これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「ラストレター」

もうこの年齢になると恋愛映画は響かないと思っていた。
10代、20代の頃はトキメイテいた映画も今やすっかり・・・。
だから、本作に対しては僕自身の自信がなかった。
この映画を感じ取ることができるかどうかと・・・。

それは杞憂に終わった。
上映中の2時間、僕は喜んだり悲しんだり涙したりと気持ちが揺り動かされていた。
そして、気づいた。
僕はまだ恋愛映画を観る感性を持ち合わせていると。

しかし、その感性はすべてに通用するわけもなく、
ごく限られた作品にあることも同時に気づいた。
この先も滅多に出会うことはないと・・・。
そう考えると本作を観れたことは幸運。
松たか子も広瀬すずも話題の森七菜もトキメキの存在だった。

ネタバレしない程度でいえば、手紙を通じて過去と現在がシンクロし、
その対象となる人物もシンクロし、巧みにストーリーは展開される。
観る者はドキドキしながらその過去と現在を追っかける。

広瀬すずと森七菜の可愛らしさと松たか子の安心感にも心が躍るから不思議だ。
この作品を機に森七菜はブレイクするだろう。
それは24年前に公開された「Love Letter」で輝きを放った酒井美紀のように。
映画はかなり忘れたが、彼女の印象は今でも残っていて、個人的には中山美穂よりも強かった。
そこにもトキメイた。

「Love Letter」で主演した中山美穂やトヨエツの本作でのやつれ具合もよかった。
狙っていたとしか思えないけど(笑)。

しばらく余韻を感じながらも本作を振り返ってみるとツッコミどころは多い。
福山は女々し過ぎるとか、美咲(広瀬すずの母親)はなぜダメ男に惹かれたのか等。
それを上回る魅力があるからいいんだけど・・・。

その中で僕は娘役である広瀬すずの発した言葉に涙した。
それはドラマ「ハゲタカ第5話」のリー会長の言葉と同じ。
感動した。
この両方を分かる方は相当な方ですね(笑)。
人には捨てられない何かがあるのだ。

そして、最後に思ったこと。
監督岩井俊二も福山雅治もズルい。
絶対、美味しいところを持っていく。
世の女性はこの作家と役者にフラフラにさせられる。

なんということか・・・。
岩井俊二なんてトヨエツと同じで大して仕事していないじゃないか。

すいません。
言い過ぎでした。
モテない男のやっかみですね。

中年男子が一人で鑑賞するのはいかがかと思うが、
たまにはこの類の映画を観て若かりし頃を思い出すのもいい。
いつまでも大切にしていたい感性ですね。

映画「リチャード・ジュエル」

この90歳のジジイは今更、世の中に何を問いたいのか。
その飽くなき活力や精力はどこから生まれているのか。
最近の作品を観るとそんなことを感じてしまう。

特にここ数年はメッセージ性が強い。
実話を基に描く作品が多いのも最近の傾向。
意外と気づかないと思うけど。

昨年、僕がベストワンに選んだ「運び屋」もそうだし、
「15時17分、パリ行き」「ハドソン川の奇跡」もそう。
真実以上に真実を描くことのできるレアな監督だ。

現在は俳優が監督業も行い、成功した例だが、
30年後にはチャールズ・チャップリンと肩を並べる存在になっているだろう。
伝説的人物になっているのではないか。
違いは笑いに変えるか、真実を伝えるか。

その違い。
いずれアメリカ映画を代表する監督になるのか、その真逆。
反体制の作品も見受けられるしね(笑)。

以上、映評ブログでした。

といいたいが、そんなわけにはいかない。
ここまでのブログでは一切本作には触れていない。
どれだけ余計な文字数を稼ぐというのか・・・。

映画の背景は1996年に開催されたアトランタオリンピック。
僕は当たり前のように名大社で働いていて、
本作に登場するマイケル・ジョンソンは記憶にあるが、この事件は記憶にない。
日本ではそれほど話題にならなかったのだろうか。

