本作は実話に基づいた作品だという。
ナチスの恐ろしい真実を世に伝えるべく立ち上がったひとりの青年と
ナチス政権下での壮絶な格闘を描く。
きっと当時はこうした知られざる実話があちこちで起きていたのだろう。

副題に「ナチスと闘った若きレジスタンス」とあるが、まさにその言葉どおり。
わずか16歳の若者がこれほどの覚悟を持って行動していたなんて信じがたいが、
その勇気と行動力は手放しで賞賛すべきだ。

舞台はナチス支配下のドイツ国内の話だが、劇中の言語は全編英語。
昨年観た『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』もそうだったが、
アメリカ主導で製作される以上、やむを得ない。
野暮な突っ込みを入れるのは止めておこう。
映画としては母国語であるドイツ語で演じられるのが理想だが、
世界中のより多くの人々にメッセージを届けることの方が大切だともいえる。

ナチス政権下の非道や狂気を描く映画は、毎年のようにどこかで公開されている。
今年観た『白パンと独裁者』もそうだったし、観れていない作品も何本もある。
映画人たちはこうした作品を通して、
間接的に今も世界に存在するどこかの独裁者たちへ釘を刺しているのだろう。
まあ、当の本人には全く響いていないのが現実だけど。

今から振り返ってみれば、あんなにも聡明で優秀な若者を失うことは、
ドイツという国にとっても計り知れない損失だったはず。
彼を取り締まっていた秘密国家警察の連中も、
冷酷な判決を下した裁判官も、
心の奥底ではそのことに気づいていたのかもしれない。
しかし、あの時代を覆っていた異様な空気が、
それを立ち止まらせることを許さなかったのだ。

いつの時代になっても、人間は同じ過ちを繰り返す。
表立ってニュースには出てこないだけで、現在のロシアでも、イスラエルでも、
同じように声を上げている若きレジスタンスたちがいるんじゃないだろうか。
僕たちが知らない間に、そうした尊い命や才能が理不尽に消されるのはあまりにも悲しい。
映画の中で描かれるような現実が、これ以上繰り返されないことを願うばかりだ。