どうだろうか。
観客は70代を中心とした年配者が多かったように思う。
地味な作品だが結構、お客さんも賑わっていた。
エンドロールが流れる頃、すすり泣く声があちこちから聞こえてきた。
その世代にとって共感する面が多かったのだろうか。
間もなく還暦の身としては気持ちは理解できるし、
いずれ自分もそんな時期を迎えるだろうと想像できる。
舞台となるのはペンシルベニア州西部の小さな町。
認知症の初期症状を理解しながらも認めたくない79歳のミルトンが主人公。
名優ベン・キングズレーが演じる。
頑固でありながら、ちょっとした弱さも見せる老人。
脇を固めるのは同世代の2人の女性。
恋愛関係ではないが、お互い惹かれ合う要素も微妙にあったり・・・。
娘デニスは別々に暮らすが父親ミルトンが心配で病院に行かせようとする。
それを断固として拒否し、娘からも疎まれる。
なんだか自分もそうなりそうな予感。
そこである事件、いや事故、いや現実では考えにくい展開となる。
解説には正体不明の飛行物体としか書かれていないし、
画像もないのでバラすのは止めておく。
これがすこぶる面白く心も温まる。
その存在を明かしたくて仕方ないが我慢。
でもこの存在が高齢者3人に生きがいを与えていく。
特に何をするわけではない。
魔法を使うことも暴れまわることもベラベラ喋るわけでもない。
その時、僕は思った。
歳を取るとあれこれ言われるのではなく、ただ自分の話を聞いてくれればいいと。
うんうんと頷くだけで相手は癒される。
問いに対する回答なんて求めていない。
寄り添うとはきっとそんなこと。
子供だましともいえなくないが、
老人向けおとぎ話の心温まるヒューマンドラマ。
とてもシアワセな気分にさせてくれた。
上映時間は87分と最近の映画にしては短い。
これもターゲットを押さえていると思う。
冒頭にも書いたように本作のターゲットは年配者。
となると基本的にトイレは短い。
「国宝」のような映画は耐えられない。
これくらいの時間が安心できる。
なるほど、そういうことか・・・。
原題は「Jules」で邦題「カミング・ホーム」とは程遠い。
映画を観れば理解できるが、原題だけだとなんのこっちゃと思う。
解は明かされるので、それは観てのお楽しみ。


