これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

映画「枯れ葉」

巷の評価が高いので予定外だったが公開終了間近で鑑賞。
ブログを読んで観たくなっても既に終わっている可能性は高い。
ご了承を・・・。

本作はフィンランドとドイツの合作。
知らなかったがフィンランドでは名匠と言われるアキ・カウリスマキ監督作品。
日本でもファンが多いようだ。

手掛けられた作品は観る機会が少ないため、かなりマニアックな方々だろう。
本作でファンになったわけではないが、過去の作品は気になる。
僕自身ももっと幅を広げなきゃいけないし。

本作は現代を描く。
しかし、映画を観ていると昔の作品のように思えてならない。
70年代が舞台のような・・・。

ラジオから流れるロシアのウクライナ侵攻のニュースで現在と知らされる。
昔のように感じてしまうのは主役2人の生活が理由。
アル中のろくでなしの男性と中年の失業した女性を描くからか。
スマホもパソコンも登場しない。
(パソコンはネットカフェで一度だけ)

普段の生活は現代社会から乖離していると思われる。
生活も質素で天候はいつも薄暗い。
労働環境も厳しい。

フィンランドって貧しい国だっけ?と思ってしまう。
しかし、フィンランドは幸福度ランキング1位の国。
一方で日本は47位。
僕は断然、どんな立場であろうと日本の方が高いように思える。

それは表面的にしか見ていないからか。
便利なツールが揃っているだけで精神的には満たされていないからか。
確かにろくでなし男も失業女もさほど悲壮感はない。
お金はなくても何とかやりくりはしている。
ポジティブさはないが、飄々と日々過ごしている。
愛を求めているのはヒシヒシと感じるが・・・。

ネタバレしない程度に解説すると、
名も知らない男女が惹かれ合うが、すれ違ってばかりのストーリー。
簡単にいえばフィンランド版「アナログ」逆バージョン。
「アナログ」が分からない人は調べてください(笑)。

映画は淡々と進み、涙や笑いでジーンとさせるわけでもない。
でも、つい見入ってしまう。
こんな世界も悪くないと思わせる。
それはぬくもりを感じるからかもしれない。
置かれた環境が悲惨であっても。

隣国で起きている紛争に繋がっているとも、
いつも巻き込まれるフィンランドの状況を表しているとも思える。

本作は昨年のカンヌ国際映画祭審査員賞受賞作。
「怪物」も受賞を逃した。

機会があればご覧いただきたい。

作家の贅沢すぎる時間

伊集院静氏が亡くなったのが昨年11月。
この時期に多くの著名人が亡くなられたが、個人的には一番ショックが大きかった。
膜下出血で倒れられた後も復帰され、まだ活躍されると思っていたので。

伊集院氏の作品を読むのは随分と久しぶり。
これからはちょくちょくと向き合っていきたい。

訪れた飲食店を紹介するような著書は珍しい。
どんなお店に通っていたかは気になるし、
人気食べ物ブロガーといわれる身としては読んでおくも必要。
今後のブログのためにも・・・。

結論からいえばブログの参考には全くならない。
食の解説とか味の評価は一切書いていない。
具体的にどんな味付けで何が美味しいかはさっぱり分からない。

その点でブログの参考にはならないが、
ある意味、僕のブログもよく分からないので同じようなもの。
それは著者に対して失礼か(笑)。

ただ伊集院氏が出会ったお店やそこでの会話、やりとりを羨ましく思いながら読んだ。
このような時間を過ごせるのならどれだけ幸せか。
旅先で気に入れば毎日のように顔を出すし、挙句の果てにお金まで借りてしまう。

お客がお店のファンになることは多いが、
お店がお客のファンになってしまうのは、
やはり伊集院氏に魅力に惹かれるからだろう。
そのあたりは人気食べ物ブロガーと大きく異なる。

本書は二部構成で第一章が出会ったお店を紹介。
全国津々浦々の70数店を紹介しているが、残念ながら名古屋はなかった。
あまり魅力がなかったのだろうか。
そもそもあまり訪れる機会もなかったのだろうか。
好みもあるとは思うが・・・。

