誤解を恐れずにいえば、歴史に残る作品ではない。
芸術的要素も文化的要素も少ない。
20年後、話題になることもない。
名作に例えられる作品にはならないだろう。

しかし、である。
そんな作品こそ価値がある。
今の時代だから生きる映画もある。
そんな作品って意外と多いし、大切にしたい。
本作もそれ。

変声期に悩む中学生と歌がうまくなりたいヤクザの交流を描いただけの作品。
ヤクザを描くことが今を反映しているのかと疑問視するかもしれないが反映している。
中学生もヤクザも観る側にとっては小さな悩み。
ただ本人にとっては大きな悩み。

カラオケを通し心を通わせお互いにとって大切な存在になる。
これも青春。
正直、バカバカしく思えることもある。
もっとやることもあるでしょと言いたくもなる。

いやいや、それが青春なんだ。
青春なんてほとんどくだらないことばかりなんだ。
だから素直に感動し、素直に喜べる。

誰しもが忘れてならない昔の1ページとダブらせる。
2人のやり取りでダブらせることはないか(笑)。
X JAPANの「紅」を自然と歌えるのもそんな時間を表現している。

最近、重い映画の割合が高かったので、時には軽快な作品もいい。
すべてが軽快でコミカル。
ヤクザ狂児役の綾野剛は音痴役で登場すると思ったがそうじゃなかった。
「へ~」っと感心してしまった。
中学生聡実役の齋藤潤は演技と歌の上手さで選ばれたのだろう。
納得。

脇を固める役者陣もいい。
音楽教師役の芳根京子も軽快。
ピアノが弾けるんだね。
最近彼女を見ると最近よく絡む某社会労務士を思い起こす。
それは僕だけのことか(笑)。

母親役の坂井真紀も軽快。
彼女をみるとどこかの誰かをイメージさせる。
それは坂井真紀に失礼ですね・・・。

監督は山下敦弘氏。
改めて調べてみると愛知県出身。
知らんかった。
過去観た映画は「マイ・バック・ページ」「苦役列車」のみ。
やはり青春モノ、いや、葛藤する若者を描くのが得意なんだ。
10年以上ぶり。
この間に制作された作品も観てみるか・・・。

やはりみんながハッピーになれる映画はいい。
僕に合いそうなカラオケソングも聡実クンが教えてくれたような気もするし。
今度、歌ってみるかな。