これからも前向きに 名大社会長ブログ

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あの会社の新人は、なぜ育つのか

本書も若手勉強会の課題図書。
前回取り上げた「20代に伝えたい50のこと」は僕が推して課題図書にしたのだが、
こちらはチームリーダーのオガワが選んできた。
同業他社を知るというよりは新人が育つ過程を知りたい方が強いと思うが、
センスとしては悪くなない。
今の自分に照らし合わせ読書することもいいこと。

著者の藤沢久美さんにも関心があるのか尋ねてみたが誰も知らなかった。
やっぱ、まだまだですね(笑)。

僕が読み終えた時の印象は2つ。
自分が想像していたディップさんと全然違う、ということと、
何となく名大社の取り組みに似ている、ということ。

ディップさんからは「おいおい、一緒にしないでくれよ。」
と言われるかもしれないが、素直にそう感じた。
そう感じたかったのかな?

同業他社とはいえ、名大社がディップさんと被ることはほぼない。
採用領域が異なるため競合はない。
そのため情報が乏しいのも事実。

調べてみると冨田社長は僕と同い年。
大学は違うが愛知県の大学出身。
どこかで接点があっても良さそうだが、お会いしたことは一度もない。
どこかのタイミングでご挨拶に行くべきとは考えている。
多少なりとも近い点はあるのだ。

こんな言い方は大変失礼で本人を前にした場合はしっかりと詫びるが、見た目は強面。
強烈なトップダウンで体育会系のガンガン飛ばす営業会社をイメージさせる。
勝手に決めつけてしまって、申し訳ありません。
だから会社の風土もそんな風に思っていた。

しかし、本書を読むと全く違う。
社員さんを大切にし育成する仕組みが散りばめられている。
でも優しいだけではなく、厳しさも徹底的に教えていく。
そんな点が名大社と似ていると思ってしまった。
(えっ、うちはそこまでやっていない?スイマセン・・・)

我々人材ビジネスに共通することだが、
ここ10~15年はジェットコースターに乗るような経営。
先日も某P社の某K社長と飲みながら話していたが、
ここ10年で大きなカーブを繰り返してきた。
そんな意味ではディップさんも同様。
Yahooとの提携話打ち切りも含め、修羅場を潜ってきたから今があるのだろう。

勉強会のほとんどの参加者がキーワードとして挙げていたのが、
「営業は生きる上で武器になる」という言葉。
自分とダブらせる面があったのかもしれない。
ある意味、困難を超える経験はここに存在するのだろう。
企業として見習わねばならない点は多い。

そして、各個人が人間力を高めること。
無形サービスを扱う我々は特にそうだろう。

多分、自分では本書を選ぶことはなかったと思う。
いい機会を頂きました。
感謝!

若者わからん!

「ゆとり世代」「さとり世代」「つくし世代」の違いについて
講演ネタとして、使ったりする。
本書を読むと、もうそれだけで若者を語るのは難しくなった。

一般的に今の若者は「ミレニアル世代」
もっと年齢を限定し、この春から社会人になった世代を「スーパーゆとり世代」という。
この世代の特徴を知り、今の就職戦線に絡ませ話をするのは格好の講演ネタにはなる。

その点で本書の存在はありがたい。
他人の褌を利用するのが得意な僕としては(笑)、
その発行元を提示しながら全体の流れを説明すると結構ウケる。
ただ本書を紹介し喜んでいる場合ではないというのが真実。
正直、ちょっと怖くなってしまったのだ。

著者は最近TVでの露出も多い博報堂の原田曜平氏。
若者研究の第一人者であり、優れたマーケッター。
そんな方が苦労しながら付き合う若者について、自らの経験も併せ若者像を語る。
その現実に怖さを感じるのだ。

最近、若者は「チル(Chill)」という言葉をよく使うようだ。
元々はHIPHOP用語らしいが、「まったりする」「のんびりする」という意味らしい。
これが今どきの若者の象徴的な言葉。