取り上げられているお店で行ったことがあるのは一店のみ。
横浜の「スカンディヤ」は、一昨年に偉い方に連れてってもらった。
あとはなし。

銀座あたり敷居が高いお店は今後行く機会もないだろう。
一方で浅草や上野の庶民的なお店も紹介されている。
そのあたりであれば僕の力でも何とかなる。
グルメサイトをチェックするとすこぶる評価が高いので、
それはそれで入るのは難しいが機会を見つけて行ってみたい。

京都だけでも16店紹介されている。
祇園あたりの高級店なので誰かに頼るしかない。
お金持ちの優しい方はいないだろうか・・・。

自分で行けるのは「まつお」「おめん」「やきにく なり田屋 」くらい(笑)。
どこかのタイミングで行ってみたいナ。
同じカウンターやテーブルに座っただけでも幸せを感じるだろうナ。
(伊集院風文体で・・・)

取り留めないブログになってしまったが、やはり亡くなったのは惜しい。
あんな生き方はできないが憧れる面も多いし。
せめて同じお店にお邪魔することで生き方を真似てみたい。

松下幸之助直伝 社長の心得

著者の江口先生に頂いた本書。
僕のような能力のない者は定期的に読まないとすぐに忘れてしまう。
江口先生の著書は結構読ませて頂くが、定期的に機会を持つことが大切。

異なる書籍でも松下幸之助翁の言葉や行動を具体的に提示頂けるのがほとんど。
新たな発見があったり、以前頭に入っていたことが抜け落ちたり、
とその都度、学びになる。

中でも本書は松下氏の言葉や行動を現代社会に置き換え、
その必要性を分かりやすく解説されているので納得感も高い。
50年前の言葉であろうが、原理原則は変わることなく、
真摯に受け止めなければならない。

僕は社長を退いた身だが、経営者の端くれであることは事実だし、
またどこかで社長を務める可能性もなくはない。
そのためにも「社長の心得」は常にインプットが必要。
頭や体の中に染み込ませ、当たり前に行動できるのが理想。
道のりは果てしなく遠く辿り着けることはないが・・・。

松下氏らしい言葉も所々に紹介されている。
土光敏夫氏の有名な言葉
「まず知恵を出せ、知恵なき者は汗を出せ、それができない者は去れ」
に対して、松下氏は
「まず汗を出せ、汗の中から知恵を出せ、それができない者は去れ」
といわれる。
より実践に基づいた言葉だ。

また、「おまえはひよこ」と言われないように心掛けろともいわれる。
「愚かな人、間抜けな人、エゴの人、恥ずかしい人、卑怯な人、幼稚な人、滑稽な人」
の頭文字がそれ。
特に若い人は気をつけた方がいい。
いや、愚か者のオマエだと指されるかもね(汗)。

先日の勉強会でも話されていたが、
「鳴かぬなら、それもまたよし、ホトトギス」もそう。
信長でも秀吉でも家康でもない。
この言葉はまさに今、この社会にとっても必要なのかもしれない。
そんなことも感じた。

AIだのDXだのどんなに時代が進化しようとも
経営にとって大切なことは大きくは変わらない。
古典からの学びも同様。

改めていい気づきとなりました。
江口先生、ありがとうございました。

映画「コンクリート・ユートピア」

タイトルが秀逸。
そんな言葉も名称も映画には出てこない。
しかし、誰もがそれがどこなのか容易に想像できる。
唯一残されたアパート(韓国ではマンションをアパートと呼ぶの?)がコンクリート・ユートピア。

能登半島地震直後に公開された大災害に関係する作品なので、観ることを憚れた。
ただここは割り切りも必要。
本作の大災害はきっかけに過ぎず、人間のエゴや環境によって変化する人格を描くのがメイン。
今回の地震とは似ても似つかないことは予め理解した方がいい。

ネタバレしない程度に説明すると、廃墟となったソウルで崩落しなかった唯一のマンションに
多くの人が押し寄せ、不法侵入をしたため、それを住民が排除し守っていく。
それが住民に安心を与えユートピア化していくストーリー。

