観たい観たいと思いながらタイミングを逃してきた。
上映期間終了間際でようやく観ることができた作品。

今年出会った監督の中で一番印象的なのが今泉力哉監督。
(お会いしたわけでもなく、初めて作品を観ただけのこと)
本作を含め、「街の上で」「猫は逃げた」の3本。

この3本を観ただけで、今後、今泉監督が撮った映画は監督名を知らされなくても当てられる。
それだけ個性的。
国内でいえば小津安二郎か、
海外でいえばジム・ジャームッシュか、そんな印象。
と偉そうに語っても当てられないことはあるが・・・。

本作も過去の作品もありそうでなさそうな日常を描く。
とても小さな世界。
酷い言い方をすれば映画の題材にするスケールでもない。
どうでもいい話と思ってしまったり・・・。

ところがである。
そんな世界にどんどんと吸い込まれていく。
大昔に読んだ純文学のせつない感覚に襲われる。

一体何なんだろうか・・・。
そのセリフの言い回しやちょっとした間がそう感じさせるのか、
据え置かれたカメラの前で延々と繰り返される会話がそう感じさせるのか。

今泉監督の特徴の一つは長回し撮影。
夫婦の会話も、不倫相手との会話も、作家とライターの会話も
固定されたカメラがずっと2人を捉えている。

それは作られた台本ではなく日常会話のよう。
感情的になることは少なく淡々と過ぎていく。
むしろ緊張感はない。

どこにでもありそうだがあまりない会話。
そのやりとりが絶妙で面白い。
本能8割、理性2割の姿がとても人間らしい。
単に不倫した妻に怒りを覚えない夫の話なんだけど・・・。

妻の中村ゆりも夫の吾郎ちゃんもいい役どころ。
今年は中村ゆりも活躍ですね。
最近は松本若菜も人気だというし、40歳前後の女優が活躍するのは嬉しい。
ブログとは関係ないけど(笑)。

役者ついでにいえばもう一人気になるのが若葉竜也。
AmazonのCMで「え~っと誰だっけ?」と思っていたのが彼。
今泉作品に欠かせない一人なのかな。
あの飄々とした演技もなんかいい。

今泉作品は今後、公開の度に観てしまうんだろうな。
来年も楽しみにしたい。