これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

憧れを超えた侍たち 世界一への記録

映画館で観たかったが、タイミングが合わず見逃した作品。
嬉しいことにAmazonプライムで公開されたので、早々に観ることができた。
素直に感動。
スポーツの醍醐味を味わうことができた今回のWBC。

最近、野球を見ることは少なかった。
地元ドラゴンズの不甲斐なさもあるが、野球場に行くことも、TV観戦もない。
せいぜいスポーツニュースを見て、落胆する程度。
自分の中で盛り上がりはなかった。

しかし、このWBCは違った。
日を追うごとにゾクゾク、ワクワクしていい緊張感が体を覆った。
ほとんど見ることのなかった中継も、
時間の都合がつけばスマホなど横道に逸れることなく集中した。

負けたらその場で終了のトーナメントは面白い。
誰しもそうだと思うが、二転三転した準決勝は抜群に面白かった。
何度も見ている映像も飽きることはない。
その度に感動してしまう自分の単純さを嘆きながらも、喜んでしまう。
もちろん決勝も・・・。

それをまとめ上げた今回のドキュメンタリー。
栗山監督の発言や行動を中心にチーム作りが明らかになっていく。
野球ファンだけでなく、経営陣やリーダーも見た方がいいんだろうね。

選手の心模様も人間ぽっくていい。
佐々木投手は20歳そこそこ。
息子と同い年なので、いくら立派に見えても精神的な幼さは残る。
それが却って清々しい。

不振の村上選手も同様。
僕らは無責任に勝手なことをいうが、そのプレッシャーは本人しか分からない。
無責任な僕らが同じ立場なら一瞬にして消え去っていた。
スーパースターだって人間なんだ。
大谷翔平は違うかもしれないけど(笑)。

その人間らしさを感じることができたのもこのドキュメンタリー。
同じプロ同士でも若手はダルビッシュに緊張するし、
大勢のファンが囲む姿を選手はバスから撮影するし。
バッテリーの何気ない会話も普段の番組では見ることができない。

栗山監督はこれで無職というが、講演なんかは引っ張りだこだろう。
そうそう、一昨日、北海道で開催された全就研の講演も栗山監督。
本来、僕は参加予定だったが、大学の授業があり参加できず。
参加したFネットのメンバーが羨ましくて仕方ない。

すこぶる野球ファンじゃなくても感動を与えてもらったWBC。
このドキュメンタリーも見て損はないね。

以上、北海道からでした(笑)。

映画「リバー、流れないでよ」

面白い。
何度もクスクスと笑ってしまった。
そして途中からはウルっときたり。

ゲラゲラ笑ったり、感動して涙を流す映画ではない。
しかし、とても心地いい時間を送ることができた。

内容は全く違うが、近い作品でいえば5年前の「カメラを止めるな」
映画はアイデア勝負であることを教えてくれる。
きっと予算はない。
いや間違いなく使えるお金は少ない低予算映画。

知っている俳優は本上まなみと近藤芳正くらい。
ほぼ知らない俳優陣が映画内を駆け巡る。
それもそのはず。
メインは劇団「ヨーロッパ企画」の俳優陣。
人気のある劇団のようだが、
僕は劇団を主宰する上田誠も劇団名も初めて知った。

同時に機会があれば観たいとも思った。
奇想天外な演出で観客を喜ばすのだろう。
映画の内容から容易に想像できる。

その劇団の俳優陣が素晴らしい。
主役ミコト役の藤谷理子はとてもチャーミング。
彼女の動きを見ているだけで画面に吸い込まれていく。

映画の舞台は京都の貴船。
昨年お邪魔した場所が全面的なロケ地。
実在する老舗料理旅館「ふじや」で繰り広げられる。
雰囲気もよさよう。
誰が川床に連れてってくれないかな・・・。
とどうでもいいことも強烈に感じたり。