そこをえぐり出すクリントイーストウッド監督の力はさすが。
大きな事件ではないが、見過ごしてはならない。
事件を救い上げるのも監督の特徴かも・・・。

そこに人間の真の姿が描かれている。
それは主役のリチャードジュエルであり、母親のボビであり、
弁護士のワトソンであり、FBIのトムである。
その真の姿が泣かせるし、人として忘れてはならない姿。

いや、違う、そう、
忘れるべき人の姿も描かれている。
それが大概は最も権力を持つ人間なので、始末にを得ない。

それはそれとして、とにかく響く。
監督はこれまで観る者を泣かせる行為はもたらさなかったが、
本作はところどころそれを見せる。
かなりズルいといえよう。

ただ僕らはそのズルさを受け入れるべきだし、自分の姿を考えるべき。
それは主役のリチャード・ジュエルのように・・・。

またもや素晴らしい映画を見せてもらった。

社長って何だ!

丹羽さんの著書はなぜか手に取ってしまう。
これまでの作品に感銘を受けることも多かった。

本書には”部・課長必読!”と書かれている。
一応、これでも社長を10年任されてきたので、本書のターゲットではないはず。

だが、改めて社長として求められることを痛感した。
この類の書籍は定期的に頭の中に叩きこまないといけない。
忙殺される日々を過ごすうちに頭の中からすり抜けてしまうことも多いだろうから・・・。

著者である丹羽氏は社長、会長の経験は12年。
社長業としては僕の方が既に期間は長い。
しかし、期間の長さでその価値が決まるものでなければ、実績がある者が長いとも限らない。
あまりに実績がなければ短命に終わるだろうけど・・・。

本書で表現される社長業はどちらかといえば大手向き。
オーナー企業や中小企業の経営者をイメージして書かれた内容ではない。
その点では読んでいて若干の違和感を感じるが、それは当然のこと。

僕が中小企業のことしか語れないのと同様に大企業の社長経験者は大企業のことしか語れない。
丹羽氏の目線はやはりそこにある。

だが、企業規模問わず求められる資質は大きくは変わらない。
このあたりの表現はどの社長も共感するところだろう。

「社長が孤独でなければ、その会社はうまく回っていかない。」というのが私の信念です。
私自身の体験として12年もの間、社長と会長を務め、
そこに共通して求められた資質は「孤独に負けない」ことだったと思います。

大切なのは情熱と気力とともに明るさと精神力の強さ。
そして、リーダーとして高い志を持続できるだけの倫理観を持っているかどうかです。

丹羽氏に限らず名経営者と呼ばれる方の言われることはほとんど変わらない。
そこは改めて肝に銘じないといけない。
特に最近、社長という役割について僕自身が考えることが多かったので、復習的な学びにもなった。
社長の持つ権力についても・・・。

丹羽氏は59歳で社長に就任。
当時では最年少での就任だったという。
その年で最年少か・・・。

僕はそれくらいには引退しようと思っているというのに。
見方を変えれば、今の僕の年齢はまだまだ若手。
そこをもっと意識して毎日を過ごさねばならない。

勉強になりました。

映画「パラサイト 半地下の家族」

今、最も話題の映画。
昨年のカンヌ国際映画祭「パルムドール」受賞作だから当然ともいえるが、
同様の受賞作「万引き家族」よりもヒットしているんじゃないだろうか。

休日にちょっとした空き時間があったので、
ミッドランドスクエアシネマでネット予約をしようとしたらほぼ満席。
別日に会社近くのミリオン座で鑑賞。

ミリオン座にあれだけ多くの人を見たのは初めて。
平日のあんな時間に・・・。

テーマとしては「万引き家族」と近しいが描き方は全く異なる。
むしろこちらの方がショックが大きい。
来年はどんな家族がこのカンヌ映画祭で暴れるのだろうか(笑)。

まずいえること。
これは絶対余計な知識を入れずに観た方がいい。
ストーリーを全く知らない状態で観た方が断然いい。

僕もあえて余分な予備知識は入れなかった。
4人家族が全員失業中で寄生することと半地下の住まいに住んでいる程度のこと。
タイトルのままじゃないか・・・。

「万引き家族」と違い映画はテンポよく明るい。
コメディーのようだ。
むしろジャンルとしてはコメディーかも・・・。

それが一気にホラー映画のような展開になるから恐ろしい。
そんな点でいえば韓国は意外と柔軟な国なのかもしれない。
あのピリピリとした緊張感は堪らない。
中には逃げ出したくなるような観客もいるんじゃないか・・・。