それだけでも日本映画にするのは難しい。
さらに難しいのは描かれる人間模様。
人はいざという時にどんな行動を起こすかは分からない。
自分の生活を維持するのが精一杯なのに他人を救えるか。

極端に言えば自分や家族を守るために、人殺しができるか。
そんなことを問われる。
映画を観る限り、日本より韓国の方が過激。
あえて過剰な演出をしているかもしれないが、日本ならこうはならない。
(と思いたい・・・)

非常事態に陥った時に冷静な判断ができるか、
誤った行動があたかも正しい行動として受け止めることはないか。
それは今、世界中で起きている戦争に近い。

自己防衛のためなら相手を傷つけてもいいという愚かな行動に対して、
全く違う切り口で批判しているのではないか。
ラストシーンから愚かな国や人たちへのメッセージとして僕は受け止めた。

そんな意味では強烈な社会派映画にもなるが、
別の見方をすればホラー映画としても成立する。
ゾンビになっていないだけで、実際はゾンビと同じ。
姿かたちは人間だが、やっていることはゾンビ。
そんなふうにも見えてしまう。

そんな両極端な作品を思わせる韓国映画はやはり面白い。
こんな作品を日本では作ってほしくはないけど(笑)。

主演はイ・ビョンホン。
いつもはクールな二枚目が多いように思う。
本作はとても醜くカッコ悪い。
それだけ光っていたということか。

年明け早々、インパクトの強い映画を見せてもらった。

小説「トヨトミの世襲」

前作「トヨトミの逆襲」を読んだ時に次作は「トヨトミの帰還」か「トヨトミの覚醒」と書いた。
全く違ったが、「トヨトミの帰還」はやや近いか(笑)。
「トヨトミの野望」から続いたシリーズの完結編。

ここまできたら読まざるを得ない。
地元で事業を行う身としては、どんな展開になるのか気になるのは当然。
描かれている世界はまさに今。
本書の単行本の帯には「99%実話の噂」と書かれている。
さすがにそれはないと思うが、T会長の顔をイメージしながら読み進めてしまうのは著者の思う壺。

本書にはうちの会社がオフィスを構える「伏見」も頻繁に登場する。
その度にどのあたりか?どこの店か?なんて考えてしまう。
また、ディーラーも実在するあそこの社長と弟?と思ってしまう。
確か奥さんって・・・。
知った名称はより現実に近づけるので、少々、恐ろしかったり。

今回、新たに登場するのが「織田電子」。
あきらかにニデック(旧日本電産)を指している。
それは僕が語らなくても読者の99%が「織田会長は永守会長ね」と頭に浮かべるだろう。
確かに噂に聞く面と同じ点があったりと、内容も事実と思わせる。

ご子息のこともネットで調べてしまった。
フィクションであるのは間違いないが、社長室に飾ってある絵は本当かもと思ってしまった。
そのあたりはとても巧妙な展開で想像力を働かせる。

本書はタイトルにあるようトヨトミ家の世襲問題がメイン。
ファミリービジネスを学ぶ者としては否定的に表現される世襲はいかがか?と思ってしまう。
その点に関しては正直な感想だが、世間一般的には共感されるのだろう。
それだけ世襲に対してマイナスイメージを与えるニュースが多いし・・・。

中身については触れないが、前2作と比べるとプライベートが描かれる面が多い。
それもスキャンダラスな場面が多いので、ビジネス小説の枠を超えた印象も。
それは僕だけが感じているかもしれないので、読んだ方の感想を伺いたい。

どちらにしても目まぐるしい展開は読み物としては面白い。
解説には「その“衝撃のラスト”を見逃すな!」と書かれているが、
これが事実だとしたらほんと衝撃。

楽しめたエンターテイメント小説だが、EV市場の動向も学びことができた。
完結篇といっているが、5年後、続編が出たりしてね。

映画「ブルーバック あの海を見ていた」

いい映画だ。
素直な気持ちになれるいい映画だ。
それは映し出される広大で美しい海であり、
海底を自由に泳ぐ魚群であり、それを見守る人たちのこと。
そこに懸ける想いがヒシヒシと伝わってきた。