本作はそれほど大きな話題にはなっていない。
しかし、レビューを読むととても評判がいい。

解説には
「冬の京都・貴船を舞台に繰り返す2分間のタイムループから
抜け出せなくなった人々の混乱を描いた群像コメディ」

と紹介されているが、これでは何のことか分からない。

その方がいい。
ネタバレは面白さは半減させる。
ただこれをネタバレさせるのはとても難しい。
かなりの表現力が求められる。

だから僕はネタバレしない。
映画を観て、
「なるほど、2分間のタイムループって、こういうことなのね」
と感心してもらえばいい。
確かに納得してしまう。

映画はお金をかけなくてもいくらでも面白い作品はできる。
それを改めて教えてもらった。
こんな作品を多くの方に観てもらい、
新たな才能が注目され活躍の場が広がることを願いたい。

映画「To Leslie トゥ・レスリー」

どん底まで堕ちたシングルマザーの再生物語。
この類の映画は数多く存在すると思う。
どん底への堕ち方も様々だが、凡人から見ればあり得ないどうしようもなさ。

同情すること点なんて一つもない。
共感することもなければ、腹立たしくなるだけのこと。
不快な気持ちも持ちながら、映画は進んでいく。

しかし、どこかで少し願っている面もある。
なんとか立ち直ってほしい。
このままアル中女で終わらないでほしい、と。

全く共感できず腹立たしいだけの女性が、
もがきながらも立ち直る姿を見せるとなぜか素直に嬉しくなる。
よかった、よかったと自分事のように喜んでしまう。

実に不思議。
どんなキッカケがあるかは別に人が堕ちるのは難しくない。
主人公のようにアル中になってしまえばいとも簡単。
僕だって大した努力もしなくても、堕ちることは可能。

しかし、そこから這い上がるのは難しい。
何度も同じ過ちを繰り返し、反省はするが結局は戻ることはない。
だから堕ちない努力をするしかない。
堕ちたら二度と戻れないと思いながら・・・。

ついて回るのは他責。
どんな場合もそう。
自責であればもっと早く立ち直っていたと思うが、悪いのは自分じゃないと考える。
映画は間接的にそれを教えてくれる。

アル中のシングルマザーは醜いだけ。
だが、そこから脱したシングルマザーはとても可愛らしい。
人なんて分かりやすい存在なんだ。

それを見事に演じたのがアンドレア・ライズボロー。
彼女の演技が凄い。
半端ないダメさは演技とは思えない。
彼女の表情や発言に振り回されながら、気づいた時には応援している。
心の中で「ガンバレ!」と呟く。
そんなオッサンは多いんじゃないかな。

彼女がアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたのも頷ける。
とても42歳とは思えない。
自分と同世代かと思ってしまった。
ラストは10歳以上若返った気がしたけど。

どんな場合でも勘違いしちゃいけない。
身の丈を理解しなきゃいけない。
そんなことを教えてくれた映画。

まずはお酒をほどほどにしないと、僕も同じ運命を辿ってしまうかも。
いい勉強になりました。

キネマ旬報95回全史 最終回

前回の続きで、2人の映画監督の作品から・・・。

是枝作品は「そして父になる」(13年6位)、「海街diary」(15年4位)、
「三度目の殺人」(17年8位)、「万引き家族」(18年1位)。
濱口作品は「ハッピーアワー」(15年3位)「寝ても覚めても」(18年4位)、
「ドライブ・マイ・カー」(21年1位)、「偶然と想像」(21年3位)。
リンクの通り、観ていない作品は少ない。

他にも10年代は西川美和、河瀬直美ら女性監督や
石井裕也、白石和彌ら個性的な監督の活躍が目立った。
個人的には白石和彌監督作品にやられた。
あれこれ書きたいが、作品名は割愛。

外国映画に目を向けるとやはりクリントイーストウッド。
「インビクタス」(10年2位)、「ヒアアフター」(11年8位)、「J・エドガー」(12年9位)、
「ジャージー・ボーイズ」(14年1位)、「アメリカン・スナイパー」(15年2位)、
「ハドソン川の奇跡」(16年1位)、「15時17分、パリ行き」(18年6位)、
「運び屋」(19年4位)とすさまじい。