僕の隣には老夫婦が座っていたが、驚いたことに旦那さんはイビキをかいていた。
こんな凄い映画でイビキをかくなんて日本のお年寄りは根性が座っている。
そのあたりに両国の大きな違いがあるのかな。
変な意味はありません(笑)。

僕がこれまで観た韓国映画ってそれほどない。
もっと観たいのだが機会が少ない。

記憶になる作品といえば「シュリ」「JSA」「息もできない」くらい。
どれも素晴らしい作品だが、やたら重い。
「シュリ」はちょっと違うが、韓国の暗部を描いている。
本作も闇を感じるが、そこには今までにはない青い空、美しい緑が存在する。

大富豪のお母さん役のチョ・ヨジョンさんも美しく明るい。
ちょっと母親としては若すぎないかと思ったのは僕だけではないだろう。
日本の女優さんの誰かに似ている。
若い頃の黒木瞳さんに深津絵里さんを掛け合わせた感じかな・・・。
そんな印象。
個人的には韓国の女優さんは好きです。

それはともかく今年に入っていきなりガツーンと殴られたような映画。
観ておくべき1本。
恐るべしポン・ジュノ監督。

運気を磨く

多くの知人が勧めていたので手に取った1冊。
多分、勧めていなくても読んだとは思うけど(笑)。

著者の作品は何冊か読んでいる。
このブログで検索をかけてみると「人間を磨く」がヒットした。
結構、いいことを書いているじゃないか。
書いたことすらあまり覚えていないけど(笑)。

このような立場で仕事をしているとどうしても人の動きを中心に見てしまう。
それが重要なことであり、どう接していくかがで僕の真価が問われる。
プラス面ばかりが目につけばいいが、実際は悲しいかなそうじゃない。

どうしてもマイナス面を見てしまい、それに対しての発言もマイナス要素が強くなる。
つい感情的な思いになってしまうこともある。
でも感情的な言葉は極力出さないように気をつけていますよ。
はい。

本書を読むとそういった姿勢がいかに運気を下げ、
自分にとっても周りにとってもマイナスであることがよく理解できる。
元々、ポジティブであまり後ろ向きなことは考えないタイプだが、
上手くいかないことがあったりするとつい陥ったりしてしまう。

必要以上に周りは観察しているので、気をつけなければならない。
無理やりポジティブ思考になるのも逆効果だし・・・。
無理やりではなく自然に日常ポジティブな言葉を発するべき。

確かに名大社にもポジティブバカと呼ばれるマネージャーが存在するが、
彼が喋れば自然とそんな雰囲気にあるから不思議だ。
それはやはりその空気を流す力を持っていることであろう。
そう思えば、ポジティブバカから学ばせてもらう点は多いということか。
使い方には注意が必要だけど・・・。

本書では独り、静かに自然と向き合う必要性を説いている。
確かにそれは僕が感じるところ。
ランニングするのは体を鍛える面が大きいが、
朝日を浴びながら自然豊かな公園を走っていると気持ちがスッキリとし、
心が洗われるような気持ちにもなる。
それと同じことだろう。

僕のこれまでの人生を振り返れば、かなり運がいい人生を送っていると思うが、
見方を変えれば自分が導いてきたともいえる。
知らず知らずのうちに運気を磨いてきたのかな(笑)。

今後は意識的に運気を磨く努力をし、更に幸運をもたらすようにしたい。
それも自分だけではなく周りに運んでこれたら尚いい。
理想だよね。
発する言葉も自然と気をつけるだろうし・・・。

