観た直後よりも、時間が経つにつれてじわっと胸に迫ってくる作品。
数日経過した今、改めて作品を振り返るとさらにその感情が深まってくる。
主役ともいえる3人の登場人物たちの感情に思いを巡らせると、
一見すると奇抜や過剰に思えた行動の数々が、不思議とストンと胸に落ちる。
「もし自分が彼らと同じ立場に立たされたら、
同じような行動を起こしてしまうかもしれない・・・」
観終わったあとに、そんなことまで考えさせられた。
しかし、映画館で観ている最中は、「ヤバいな」という捉え方しかできなかった。
ブラックコメディが効きすぎているというか・・・。
瞬間的な怒りや衝動で感情を昂らせて起こす行動と、
長年耐え忍んで感情を抑え込んだ末に爆発させる行動。
両者はまるで異なるもののようでありながら、実は紙一重なのかもしれない。
物語の中心となるのは3人の男たちだ。
磯村勇斗が演じるアーチェリーのオリンピック日本代表候補・龍之介。
末澤誠也が演じる、引きこもり生活から抜け出そうともがく拓海。
そして、この2人が原因で妻子を失うことになった、綾野剛演じる埜本。
この3人が、それぞれの複雑な立場を絶妙な距離感と迫力で演じ切る。
僕は末澤誠也という俳優を全く知らなかったのだが、
後で調べたらアイドルグループ「Aぇ! group」のメンバーで結構な人気があるらしい。
名大社女子にもモーレツなファンがいる。
葛藤しながら感情を行ったり来たりさせる難しい役どころを見事にこなしていた。
僕は𠮷田恵輔監督を「人の人生における浮き沈みを描く最も上手い監督」と認識。
それも大袈裟なドラマとして演出するのではない。
ごく普通の人間の在り方として、
一人の人間が舞い上がったり、底まで沈んだりする姿を映し出す。
これまでにも結構な本数を観てきたが、
『BLUE ブルー』も『空白』も『ミッシング』も『神は見返りを求める』も、
思い返せばどれもそうだった。
あっ、いかん、今年公開の『四月の余白』は見逃した。
間違いなく2026年に公開された映画の中でも、
ふとした瞬間に劇中のシーンが頭に鮮明に焼き付く特別な一本。
埜本が被る中日ドラゴンズのキャップも含めて。