ランクインしていない作品を探す方が難しい。
このジイさん、どこまでやるの?
と思ってしまう。

そして韓国作品。
「息もできない」(10年1位)、「パラサイト半地下の家族」(20年1位)、
「はちどり」(20年2位)も強烈なインパクト。

韓国映画に限らず社会的格差、分断を描いた外国映画が評価されたのもこの年代の特徴。
映画は時代を映す鏡でもあるね。
そう考えると僕は仕事としてこれからも寄り添っていかねばならない。

WHY?
まあ特に理由はないけど・・・。

時間を掛けてこの1冊を読み終えた。
その都度、作品を調べたり、昔のブログをチェックしたり。
自分としてもいい振り返りができた。

まだ観ていない名作、秀作も多い。
知らない作品は数知れず。
じっくり時間を掛けて向き合いたいが、
どうしても上映中の映画を優先するので、そのあたりは当面先。
老後の楽しみか・・・。

このシリーズは自分のために書いたブログなので、
読んでもらっても面白くもないと思うが、これはこれで・・・。

今日で本当に終了。
お疲れ様でした。
(自分に)

映画「お葬式」

つい最近、リバイバル上映で鑑賞。
(といっても1ヶ月前)
「午前十時の映画祭」で伊丹作品が特集されていた。
普段であれば素通りしそうだが、
「キネマ旬報95回全史 パート6」で伊丹十三監督にも触れた。

これも何かのご縁。
そう思い、ミッドランドスクエアシネマにわざわざ観に行った。
というのも伊丹作品はアマゾンプライムビデオやNetflixでは観ることができない。
有料版でも観れないため、この上映は数少ない貴重な機会。

僕が最初に観たのは多分、大学生の頃。
どこで観たのかさえはっきりと覚えていない。
封切り時は受験生。
観る余裕はなかったと思う。

多分、伊丹特集か何かでその時もリバイバル上映じゃないかな。
もう30年以上前のこと。
オープニングシーンもエンディングシーンも忘れていた。

ある強烈なシーンのみ頭の中に刻み込まれていた。
刺激的だった。
全体像は覚えているものの細かなシーンはほぼ記憶にないのが、正直なところ。

初めて観た時、宮本信子はただのオバサンにしか思わなかったが、
今見るとチャーミングな女性に見える。
これも僕が年齢を重ねた証拠。
山崎努もまだ40代。
今の僕よりも若いが、それもなぜか違和感に感じてしまう。

本作が各映画賞を総なめにして、伊丹監督はヒットメーカーになっていく。
当時ではリスキーなタイトルや独特のカメラワークは冒険的。
結果的にプラスの評価をされ、
その後、大きな影響を与えている。

しかし、万が一、失敗していれば、伊丹作品は一本で終わった可能性もある。
その場合、今も健在の可能性は高い。
世に発信する力は偶然性も強い。
その結果、人生も左右してしまう。
そんなどうでもいいことも考えてしまった。

お葬式が悲しい儀式ではなく、ぬくもりがあって幸せを共有する儀式
という価値観を与えてくれたのも本作。
なんとも言えない温かさと笑いが周りを包み込んでいった。

当たり前だが、本作はかつての名優が多く出演している。
今も活躍している役者の方が少ない。
笠智衆、菅井きん、大滝秀治、奥村公延等々。
津川雅彦や加藤善博はその後、伊丹監督の常連になっていった。
加藤善博は脇役でしかないが、独特の存在感を出していたのだろう。
とても懐かしい。

こんな作品を観ると当時の自分を思い出す。
これも映画が教えてくれる大切なこと。
これからも80年代の作品には触れていきたい。

偶然の機会に感謝!

キネマ旬報95回全史 最終回その前

ちょこまかと書いてきたベストテン95回全史だが、ようやく最終回。
1冊の書籍で9本のブログを書いたことになる。
なんというお値打ちさ。

最後は2010年から21年まで。
会社的には社長になったことで多忙にはなったが、時間の自由度が増した。
また、子供たちも親の手から離れ、家人にも愛想をつかされ、
(違うと信じたい・・・)
一人の時間も持てるようになった。