2019年映画ベストテン

最近、映画コラムニストの仕事も増えてきた。
(妄想かもしれないが・・・)
今年はさらにその仕事を増やしたいと思う。
そのためにはコラムニストだけでなく、評論家としての実績も上げなければならない。

この時期になると求められるのが前年のベストテン。
間もなく発表される「キネマ旬報」のベストテンも多くの評論家が評価した点数の総合順位。
いずれ僕もキネマ旬報から評価とコメントを求められることになるだろう。

そのためにはいつでも答えられる準備をしておかねばならない。
本来なら日本映画、外国映画ともベストテンを打ち出すべきだが、
映画コラムニストとして専業ではないのでそこまでは難しい。

2019年に観た作品は日本映画16本、外国映画15本、合計31本。
選りすぐりの31本だが、ここは邦洋合わせてのベストテンにしたい。
それでもこれを選ぶには相当難しい。

最初は1位から5位、6位から10位とざっくりした順位にしようかと思ったが、
ここは忖度なしにはっきりさせた方がいい。
そんなわけで僕の2019年のベストテンはこちら。

1.運び屋
2.グリーンブック
3.ホテルムンバイ
4.ジョーカー
5.新聞記者
6.プライベート・ウォー
7.家族を想うとき
8.バイス
9.凪待ち
10.記憶にございません

上記以外にも、「家に帰ろう」「マチネの終わりに」「ひとよ」「カツベン!」など
好きな作品はあったが、外さざるを得なかった。
できれば日本映画を半分選びたかったが、結果としては洋高邦低。
これも仕方ないだろう。
優れた外国映画が多かった。
選んだ作品は全てブログで評論しているので、気になる方はブログ内検索をしてね(笑)。

いえるのはクリントイーストウッド監督が年齢を重ねるごとに素晴らしい作品を生み出すことと、
(間もなく公開される「リチャード・ジュエル」も楽しみ・・・)
白石和彌監督の精力的な活動。
日本映画界では圧倒的な存在感を生み出している。

そうはいってもたがだか31本の世界。
少なくとも50本の映画を観ないとベストテンを語るべきではない。
これを仕事と認めてもらい、昼間から映画館に通うことを許してもらいたい。

そうすればもっといいベストテンをつけることができるけどね…笑。

小説「トヨトミの逆襲」

前作「トヨトミの野望」の書評ブログを書いた時に結構な反響があった。
かなりの真実があると・・・。
レビューなどを読んでも半信半疑だが、知り合いにそんなことを言われるとグッと説得力が増す。

やはり書かれている内容には事実が多いようだ。
書店では買い占めが起きて全ての「トヨトミの野望」が消えたという噂も・・・。
かなりの話題になっていたんですね。

その第2段が本書。
前作は文庫が発売されてから購入したが(kindleだけどね)、
今回は単行本発売早々に購入(kindleだけどね)。
思う壺読者であることがよく分かる(笑)。

本作で描かれるのはまさに現在と近い将来。
現在はほんと最近の話も・・・。
ソフトバンクの孫正義さんを思わせる人物も登場するし。
誰が読んでもここを間違うことはない。
そんな背景があったなんて、この小説で知ることができたのは経済のお勉強。

そういえば、あれだけ話題になった燃料電池自動車「MIRAI」を
見る機会が減ったのも本書を読んで気がついた。
なるほど、そんなわけね・・・。
これも自動車業界のお勉強。
最近の業界が置かれた状況も理解できるので、それだけでも読む価値はある。

そして、ここで描かれる近い将来。
内容は一気に池井戸潤の世界へ。
主人公の豊臣統一は急角度で池井戸作品に登場する熱血漢溢れる社長に変身する。
捉え方は様々だと思うが、僕はそんなことを感じた。
熱いドラマが繰り広げられる。