そんな中、求められるのが「横から目線」
企業内の上司部下の関係でいえば、どうしても「上から目線」になりがちだし、
「今どきの若者は~」と説教口調になりがち。
以前からそれが通用しないことは言われていたが、本書を読むとそれが加速している。
迎合するとか、しないとかではなく、
この世代の価値観をグッとこらえて理解しないと何事も進まなくなる。
それが「横から目線」なのだ。

本書でも頻繁に出てくるのが採用や入社してから接し方。
特に超売り手市場と言われる近年では、その理解があるかないかで戦略も大いに異なる。
どこまで落とし込むかは別にしても、
理解した上で採用手法も変えなければならない。
僕が度々話させてもらうイマドキの若者像も軌道修正が求められるわけだ。
常に勉強が求められますね(笑)。

ミレニアル世代に接する時の基本姿勢は「おひたし」
分からない方は僕に聞くか、本書を読んでもらいたい。
唸りながらも頷くしかないだろう(笑)。

20代に伝えたい50のこと

僕の周りには優秀な人が多い。
そんな方と接するとつくづく自分の能力のなさに辟易してしまう。
それは著者の秋元祥治さんに対してもそう。
しかし、そんなことを言ってしまえば、
それはただの言い訳だと彼にバッサリと切られてしまうだろう。

秋元さんはNPO法人G-netの創業者で長年代表理事を務められてきた。
僕は8年ほど前にご縁を頂き、ちょくちょくと付き合いをさせて頂くことになった。
「UIJターン人材拠点事業」では名大社もアライアンスを組み一緒に活動。
学ぶことも多く、その優秀さを間近で見ていた。

そんな秋元氏の著書を今回、若手勉強会の課題図書として活用。
一昨日、コジカグループの勉強会で本書をテーマにディスカッションを行った。
結論から言えば、参加するメンバーが自らを振り返り行動することを決意し終了した。

この勉強会では課題図書の中から自分に響いたキーワードを10個発表。
その理由について共有し合う。
そして、最後にはここから学んだことをどう生かすかをゴールとして設定する。

各個人の課題感で選択されるキーワードは異なるが、一定数はダブることにはなる。
今回でいえば、
絶対解より納得解
感想と学びは違う
アウトプットは最大のインプット
空の上からの僕の視点
結果と思っているものも長い時間で捉えれば経過
忙しい時ほどパスを回し、ボールを持つな

などなど。

それぞれの言葉が若手メンバーに響いたようだ。
うちの若手が秋元さんと直接接したことはあまりないが、
こうしたロールモデルが近い存在にあるのは嬉しいこと。
「お前がなれよ!」と言われるかもしれないが、
できるだけ優秀な人から学んだ方がいいには決まっている(笑)。

僕も若手勉強会の課題図書は必ず読むようにしている。
その中には改めて気づきを与えてくれるケースも多い。
若手に学ばすだけではなく、僕自身も学んでいるのだ。
20代はとっくの昔の50代のオッサンだが、忘れてならないことは多かった。

人の才能を羨んでいても仕方ない。
言い訳しないようにしないとね(笑)。

映画「空飛ぶタイヤ」

まず言っておこう。
組織に属する者、中小企業の経営者は観るべき一本。

日本映画強化月間なので、映評ブログが続く。
体をゾクゾクさせながら観た映画で、確かに面白いし感情移入するシーンも多い。
自分だったらどう判断するだろうなんて、映画と一体ともなっていた。

しかし、あれだけの超大作(上下巻併せて900ページ)を2時間で
まとめてしまうのはかなり無理がある。

5年前に読んだ小説のブログはこちら
かなり感動した記憶はある。
細かいところは既に忘れているが、
映画の表現だけでは物足りないのも事実。
せっかくだったら一昨年の64(ロクヨン)のように
前篇、後篇と分けても良かったんじゃないだろうか。
その方が感動も数倍増したと思う。

