クリストファー・ノーラン監督作品は、観る前にいつも少し構えてしまう。
鑑賞中は頭も体もフルに活用することになり、
観終わったあとはかなりの疲労感に襲われることが多い。
それだけ作品を理解し、世界観についていくのにエネルギーを要するということ。

本作も3時間近い超大作。
正直、当初は観に行くことを躊躇していた。
しかし、周りの評価があまりにも高い。
映画コラムニスト見習いも息子も絶賛。
「これは観ておかないと映画コラムニストとして失格なのではないか」
そんな半ば強迫観念のような思いに押され、劇場へ足を運ぶことにした。

全国的にも珍しい上映だと思うが、
今回はミッドランドスクエアシネマでの35mmフィルム上映で鑑賞。
オープニングの映像を見た瞬間は、どこか懐かしいような独特の感覚を覚えた。
だが、物語が進むにつれて35mmならではの深みや味わいがじんわりと効いてくる。
最新のDolby Cinemaが誇る圧倒的なクリアさや重低音とはまた一味違う、
フィルムだからこそ魅力。
ミッドランドスクエアシネマ、やりますね。

元となった古代ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」について、
僕は全く知識がない。
残念ながら、この手の古典や歴史ジャンルに対する造詣も皆無。
観る前は「背景知識がなくてついていけるだろうか」という不安も少なからずあった。

しかし、結果としては杞憂に終わった。
知識がなくても、映画として十二分に見応えがあった。
息をのむような迫力ある映像表現と、観客を飽きさせないスリリングな展開。
難しい予備知識に頼らせず、純粋な映像体験として力ずくでねじ伏せてくるあたりは、
やはりクリストファー・ノーラン監督の並外れた力量だと感服するしかない。

3時間という長尺を感じさせない圧倒的な濃密さ。
構えて観に行ったはずなのに、
観終わってみればその世界観にどっぷりと引き込まれていた。
億劫がらずに劇場へ足を運んで本当に良かったと思える、見事な作品だった。