過去は実話を基に描かれるフィクションだが、未来は完全なフィクション。
著者の想像もしくは予測でしかない。
その社長像はかなりカッコよかったりする。

穿った見方だが、叩かれた著者がここでは褒められる存在になったような・・・。
穿った見方です(笑)。

そして、世の中を変えるのは中小企業の存在。
感動させてくれる。
これも池井戸作品の特徴。
最後まで読むと空気も変わってくる。

本作のシリーズはこれで終了だろうか。
「トヨトミの帰還」とか「トヨトミの覚醒」とか発売されたりして・・・。
な~んてね。

STAR WARSを意識しすぎだろ(笑)。

映画「男はつらいよ お帰り 寅さん」

かつて名古屋駅前に松竹座という立派な映画館があった。
僕は大学時代、名駅の他の映画館でアルバイトをしていたこともあり、
この映画館にはちょくちょくお邪魔していた。

大半はタダ券をもらって観ていたが、これはという作品は前売り券を購入し観ていた。
名古屋を代表する大きな映画館だった。
カップルシートなんていう特別な席もあった。

昭和のよき時代。
年末年始には必ず「寅さん」が上映されていた。
松竹の看板作品。
確か当時は2本立て。
「釣りバカ日誌」も最初は2本立てのサブ的な作品だったかと思う。

映画の冒頭は必ず寅さんの夢から始まる。
ハッと目が覚め現実が訪れる。
それは本作も同じ。
いきなりオマージュじゃないか・・・。

どうだろう。
僕は「男はつらいよ」を何本観ただろうか。
リアルで観た作品は少ない。
1作目や2作目は山田洋次特集かな・・・。
全作品のうち1/3も観ていないし、ほとんど忘れてしまった。

しかし、寅さんが語る
「結構毛だらけ猫はいだらけ。穴のまわりはクソだらけ」
は最高だった。
あの軽妙な口調は渥美清だからこそ成し得たのだろう。
そんな過去の寅さんシリーズを思い出させてくれるのが本作の最大の魅力。

タイトルにある通り、映画を観る者全てが寅さんにお帰りを言い、過去を懐かしむ。
それは昔の時代は良かったというように・・・。
映像のタッチも昭和そのもの。
一つ一つに会話も今よりも丁寧で懐かしさを感じさせる。

セリフも普通ではあるが、普段会話では使わない表現が多い。
そんな感じ。
それが山田洋次監督が求めていた世界かもしれない。

本作は原題をを進行させながら過去をシンクロさせていくのだが、使い方が絶妙。
特に第1作目?の映像がいい。
倍賞千恵子さんはあんなに可愛かったんだ・・・。
今やすっかりおばあちゃんだが(映画の中もね・・・)、当時はとてもチャーミング。
博が惚れるのも仕方ない。

そんな感じで本作は過去の作品を少しずつ引っ張り出し、寅さんのせつない恋愛遍歴を映し出す。
観る者は当時をオーバーラップさせ、寅さんとの思い出を懐かしむ。

言い方を変えればズルい作品。
それでも観たいと思うし、観て感動してしまうから不思議。
それが一般的な捉え方だが、本当は別の意味合いも。
もしかしたら山田洋次監督は違うメッセージを訴えたかったんじゃないのかな。
今の時代に・・・。

それにしても正月に観るには相応しい映画。
日本映画は寅さんで一年をスタートすべきなんだろうね。

星野佳路と考えるファミリービジネスの教科書

何となく日経トップリーダーの回し者のような存在になりつつある(笑)。
本書は日経トップリーダーの連載や星野リゾート代表の星野氏の講演をまとめたものが中心。
実際は既に読んでいる内容がほとんど。
改めて取り上げる必要があるかといえば微妙だが、
ファミリービジネスを学ぶ者としてはしっかりと押さえなければならない。

今や星野氏はファミリービジネスを語る第一人者といっていい。
10年程前、僕はグロービスで開催された星野氏の講演を拝聴し感銘を受けた。
その時のテーマはマーケティングだった。
今はファミリービジネス関連で感銘を受けている。
ネタに使わせてもらうこともしばしば。