これまで観た映画は日記で少し触れていたが、
ブログもスタートしたので備忘録的に押さえるようになった。
映画コラムニストへの道を徐々に歩い始めた。

そうはいっても10年代前半はさほど映画館で観ていない。
15年が19本、16年が29本、17年が26本、18年が30本、19年が31本、
20年が28本(4月5月はゼロ)、21年が50本、22年が51本と少しずつ増えている。

本業が変わりつつあるのを理解してもらえるだろう。
ちなみに23年が6月28日現在で41本。
昨年をはるかに上回るペース。

映画コラムニスト仲間に負けないように切磋琢磨。
そう解釈してほしい。

以前はベストテン発表後にDVDやネット配信でランクイン作品を観る機会が多かったが、
最近は自分なりの予測がベストテンに反映されるようになった。
これはこれで楽しい。

コロナによって外出や飲み会が減った分、映画の本数が増えたのは事実。
ただ、今、考えても非常事態宣言期間の映画館の休館はどうかと思う。
人と話をしない安全な場所なのに休館を余儀なくされた。

閉館に追い込まれた映画館や経営状態が悪化した映画館も多い。
なんとも寂しい話。

2020年の年間興行収入は1432億8500万円と2000年以降では最低数字。
「鬼滅の刃無限列車編」が404億円と歴代1位の興行収入になったにも関わらず。
文化的には後退した。

誰を責めるわけではないが、映画業界に与えた打撃は大きい。
もちろん名大社も痛い目に合ったが・・・。

この10年ちょっとの特徴は日本でいえば世界的に注目される監督が増えた。
是枝裕和監督と濱口竜介監督がその象徴。

すいません。
最終回といったが、まだ終わらない。
もう少し書きたいので、次週へ続く。

映画「青いカフタンの仕立て屋」

観終わった後、ジーンとした時間を過ごす。
この何ともいえない愛おしさ、せつなさ、優しさ。
そんな感情が体を覆った。

立場も環境も一致する点はひとつもないが、
こんな夫婦のようになれたのならきっと幸せな生涯。
そんなことを思わせてくれた。

静かに流れる時間は心地いいが、お互いを想う気持ちは辛い。
それが痛いほど押し寄せる。
騒がしい若者の恋愛ではなく、理解し合った大人の恋愛。
いや、恋愛という言葉が軽く聞こえてしまう。

それに代わる言葉が見つからない。
長年培った信頼感に基づいた愛情。
それも適切な表現とは言い難いが、そんなようなもの。
映画を観た方なら理解してくれるだろう。

本作はモロッコ映画。
フランス・モロッコ・ベルギー・デンマーク合作ではあるが、舞台はモロッコ。
モロッコ作品は初めて観たんじゃないのかな。

昨年のカンヌ国際映画祭に出品され、
国際映画批評家連盟賞を受賞しているが事前情報はゼロ。
ジャストタイミングで観たに過ぎない。

いろんな意味でこの作品を観れたことに感謝。
まずは舞台となるモロッコ。
昨年のW杯ベスト4という知識しか持ち合わせず、どんな文化なのかも知らず。
伝統的な民族衣装カフタンを通して、その文化や街並みを知ることができた。

時代設定はいつだろう。
現代ともいえるし、20~30年前ともいえる。
スマホもPCも登場しない。
僕とほぼ同世代の夫婦は仕立て屋を営みながら、慎ましく暮らす。
決して裕福ではないがお互いの愛情に包まれた生活。

しかし、いくつかの問題を抱えている。
ネタバレになるので言いたい気持ちは抑えるが、その問題に寄り添いながら生きている。
感情に揺さぶられることはなく、静かに向き合う。

それが悲しくも美しい。
男性らしい寡黙さと女性らしい気遣いがお互いを支える要因。
理想的な夫婦像。
乗り越えるハードルを乗り越えない。
受け止めてハードルと共に歩んでいく。
そんな気がしてならない。

