ドイツ映画は毎年のように戦争や歴史と向き合う作品を送り込んでくる。
それも自国の過去の過ちや負の側面を誤魔化すことなく、真正面から否定する作品が多い。
この姿勢を見るたびに、日本映画とのスタンスの差を感じる。

単に自国の悲劇を描いて被害者意識を煽るのではなく、
堂々と戦争そのものを批判する表現を提供し続けること。
それが歴史の過ちを繰り返さず、戦争を遠ざけるための最も有効な手段だと思う。
ドラマしか観ていないが「開戦前夜」もそうかもしれないが・・・。

本作で描かれるのは第二次世界大戦末期にあたる1945年、ドイツ北部のアムルム島。
邦題は「白パンと独裁者」であり、物語の構図を分かりやすくイメージさせる。
しかし、原題は「Amrum」と舞台となる島の名前を指しているだけ。
もし「アムルム島」というそのまんまのタイトルだったら、
そのまま素通りしてしまう可能性も高い。

物語の主役は、12歳の少年ナニング。
映画は彼のまっすぐな目線を通して進行していく。
彼自身が声高に戦争を非難するわけではない。
日々の生活の中で戦争がもたらす理不尽な悲劇を肌で感じ取り、
それが決していけないものであると自然に認識していく。

ただ、ナニングにとって切実なのは戦争の不幸ではなく、目の前で起きている現実。
ヒトラーに心酔し終戦の気配とともに元気を失くした母親ヒレを、どうにかして救いたい。
それは純粋に母親を想う息子の、ごく自然な衝動。

彼の目的はタイトルにもある「白パン」。
白パンと、そこに塗るためのバターや蜂蜜を手に入れるために、ナニングは必死に行動する。
大切な自転車を波にさらわれても、母親のための砂糖を守ろうする。
そのシーンは母親を想う純粋な気持ちの象徴で胸に押し迫まる。
その健気な姿が過酷な時代の悲惨さと重なり合い、
結果として戦争がいかに愚かであるかを静かに証明していく。

映画を観ながら、つくづく感じた。
日本でも、こういう角度から時代を描いた作品がもっと制作されたらいいと。
描くべき題材やネタはあちこちに転がっていると思うし。

そして観終わった後、改めて思う。
できればアメリカ大統領やイスラエル首相にも観てほしいと。
まあ、鼻で笑い飛ばしてしまうのかもしれないけどね。