そう考えると池井戸作品は映画よりも
むしろTVドラマの方が向いているのかもしれない。
「下町ロケット」にしても「陸王」にしても毎回目をウルウルさせながら見ていた。
少々引っ張られた感はあるが、日曜の夜は感動に浸っていた。

本作は人間ドラマの特有な泥臭さはあるものの、
エンターテインメント性の強い娯楽作品にまとめあげた感じ。
それはそれで悪くはないが、もっともっと泥臭くてもよかった。

池井戸作品は大企業の組織が腐っているケースが多いが、
現実問題としてどうなんだろうか。
中小企業しか知らない身としてはあり得ない人事であり、
派閥であり、ヒエラルキーだが、まだまだあんな役員が暗躍しているのだろうか。

それにしても岸部一徳さんのああいった役って、なんで見事にハマるのだろうか。
笑ってしまうくらいお見事だ。
あとは奥さん役の深キョン。
「頼りにしてますよ。社長さん!」と言われたら、
どんなに落ち込んでいても頑張っちゃうだろうなあ~(笑)。

「万引き家族」のように映画を観て考え込んでしまうのも大事だが、
映画を観て前向きになるのも大事。
僕は企業のトップとしてまだまだだと実感。
もっと熱くならないとね・・・。

「空飛ぶタイヤ」は以前WOWOWでも制作され、Amazonプライムでも視聴は可能。
今度、比べて観ることにしよう。

映画「万引き家族」

カンヌ国際映画祭パルムドール受賞というのは相当なインパクトなのか。
公開間もない時にミッドランドスクエアシネマの予約画面を開いたところ、ほぼ満席。
普段ではあまり見かけることのない埋まり具合。
その日は諦め別日で観ることにした。
いろんな意味で関心の高い作品なんだろう。

とても残酷な映画。
それが映画を観終わった僕の率直な感想。
しかし、見方を変えればシアワセな映画とも言えなくはない。
ちりじりになっているはずの個人個人が一定の期間だけでも家族の絆を経験し、
それにより深い満足感を得られているのだから・・・。

だが、それも虚構の世界。
5歳の子供でさえ、永遠には続かないとは理解している。
それは言葉ではなく空気。
醸し出す温かい空気や冷たい空気が違和感を生み出し、
やすらぎが嘘であると肌で感じるのだろう。

だから、残酷なのだ。
この映画の捉え方はいくつかあると思う。
今の社会の闇をあぶりだしている、
軽薄な家族関係の裏返し、
表面的な意思疎通とその信頼感・・・。
あまりいい表現はできないが、
是枝監督はそんなことも言いたっかたのではないか?

だが、是枝監督は答えを言わない。
答えは常に観る者に求められている。
本作に限らず、前作の「三度目の殺人」も前々作の「海よりもまだ深く」もそう。
そして、対象は全て家族。
家族の在り方、それを取り巻く社会の在り方に
答えを求めているような気がしてならない。

僕は偽装家族でもないし、それなりに教育もし親としての責任も果たしてはいるが、
この映画のテーマである絆を問われると少々困る。
反省すべき点は多い。

愛情なんて点数をつけるものではないので気にする必要はないのだが、
どれだけ点数を上げられるというのか・・・。
自分とは無縁の世界と思いながらも、
客観視できない人は多いんじゃないだろうか。
余計に残酷さを感じるのかも・・・。

ここに登場する役者さんは見事。
子供たちもそうだし、最初違和感のあった松岡茉優さんもそう。
僕の中でちょっとズレたのが緒形直人さん。
あんなに下手な役者だったけ?と思ってしまう。
それは他の役者が素晴らしすぎたから、
そんな風に思ってしまったのかもしれないけど。

そして、安藤サクラさんの流す涙は何を意味するのだろうか。
世の中は偏見に満ち溢れている。
偏見に打ち克つには強靭な精神力だけでなく、
言葉とスキルも持たねばならない。
あの涙に圧されながら、持つべき力を問うたのだった。