タイトルにある「青いカフタン」。
とても美しい。
それを妥協せず丁寧に仕上げる仕上げる職人芸。
これも美しい。

ラストシーンも感動的。
本作は同年代の方に観てもらいたい。
ある程度、人生を過ごしてきたからこそ感じるものがある。

まだまだ知らない世界は多い。
映画を通して国や文化や人間の価値を学ぶことはできる。
観終わった後の余韻を楽しめる作品でもあった。

キネマ旬報95回全史 パート8

3週間ぶりの投稿になってしまった。

ようやく本書のブログも2000年代に入った。
記憶に新しい映画が多いはずだが、そうでもない。
2000年代を振り返ってみると映画を観た本数は90年代より少ない。

特に前半は語れるほど映画を観ていない。
仕事が忙しくなり、子供も小さかったため、
ほとんど自分の時間を確保できなかった。
90年代後半から続いているね・・・。

映画館で記憶があるのは「千と千尋の神隠し」(01年3位)。
本作は日本における映画史上すべての記録を塗り替えた。
興行収入は304億円と数年前までトップ。
作品を配給した東宝の興行収入の半分以上を1本で稼いだ。
東映と松竹に至ってはその年の年間興行収入のすべてを足しても追いつかなかった。

さすがに僕も満員の映画館で観た。
当時、幼い娘と一緒に観たのだが、カオナシが怖くてずっと泣いて映画館から出たがった。
おかげで映画に集中できず、面白さも半減。
幼児が観るには早すぎた(汗)。

この頃から日本の配給会社は東宝一強となり、独立系配給会社は淘汰されていった。
それはそれで寂しい。

2000年代は今活躍する映画監督が続々と登場した頃。
行定勲監督が「GO」(01年1位)、矢口史靖監督が「ウォーターボーイズ」(01年8位)、
是枝裕和監督が「誰も知らない」(04年1位)、山崎貴監督が「ALWAYS三丁目の夕日」(05年2位)、
西川美和監督「ゆれる」(06年2位)など。

山田洋次監督の健在ぶりは変わらず、時代劇で気を吐いていた。
11年振りの周防正行監督は「それでもボクはやっていない」(07年)でまた1位を獲得。
いやいやどこまで1位を撮り続けるんだと思ったが、さすがにそれ以降は取っていない。

外国映画はこの10年は接する機会が少なかったので、知った作品も観た作品もわずか。
タイトルや内容をチェックしてもピンとこない。
このあたりは勉強し直さないと・・・。

その中で活躍が目覚ましく評価も高かったのがクリントイーストウッド監督。
爺さんになってからすこぶるいい作品を作っている。
「スペースカウボーイ」(00年1位)、「ミスティック・リバー」(04年1位)、
「ミリオンダラー・ベイビー」(05年1位)、「父親たちの星条旗」(06年1位)、
「硫黄島からの手紙」(06年2位)、「グラン・トリノ」(09年1位)、
「チェンジリング」(09年3位)。
未だに観ていない作品が3本。
何とかしなきゃいけないが、ほとんどの作品が1位なんて、もう何か語る必要もない。

話題作は外国映画のように思えるが、興行的には日本映画が外国映画を上回るようになった。
前述の「千と千尋の神隠し」のようにアニメ作品が映画界を牽引した要素が強い。
それに頼るばかりでは本来の良さが失われるようにも思えるが、これも時代の流れ。

2010年代は少しずつ映画を観る回数が復活。
ブログも始めたので映画コラムニストへの道も歩んでいくことになる。
どうまとめていくかな。

続く・・・。

映画「逃げきれた夢」

「逃げきれた夢」というタイトルを見て、かすかな違和感を感じた。
「逃げきれた夢って、どういうこと?」
夢が叶わなかったのか、
持っていた夢がどこかに消えてしまったのか、
一体どういうことなんだろうかと。

映画を観て、なんとなく理解できた。
あくまでもなんとなく。
それは答えが漠然としているのではない。
多かれ少なかれ我々世代が感じる点。
ある種、この主人公に反発しながらも共感する要素。

う~ん、こんな文章ではきっと伝わらないな。

一生懸命やってきたことが独りよがりで終わりそうで、
本当は誰かに認めてもらいたいが、それも言いだせないもどかしい感じ。
僕らのようになりふり構わず頑張ってきた世代が、
結果的に大した実績を上げられず、周りもそれに興味を示さない状態。
多分、同世代であれば、うんうんと頷いてくれるだろう。