創業家4代目として格闘されてきた背景は説得力があり、その分析においても納得感は高い。
ファミリービジネスの研究をライフワークとして捉えられている。

本当は昨年12月までの「名古屋ファミリービジネス研究会」で
紹介したかったが、間に合わなかった。
読むのが遅かっただけですね(笑)。
今年の企画で紹介します。

本書では同族企業に関わる11名の方との対談で本音が語られている。
順調なケースは一つもなく、修羅場を乗り越え今に至るケースばかり。
その方が読み手には参考になるはず。

その中の一つに大塚家具の大塚久美子社長との対談がある。
大塚家具といえばつい先日、ヤマダ電機の子会社化が発表されたばかり。
経営状態は厳しく支援を仰がねばならない状態。

僕がその箇所を読んだのが偶然にも発表あったすぐあと。
対談は1年以上前だったが、とても新鮮だった。
この対談で星野氏は大塚社長に対して、こんなことを言っている。

『絶対という仕組みを考える、ということなんですよ。
大塚さんの今のコミュニケーションが守りに入っていることです。
「彼らとは違う」「誤解を解く」といった、表現は守りです。』

この対談には当然前後の文脈があるので、この文章だけだと、
何のこっちゃ?と思われるだろうが、僕はこの言葉がとても響いた。
結果、今のような結果に導いたとも受け取れる。

これはあくまでも個人的な感想で、事実かどうかは別だけど・・・。
本音トークは本人の価値観をもあぶり出してしまうのかも。

ファミリービジネスを学ぶに従い、
ファミリービジネスでない僕は更にどうしていけばいいのか迷い込む。
強みを知ることは弱みをあからさまにすることにもなる。
主観と客観でせめぎ合う辛さ。
最近はそんな状態だ。
誰か非ファミリービジネスの教科書を書いてくれないかな。
サラリーマン経営者じゃなくてね・・・。

なんだか迷子になりかけてしまったが、ファミリービジネスに関わる方にはおススメの1冊。
ぜひ、読んでもらいたい。

最後は回し者のような終わり方。
新年最初の書籍の紹介が本書がいいかは分からないけど(笑)。

映画「家族を想うとき」

この映画には悪い人は一人も出てこない。
懸命に前を向いて生きている人ばかりだ。
もがき苦しみながらも幸せを求めて生活をしている。

しかし、幸せが訪れることはない。
せつない。
映画を観ているこちら側が苦しくなってくる。

眼をそむきたくなるが、眼を離すことはない。
そこに現実があると感じるからだ。
目をそむくことは現実から逃げていることを意味する。
それを分かっているから逃げることができない。

この作品に登場する家族も同じ。
誰も逃げていない。
逃げようとする瞬間はあるもののその生活を受け止め、戻ってくる。
それがとてつもなく悲しい。

本作の舞台はイギリス。
どんよりとした天候の中、家族のために働く父親がいる。
母親も家族のために働く。
これが日本であっても何の違和感もない。

むしろ日本の方が想像しやすい。
これに近い日本映画もあったんじゃないかという錯覚も起きる。
どこにでもあり得る家族像がここに描かれている。

どこで間違ったのか、生きる時代がまずかったのか、
いい偶然と悪い偶然があるとすれば、たまたま悪い偶然が重なっただけじゃないか。
そんな想いを抱きながら、映画を見つめていた。

いつ何時、僕がこの映画の家族と同じ状況となっても不思議ではない。
たまたまに過ぎない。
運を掴めたかどうか、それを見逃さなかったかどうかの違い。
そんなふうに思えてくる。

どんな時も自分の判断軸と比べるのが大切。
僕は感情を抑えることができるだろうか。
僕は言葉を選ぶことができるだろうか。
いざという時、どんな判断をするのか。
映画は多くのことを教えてくれる。

そして、つくづく思う。
今のシアワセに感謝しなければならない。
家族に感謝しなければならない。
普通に暮らせるシアワセを。

タイトルではないが、家族を想うことを感じさせてくれる映画。
大人は観なきゃいけない。

いつまで名古屋で公開されているのか。
早めに鑑賞することをおススメしたい。