自然と共生する大切さを改めて教えてもらったような気がしてならない。
過度な環境保護を訴えるわけではない。
環境問題に痛切なメッセージを発しているわけではない。
ごく自然に自分たちが大切にすべきことを当然と捉え動くだけ。

より快適で楽な生活ばかりを求める自分がちっぽけで情けない人間に思える。
真っすぐ生きるとはこういったことなんだろう。
もっと大切なことは何か。
映画に感動しながら、こっそりと反省をしてしまった。

本作の舞台は西オーストラリアの海辺。
父を海の事故で亡くした母と娘が海と共存した生活を送る。
環境活動家の母はアワビも獲るが、あくまでも最小限。
生態系は傷つけない。

娘は海で鍛えられ、海の奥深くまで潜っていくこともできる。
そこで出会ったブルーバックと名付けられた巨大な青い魚と心を通わせる。
そのシーンは果てしなく美しい。
そして感動的。

誰しもがそんな海を荒らしたくないと思う。
それは無責任に映画を楽しんでいるからか・・・。

ここにビジネスチャンスがあるなら、どうだろうか。
浅はかな僕は揺らぐ。
本当の姿を見ることはせず、表面的な姿だけ捉えようとするだろう。
きっと世界中でこの手の問題は起きているはず。

本作は現在と過去を織り交ぜながら、何が大切なのかを教えてくれる。
そこに説教臭さも、必要以上の演出もない。
自然体に近い。
ドキュメンタリーを見ている錯覚にも陥る。

主演の娘アビーは幼少期、青年期から大人へと描かれる。
母親ドラは晩年期まで。
2人の役柄を5人の役者が演じる。
違和感はなく、むしろ心地いい。

オーストラリア映画って、なかなかいいじゃないか。
マイナー作品だが、素直な気持ちでおススメしたい。

そして、もう一度、オーストラリアにも行ってみたくなった。
1回しか行ったことはないけど・・・。

映画「女優は泣かない」

僕はこういった小さな日本映画が好きだ。
超豪華な俳優陣を並べず、テーマ設定も地味で低予算で仕上げた作品。
メジャー公開もされないし、大ヒットもしない。
(すみません・・・)

しかし、作り手のこだわりや役者陣の懸命さが伝わる。
そこに大きな魅力を感じる。
そんな日本映画が好きで大切にしたいし、応援もしたい。
本作はまさにそれ。

舞台は熊本県荒尾市。
一昨年、熊本に旅行も行ったが、どのあたりかも知らない。
調べてみたら熊本市よりずいぶん北で有明海沿い。
有働監督の出身地だという。
そのあたりも作品に込める愛着もあるのだろう。

映し出される風景や熊本弁がストーリーと融合し、こちらの気持ちも引っ張られる。
物語はスキャンダルで仕事を失った崖っぷち女優と
評価が上がらない女性ディレクターの人生模様を描くだけ。
(ちょっと失礼な表現かな・・・)

大げさな人間ドラマはない。
新鮮なテーマともいえない。
だが、僕はストレートに感情を持っていかれた。

娘と父の問題が余計に僕を感情的にさせたのかもしれないが、それだけじゃない。
笑うシーンでは笑い、泣くシーンでは泣く。
オーソドックスでありながら、小気味よい演出が感動を生む。

象徴的なシーンで父親が娘に焼き飯を振舞うシーンがある。
その焼き飯がいいじゃないか。
チャーハンじゃなく焼き飯。
きっと美味いはず。
そう思ってしまう。

父と娘の絆は言葉はなくでも、関係性が悪くても太く繋がっている。
どんな娘であろうと父親は応援するし、
どんな冷たい父親だろうと娘はきっと信じている。

主演は蓮佛美沙子と伊藤万里華。
このキャスティングも素晴らしい。
崖っぷち女優とイマイチな女性ディレクターを上手く演じている。

伊藤万理華は「サマーフィルムにのって」のまんまな気もしたけど。
あれがキャラか、演技が同じようになってしまうのか。
まあ、それはそれでよしとしよう(笑)。

女優は泣かない。
泣かないし泣けない。
それもプロ。

素直に感じたい作品だよね。

なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか

最近、Z世代の採用をテーマにした講演依頼を頂くことが増えた。
「Z世代評論家」なんてテキトーなことを言っているせいもあるが、
特別な見識があるわけではない。
評論するのは勝手で資格があるわけではないし(笑)。

