。

ここでいうハケンは覇権を獲ることを指す。
同時刻に放送される2本のアニメ番組のどちらが高い視聴率を獲得できるのか。
その覇権争いのこと。

映画でこんな設定は新鮮。
それにも増して新しいと感じたのが、覇権争いの比較の仕方。
SNSの拡散は今の時代を反映し、分かりやすく伝える。
単にスマホで情報をアップするだけでなく、その影響度を映像に絡ませながら臨場感を醸し出す。
こんな手法も今までの映画にはなかった。

ただ、どうやら覇権アニメという言葉はその世界では一般的のよう。
話題の「すずめの戸締り」も「かがみの孤城」も観ない僕には未知の世界。
アニメの制作現場も未知の世界。

あれが正しい現場の描き方だろうか。
あんなふうに作品が制作されるシーンは勉強になった。
一人ひとりの役割がひとつの作品のクオリティを上げる。

この現場感も本作の魅力。
覇権争いをする2本のアニメを全編通して観たいと思う人は意外と多かったり。
もしかしてアニメファンは全員そう?
描かれるタッチもファンの気持ちを揺り動かすのかな?

多くのスタッフがしがらみを抱えながら絡み合い、
テクノロジーと感性を駆使して作り上げるアニメはやはり日本の誇るべき文化。
日本映画が世界で勝てる数少ない分野。
「THE FIRST SLAM DUNK」は映画で完全に負けている韓国でも大ヒットだし・・・。

アニメの魅力を実写で伝えるなんて何とも憎い。
僕のように普段アニメを観ない輩がこれをキッカケに吸い込まれていく可能性もあるから。
姑息ではなく計算し尽くされた作品。
そんなことを思ったり・・・。

そして、エンドロールが終わってからの誰もが喜びそうなカット。
あれはチャップリンなのかな。