パルムドール受賞、おめでとうございます。

プラットフォーム革命

多分、僕の能力がイマイチなんだと思う。
最近、紙の書籍から電子書籍へと意図的にシフトし積極的に読んでいる。
電車の中ではタブレットを縦にし、
いかにもデキるビジネスマンを演出しカッコつけながら読んでいる。

しかし、残念なことに思うように頭に入っていかない。
真剣に読んでいるつもりでも、
サ~ッと画面が流れていく感覚でどうも頭からもすり抜けていく。
やはり僕の能力がイマイチなんだろう。
本書もそんな状態で読んだ1冊だった。

確かにここに書かれていることは納得感は強い。
今、自分の生活も知らず知らずのうちにプラットフォームに巻き込まれ、
すっかりそこがビジネスの中心といっていい。

新しいビジネスモデルがプラットホーム。
そのプラットホームとは相互に依存する複数のグループを結びつけ、
すべてのグループが恩恵を得られるようにビジネスのこと。
Amazonなんてその典型。
代表格ではあるが各業界ともそこで先行する企業が業界を覆し、
いつの間にかリーダーシップを発揮している。
何十年もかけて作ってきたビジネスモデルもいとも簡単に崩されていく。

何十年を掛けなくてもそうだ。
SNSはfacebookが最初ではない。
先行する企業が存在したし、そちらの方が規模の経済が利く立場にもあった。
しかし、簡単にfacebookが打ち破る。

今や何かと話題のマーク・ザッカーバーグ氏は、こんなことを言っている。
「重要なのは、あれこれ付け加えるのではない。そぎ落とすことだ。」
日本の家電メーカーも同じようなもんだろう。

それはもしかしたら自社のことも言えるのかもしれない。
あれもこれもとサービス分野を増やすことで、
なんら特徴の見出せない会社になってしまう。
あり得る話だ。

しかし、プラットホームである以上、結びつきは必要。
付け加えることと結びつきは近いようで遠い。
なんてことを考えながら読んでいるのだが、
もっと肝心なことがあるようでそれが頭に入っていかない。
僕の生活もfacebookやAmazonが欠かすことができなくなった今、
現実の中で学んでいくしかないのかも・・・。

課題図書が多すぎてついていくのもやっとこさだが、続けることに意味があるとも思いたい。
そのうち電子書籍も頭に入ってくるのかな(笑)。

映画「Vision」

今月は日本映画強化月間。
どれだけ時間を許すかわからないが、観たい日本映画が多い。
本作以外にも「万引き家族」「空飛ぶタイヤ」は必見。

仕事をサボってでも観たい。
いや、表現がよくない。
時間を上手く調整して観たい。
映画コラムニストとして活躍できそうな予感・・・。

それはさておき本作。
何とも不思議な映画だった。
河瀨直美監督は僕は決して得意な監督ではないが、
なぜが最近の「あん」も「光」も観ている。
なぜか惹きつけられる。
嫁さんと同じ名前であるのは全く関係はない。
通販生活のCMも関係ない。
(通販生活のCMはあえて公開に合わせたのかな・・・笑)

いかん、いかん、作品とは全然関係ない方向に向かってしまった。
本作はフランスとの合作。
神秘的な映像美は芸術性の高いフランス映画には受け入れやすそうだし、
河瀨監督の独特のカメラワークも同様。
SFXを駆使した作品との真逆の演出に感動を覚える人も多いだろう。

それが必要以上に映画を難解な方向へ誘っているような気もするし、
謎が謎を生む要素となっているのだろう。

だから、単純な三代目 J Soul Brothersファンは観ない方がいい。
本作が面白いとは感じないだろう。
むしろ酷評する作品になってしまうのでは?
と余計な気を遣ってしまう。