とはいえあまり無責任なことは言えないので、
それなりに調べたり、経験したりしている。
その中で参考になるのは大学での授業や若手社員の動向、
子供たちの価値観だったりする。

残念ながら正解はない。
はっきり言ってしまえばマチマチ。
よく表現されるようなデジタルネイティブとか、
本質に価値基準を置くとかは周知の事実。
目新しさはない。

価値観も多様。
今の学生は大人しいというが、それは以前から。
昔は大学の授業に出ていなかったので、見えなかっただけ。
今は学生がしっかりと授業に出席するので、そんなふうに見える。

安定志向が多いというが、それも昔から大差ない。
フルコミで勝負したいという学生も少なからずいる。
みんながみんな同じ考えではない。

それに説得力を持たせてくれるのが本書。
著者の古屋さんとは2度ほどご一緒したが、僕が感じていたことを具現化してくれる。
「ゆるい職場」でもなるほどと感心したが、
(おかげで講演にも生きてます・・・)
本書もふんだんにデータを活用し、その中で持論を展開されるので納得感は高い。

僕のように感覚で勝負している者とは明らかに違う。
本書でも言及されているが、若手を育てるのが難しいのは、
世代感よりは働き方が変わったことが大きい。

現状や自社に当てはめてみればより明確。
以前、ブラック企業という言葉があちこちで使われていた。
長時間残業や休日出勤など、過酷な働き方で自殺者が多いというような・・・。
もちろんゼロではなく、問題を抱える企業も多いだろう。

しかし、明らかに減ったはず。
僕らが若い頃当たり前だった残業なんて今や考えられないのが一般的。
それに合わせたマネジメントや育成方法が求められるが、
管理者側が追いついていないのが現状じゃないか。

僕がエラそうにいって、完璧にこなせるかといえばそうではない。
今の考え方は理解しているが、錆びついた価値観が頭の隅に残っているのも事実。
これが邪魔するケースもある。
一言でいえば「古い」のだが、くだらない成功体験が足を引っ張る。

一方で本質的な面もあるので、その境目は難しい。
だからゆるくて辞める社員が出るのも当然。
まずは職場環境の変化を前向きに受け止めることが大切。
転職も普通だし、副業、兼業も当たり前の時代になるのだろう。
どんな時代も若者が変わる前に自分が変わることが必要かも。

離職者が多いのは「きつい職場」と「ゆるい職場」という。
その中間なら大丈夫なのか?という疑問があるかもしれないが、
もしかしたらそれがヒントなのかもね。

いつの時代も若者を育てるのは難しい。
僕が若い頃、新人類といわれ、それに手を焼いた上の世代も多い。
昔は精神論で押し通せただけ。

不満が充満して、みんな飲み屋でグチっていた。
今の若者はそれがない。
そう思うと自分たちの方がダサかったり。

Z世代が特別ではない。
今も昔もさほど変わらない。
若者に変化を求めると同時に僕らも企業も変化していかなくちゃね。
本書を読んで改めてそう感じた。

ありがとうございました。

映画「ラ・メゾン 小説家と娼婦」

2023年に観た最後の作品。
昔の表現でいえば成人映画。
今はR18+という。

R18+作品がマイナーな映画館でなく、
イオンシネマで上映されることで興味が湧いた。
18歳以上の作品でもシネコン上映だからかなり一般向けなのかと。
案の定、この手の作品としては珍しく、
夫婦ずれもいれば、女性一人客も鑑賞していた。

本作にはこんな解説が書かれている。
「作家であることを隠して高級娼館に潜入したエマ・ベッケルが、
その体験をもとにアンダーグラウンドで生きる女性たちのリアルな姿を描き、
フランスで賛否両論を巻き起こしたベストセラー小説「La Maison」を映画化」

