原作となったフランス映画「パリタクシー」は観ていない。
却ってその方がよかった。
観ていたら純粋に本作を楽しめなかったかもしれない。
比較しても仕方ないし。
山田洋次監督は現在94歳。
数年前は監督として衰えたと思っていたが、
(失礼ですね・・・)
いやいやそんなことはない。
ヒューマンドラマを描く力はまだまだ一流。
そんなことを感じた作品だった。
倍賞千恵子が主演で柴又帝釈天からスタートするリスペクトが作品を後押しする。
20代だったさくらは80代のすみれになった。
華やかさは異なるが美しいには変わらない。
すみれの方が可憐ともいえるし。
何度も予告編を観て相方がキムタクなので止めようかと思ったが、
(決してキムタクが嫌いなわけじゃないです・・・)
止めなくてよかった。
当初、抱いていたタクシー運転手浩二役の違和感は徐々に薄れた。
すみれの言動が浩二を変化させる。
すみれの物語であると同時に浩二の物語でもある。
なぜタクシー運転手になったかまで深掘ると明確な人間性が理解でき、
よりスムーズにラストシーンへ繋がったように思う。
簡単に言えば東京観光をしながら浩二とすみれの一日の交流を描いただけの物語。
簡単すぎるな(笑)。
映し出される東京の風景とは別の物語が涙を誘う。
すみれはなぜ自分の過去をすべてさらけ出したのか。
背景的に浩二じゃなくてもさらけ出した可能性は高い。
しかし、感動的なドラマになったのは浩二だったからこそ。
オーソドックスで想像を裏切らない展開はチープな作品になりやすい。
そうならなかったのは監督の力量であり、二人の演技。
映画館内はすすり泣く声が響いていた。
山田洋次監督はいつまで映画を撮るのか。
近年は2年に一本のペース。
となると次回作は96歳。
意外と容易く撮ってしまうのかも。
そんなことを思ったり。
エンドロールをみると意外な名前が並ぶ。
明石家さんまは全く分からなかった。
物語に支障がないのでこれだけネタバレさせてほしい。
あ~、電話の主ね・・・。
松竹らしい年末に向けた泣いて笑っての作品。
誰もが楽しめる一本といえるだろう。


