最近では一番予告編を観た作品。
正直、あまり魅力に感じなかった。
予告編以上の情報が僕の耳に入ってこなければ、観ることはなかった。

しかし、どうだろう。
作品が公開される前後から多くのざわつきが耳に届いた。
ベネチア国際映画祭の金獅子賞の受賞だったり、
アカデミー賞の11部門へのノミネートだったり。

それだけであれば海外の評価として留めておいたかもしれない。
だが、映画仲間を含めた周りがかなりの衝撃を伝えてきた。
気持ちは揺らぎ、結局、映画館へ足を運んだ。

一般的に予告編は映画の魅力を伝えるものだが、本作に限っては真逆。
魅力的なシーンは危険すぎて見せられない。
中途半端な映像と表現に収めるしかなかったと勝手に解釈。

映画は自分の目で確かめるまで分からない。
世の中には予告編が全ての駄作もあるが、
本作のように予告編とのギャップが大きい作品も存在する。
R18+作品のため、当然だが魅力的なシーンは予告編で流せない。

今年に入って「ラ・メゾン 小説家と娼婦」に次ぐR18+作品。
本作の方が衝撃が強く、健全と不健全の合間でフラフラになってしまうところだった。

ここは何といっても主役ベラを演じるエマ・ストーン。
彼女の大胆かつ素晴らしい演技がヤバいくらいにこちら側を刺激する。
大人の体を持ちながら新生児のような表情や体の動きもさることながら、
徐々に精神的にも大人になっていく変化にも魅了される。

ベラに男どもが翻弄されるわけだが、ベラにとっては自然な振舞い。
騙そうとも誘惑しようとも思っていない。
自分に正直に生きているだけ。
本当はその方が人間としては正しくそして美しいのかもしれない。

僕らは知識や道徳を身につけるだけでなく、
エゴや支配欲も吸い込んでろくでもない方向に向かってしまう。
誤った理性を持ち合わせるのなら、本能のまま生きる方がいい
と教えてくれたような気がしてならない。

原題は「Poor Things」。
単純に訳すと”かわいそうなもの”。
「哀れなるものたち」というタイトルが相応しい。
どんな時代もどんな国でも男は哀れなる者。

哀れな男どもは当然だが、哀れな男を作り出す女性にも観てほしい。

エマ・ストーンに大拍手ですね。