映画コラムニストとしては気になるのは当然のこと。
(純粋な映画ファンとして・・・)
テーマや描き方を変えればR18+にする必要はないかもしれない。

しかし、本作は観る側が恥ずかしくなるほど過激。
一人でこっそり観るならいいが、映画館ではそれなりの緊張感が伴う。
それが評価され日本に輸入されたわけではないだろう。

テーマ自体は新しいわけではない。
その世界を描く作品は日本でもある。
もしかしたら日本の方が辛辣かもしれない。

それが国や場所が変わることで印象も変わる。
イヤらしい意味ではなく、惹かれる面もあったり(笑)。
ただ言えるのは万国共通で、男も女も抱える悩みや闇や変態性は大差ない。
そんなふうに思ったり・・・。

日本でも体を売る女性の問題が取り上げられるケースは多い。
いろんな事情があるのは理解できる。
どちらかといえば環境面で描かれることが多い。
その育ち方とか不幸な家庭環境が・・・。

そこは僕も理解できる。
本人に原因があるわけではなく、周りの影響であることが。
しかし、本作の焦点は異なる。
描き方がこれまでの僕がイメージする内側と。
女性の内側ではあるが、これまでの内側とは違う。

女性の感覚がその世界に浸かることで変化するのは本作が教えてくれた。

どちら側から体験するか。
それは体験した者しか分からないんだろうね。

映画を観ないと分からないこと。
そして、映画を観ても分かりえない世界があることも。

映画「PERFECT DAYS」

ビム・ベンダース監督といえば「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」。
大学時代に人気のあった監督の一人。

いつの間にか彼は日本人になっていた。
日本の繊細な季節感や日本人らしい感情、立ち振る舞いを見事に描く。
僕らにとって当たり前な日常が海外からすれば違和感に感じることも多い。
それをさらりとごく普通に映す。
ビム・ベンダースは日本人なんだ・・・。
そう思ってしまった。

本作は2023年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で、
役所広司が主演男優賞を獲得した作品。
話題性がある作品が昨年末に公開。
もっと早い公開でもいいと思うが、映画界ならではの事情もあるのか。

素晴らしい映画はいくつかに分類される。
観る者に考えさせる余裕がある映画がその一つ。
緊張しっぱなしの畳みかける作品もいいが、
本作のように静かに時間が流れ、映画と自分を溶け込ませる作品もいい。

描かれるのは平凡な日常。
何もなければ何もない。
いつも通り起きて、仕事に出掛け、風呂に入り、酒を飲み、本を読んで寝る。
規則正しく毎日が過ぎていく。

人によってはつまらない毎日かもしれない。
人によってはかけがえのない毎日かもしれない。
平凡の捉え方で日常のありがたさは変わる。

いや、経験や年齢によっても違うのかもしれない。
これが若者であれば、もっとチャレンジしろ!とか、
出会いを見つけよ!とか、発破をかけるだろう。

しかし、多くの経験を経た者にとっては、そんな発破は必要なく、
ただ忠実に自分に向き合い他人の邪魔をせず生きていくだけ。
人の眼も気にしない。
それだけで十分な価値はある。

果たして僕はそんな生き方ができるだろうか。
映画と共に歩みながら、何が幸せか?とふと考える。
それが考えさせる余裕のある映画。

ここでようやく理解できた。
なぜ、本作が年末の公開なのか。
年末年始にこれからの生き方をじっくりと考えさせたかったのだ。
なるほど!
(勝手な解釈です・・・)
観てない方は、今年の年始は長いので是非!

本作には東京都内の公共トイレがあちこちと登場する。
古臭いイメージはなく、どれもオシャレなデザイナーズトイレ。
(そんな表現はないか)
その施設も一見の価値ありだが、僕らはもっと環境に感謝しなきゃいけない。
そんなことも感じさせてくれた。

映画コラムニストとして2024年最初のブログ。
ブログの内容はともかく一本目としては相応しい作品。
僕の映画仲間の評価もすこぶる高い。
2023年1位の声も多かった。

自分にとっての「PERFECT DAYS」。
目指していきたいね。