エグゼクティブプロデューサーがEXILE HIROさんであるのに
違和感を覚えるのは僕だけだろうか。
この2人の関係性や作品に対してのこだわりを知らないので、
偏った見方は間違っているとは承知しているが、
自らの世界を貫く監督と商業ベースで最も成功している社長とはなかなか結び付かない。
そこも含めとても不思議な映画。

個人的にいえば、すっかり河瀨ファミリーとなった永瀬正敏くんと
フランスの名女優ジュリエット・ビノシュさんの絡みがいい。
なんとも大人の色気を感じさせる。
50歳を過ぎようが関係ないわけね(笑)。

いつものように映画の中身はまるで分からないブログになってしまった。
ただ言えるのは日本の風景は素晴らしい。
それを確認するだけでも観る価値があるのは間違いない。

映画「蚤とり侍」

少し前に映画館で観た作品。
思い切った言い方をすれば単なるエロ映画といっても叱られないだろう。
もちろん成人映画に比べればそのシーンは限定的だが、
主要なシーンでまあまあ描かれている。
暴力的なシーンがあるわけではないので、R15は妥当だろう。

寺島しのぶさんや飛鳥凛さんのファンは喜ぶかもしれないが、
付合い始めたばかりのカップルにはおススメしない。
いや、いい勉強になるのかな(笑)。

しかし、大真面目に絡みのシーンを演じる阿部寛さんや豊川悦司さんは
役者魂といえるのだろう。
いや、これも単に楽しみながら演じていたのかな・・・。

簡単に言ってしまえばそんな映画。
それほど多くのことを書ける映画ではないというのが本作の感想。
それでは映画コラムニストとして失格だし、
つまらない映画と受け取られると配給会社からお叱りを受けるので、
もう少しフォローしておこう。

この類の映画って、ありそうでない。
コメディ映画ではあるが、
きちんとした歴史背景のもとに語られる作品って意外と少ないと思う。
それもガキを対象とした作品ではなく大人を対象とした作品は少ない。
少しの詫び寂びを感じさせながら・・・。
そんな意味では江戸時代の中期は描きやすいのかもしれない。

映画にはいろんな楽しみ方がある。
意味が深すぎて難解な作品を楽しみたい場合もあれば、
うつ映画で落ち込みたい時もあれば、
ド派手なアクションでスッキリしたい時とさまざま。

多くのシチュエーションがある中で、本作は何も考えず、
単純にいい気分になりたいと思う時には最適。
心地よい時間を過ごすことができる。
そこには日本を代表する俳優陣が登場して・・・。
そんな映画だった。

ブログは相変わらず意味不明だが、これでも頑張って書いたほう(笑)。
たまにはこんな映画もいいでしょう。

映画「孤狼の血」

前回の映評ブログに続き、白石監督作品。
本作も「うつ映画」かと思ったが、
「凶悪」「日本一悪い奴ら」に比べれば救いようがあった(笑)。

それでも終始、ブルーな気持ちになる映画であるのは間違いない。
きっとこの監督の魅力はそこにあり、
そこを徹底的につぶしていくのが彼の得意技なんだろう。

本作はフィクションだが、警察の暗部を描いている。
白石監督は警察に敵対心でも抱いているのだろうかと心配になる。
なにかイヤな過去でもあるのかな?(笑)。

本作は東映の配給。
スタートは当然のように荒波に東映のロゴマークが登場する。
それは見慣れたシーン。
しかし、今回はそれがやたら古臭く感じた。

後から思ったのだが、それは東映の仁侠映画へのオマージュではないだろうか。
映画の舞台は広島の架空都市。
「仁義なき戦い」の延長線上とも捉えることは可能。
登場人物の広島弁を聞くうちにそんな心境になってきた。

僕は単純なバイオレンスには興味はない。
無意味に殺し合う映画も好きではない。
だけど、なぜかこの類の映画は観てしまう。
大きく捉えれば同じジャンルであるから、
暴力映画が嫌いは人には理解されないはず。