ここまで語って、壮大な世界を描く映画じゃないのは分かる。
「最後まで行く」のようなスリリングなシーンも、
「波紋」のような深いため息も、
「怪物」のような人の正しさを問うこともない。

ひとりの中年男性が自分の生き様を淡々に見せるだけ。
全然カッコよくない。
感動的な言葉を発するわけでもない。
アッと驚くような行動をするわけでもない。
本人にとっては大きいが、周りにとっては小さな決断をするくらい。

その反応が寂しい。
しかし、まさにそこに共感する。

小さな目標に向かい、気づかれない努力を積み重ねるが結果的に叶わない。
そんな人生を送る人は多い。

主役光石研は「波紋」でもダメな旦那を上手く演じていたが、それを上回るのが本作。
切ない表情や困った表情や平静を装う表情は見事。
僕も繕っているつもりでも、あんなふうに全て見透かされているのかもね。
ちょっと怖くなった。

特に嫁さんや娘とのシーンは・・・。
自分が熱く語っても冷たい反応しか返ってこない気もする。
父親の威厳なんて空回りの産物か。

我が家は何とか持ち堪えているが、
(そう思っているだけかも)
冷え切った家庭を持つ人は自分と重ね合わせ観ることをおススメする。
大逆転があるかもしれないし。

冷たい視線や言葉を贈る奥さんや娘はいかにもありそうな感じ。
奥さん役は坂井真紀。
僕の予想では今年助演女優賞を取るんじゃないかな。

「ロストケア」で健気に介護する娘役は愛らしかったし、
「銀河鉄道の父」の慎ましく強い母親役にも感動した。
そして本作の冷え切った夫婦関係を演じる嫁さん役もよかった。
実際あんな感じだとツラいけどね・・・。

本作は大ヒットしない。
観れる環境も限られる。
それでも時間があれば、観てもらいたい。

親しい仲間からは「しゃーしい」と言われるかもしれないけどね。

ドラマ「サンクチュアリ -聖域-」

Netflixで配信されているドラマ。
全8話約8時間を一気に見てしまった。
(といっても3日かけてだが・・・)

いやいや、めちゃくちゃ面白かった。
ドラマの存在はGW明けまで全く知らなかった。
営業のコンドーと同行した時に
「山田さん、サンクチュアリって知ってます?。凄い面白いですよ!」
とモーレツにプッシュしてきた。

しばらく放置状態だったが、ターゲットとして選定されたのか、
Netflixの広告が常時映し出られるようになった。
予告編にも惹きつけられ見ることにした。

1話見た時にまんまとハマり、立て続けに見てしまった。
ある意味、スポ根ドラマ。
不良の若造が相撲界でメタメタにやられながら、のし上がっていくストーリー。
一歩間違えればチープな青春ドラマになりがちだが、重厚な人間ドラマに仕上がった。

タイトルにもある通り、伝統と格式を重んじる相撲界は聖域。
過去、強烈に描いたドラマや映画は存在しなかったんじゃないかな。
何より本物の相撲を見ているような迫力。

相当のこだわりを感じる。
元関取を役者として出演させていることもあるが、
このドラマのために一年以上かけて役作りと相撲の稽古をしたという。

主役猿桜役の一ノ瀬ワタルの体格は第1話と第8話では大きな違い。
元々いい体つきだが、第8話ではまるで千代の富士のような鋼の体になっている。
役者魂と覚悟をその変化から見て取れる。

先日観た「ヴィレッジ」で髪を結いでいたのはこのドラマが理由か。
ふてぶてしさを演じさせたら抜群の力。
「宮本から君へ」もハマリ役だったが、本作で更に役者としての価値を上げた。

「宮本から君へ」ではピエール瀧と親子で親をボコボコにするが、本作では親方と弟子。
親方のピエール瀧は猿桜をボコボコにして恨みを果たしていた。
そうじゃないか(笑)。

グイグイ引き込まれていく本作は一番いいシーンで8話が終了。
誰がみても続編を期待してしまう。
これもNetflixの巧みな戦略。

これを見ずして解約することはできない。
今から続編が待ち遠しい。