本作は2023年、ウクライナ軍第3強襲旅団の小隊が敢行した、
ロシア軍占領下の戦地・アンドリーウカ村の奪還作戦を記録したドキュメンタリー。
過度な演出もフィクションの台本も存在しない。
カメラが映し出すのは、泥と硝煙に塗れた「現実の最前線」そのもの。
観終わって、感じたこと。
「全く意味がない・・・」
そこには壮大な大義名分も、胸を打つ英勇伝もない。
繰り広げられるのは陣地を奪い返し、あるいは奪い取るために、
目の前の敵をただ殺していくという泥臭い行為の連続。
兵士たちの心に何か大きな希望があるわけではない。
「やらなければ、自分がやられる」
ただそれだけの理由で、彼らは相手に向かって引き金を引くしかない。
ある兵士への濠の中でのインタビュー。
その兵士は自分を心配している奥さんが心配だという。
子どものために働き苦労をしている。
そんな状況なのに自分のことを心配してくれている。
無事に帰ってきてといわれるが、帰ることはできないと兵士は語る。
虚しい・・・。
大切なのは、そして想うのは目の前の土地ではなく家族。
劇中には最新鋭のドローンが飛び交う。
情報戦や上空からの視点など一見すればハイテク化されているが、
地上に目を移せばやっていることは原始時代と何一つ変わりがない。
テクノロジーがどれだけ進化しようとも、
人間の戦場での行動は数千年前から1ミリも進化していない。
残酷な現実を見せつけられる。
本作は第41回サンダンス映画祭のワールドシネマ・ドキュメンタリー部門にて監督賞を受賞。
感情移入を無理に誘うような演出を削ぎ落とし、
最前線の冷酷な空気感をそのまま差し出したその手腕が高く評価されたのだろう。
当たり前だがエンターテインメント性は一切ない。
観ていて辛いだけ。
わざわざお金を払って観る必要があるのか。
今、起きている現実を知り、戦争の根本的な無意味さを噛み締めるにはいいだろう。
ただ本作を観る多くの人は観るまでもなく無意味さを理解している。
観るべきはそれを理解していない指導者らだと思うけどね。