本作でもグロテスクなシーンはいくつもアップされるので目を覆いたくなる。
それでもつい惹き込まれてしまう。
それは変態的な趣味があるわけではなく、
その裏側にある人間関係に引っ張られるから。
北野武映画に近いといえば少しは理解してもらえるかな?(笑)

この映画もやくざ映画に相応しい役者がオンパレードに出演している。
石橋蓮司さんや伊吹吾郎さんの親分は欠かせない。
最近、ピエール瀧はすっかりはまり役。
白石作品には欠かせない役者ではなかろうか。

そんな点でいえば、九十九一もそう。
(ツクモハジメ、覚えている人いるかな?)
端役ではあるが、本作でも「凶悪」でも印象を残していた。

九十九一といえば僕が中学生の時に「お笑いスター誕生」でグランプリを獲得した。
その当時、彼は岐阜放送の深夜のラジオ番組で喋っていた。
僕は受験生で勉強しながら聞いていたが、メチャクチャ面白かった。
多分、勉強は頭に入っていなかったと思う。
彼がグランプリを獲得し岐阜放送の番組を辞めることとなり、
最終回で泣きながら話しているのをオンエアで聞いていた。
嬉しいようで悲しかったことを今でも覚えている。
いかん、全然違う方向に向かってしまった・・・。

この作品は役所広司と松坂桃李のためにあるといっていい。
この2人の関係性で映画が構成される。
それに周りの連中が上手く絡んでいく。
どんどん壊れていく姿もたまらない。
それは誰かは映画を観てもらえればと思う。

しばらく白石作品からは目が離せない。
そんなことを感じさせた映画だった。

映画「凶悪」にまつわること

先日、ある飲み会で美しい女性と一緒になった。
いろんな話をしているうちに映画の話題に・・・。
「山田さんの最近、よかった映画は何ですか?」
「そうだなあ、『ペンタゴン・ペーパーズ』と『ウィンストン・チャーチル』かな。」
気取りながら映画コラムニストぶって語ってみた。

「洋画の方が好きなんですか?」
「本当は日本映画の方が好きなんだよね。」
ここも気取って映画コラムニストらしく答えてみた。

「私も日本映画が好きで、うつ映画が特に好きなんですよ。」
「うつ映画?」
初めて聞く言葉だった。

「重くて暗くて鬱になってしまうよな映画です。」
「へ~、『愚行録』みたいな?」
「そうです、そうです。そういう映画が大好きなんです。
中でも『鬼畜』が一番好きです。」
「うわ~、すごいね・・・。」
と素晴らしいセンスの持ち主とそんな会話が続いた。

「『日本で一番悪い奴ら』は観た?」
「観ました、観ました。山田さん、だったら『凶悪』は観ましたか?」
「いや、Amazonプライムのウオッチリストには入ってるんだけどね。」
「白石監督なら、こっちの方が救いようがなくて断然いいですよ。」
かなり映画通の美しい女性は力強く語った。
本当にどうしようもない映画が好きなようだ。

そんな会話がいいきっかけとなり、先日、ようやく観たのが「凶悪」。
いやあ~、救いようのない映画である。
実話を基に製作されているのは、白石監督の得意とするところか。

主役の山田孝之氏はいろんな作品で個性的な役柄を演じているが、
本作ではまともに見てて仕方ない。
よくよく見ればまともではないのだが、
他の出演者が異常すぎてまともに見えてしまう。

リリーフランキーとピエール瀧。
この2人は今は普通に役者として多くの作品に出演しているが、
元々はイラストレーターやミュージシャン。
上手すぎるというか変態的すぎる。

特にリリーフランキーのあの不気味な笑みは突出している。
「探偵はBARにいる3」も「美しい星」も「SCOOP!」もいやらしさが目立っていたが、
この作品はさらに際立つ。
彼は天才だな・・・。
そして、救いようのないかたちで映画は終わる。

映画の中身には全く触れていないような気もするが、
たまにはこんな気分の悪い映画もいい。
僕たちはシアワセな人生を生きていると実感できるのだから。